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小説家になろう  作者: 総督琉
一人目の主人公
6/94

第6話 真っ白な本。

 僕は真っ白な本を手に取り、1ページ目を開いた。そこには多くの小説が載っていた。だが驚いたことに、ここに載っている小説は全て同じ作者だ。


「明日葉……紅華。夢に出てきたあの子の名前!」


 僕は確信した。あの夢は嘘なんかじゃない。

 僕が子供だった時のことを思い出していたんだ!


「じゃあこの子も……今は僕と同じ中学生か。あーあ。考えても分からない」


 僕は何万ページにも渡る明日葉紅華の多くの小説を読んで分かった。


 (この子にも才能が無い)


 圧倒的に情景描写が足りておらず、尚且つ話はめちゃくちゃだった。

 だけど僕には分かった。似たような小説を書いているから、だから明日葉が書こうとしていたことが分かった。


 ーー神様の手帳。僕の野球物語。僕の終焉物語。魔法の使い方。


 他にも何百という小説が、この本には書かれていた。最後のページには、たった4話完結した小説があった。


「君と僕とは触れあえない」


 なんともロマンチックで悲しいような題名なのだろう。この小説は、天使と悪魔が触れあえば世界が終わるという悲しい小説だ。


 そしてこの小説は本来完結していない。


 この物語はここから始まるような感じで終わっている。きっとまだ先があるのだろう。

「なぜ明日葉は書かなかったんだ?」

 その言葉の答えはどれだけ考えても明日葉ではない自分に分かるわけが無かった。


「つばめ。友達が来てるわよ」


 母の声が僕の部屋のドア越しに聞こえてくる。


 僕は誰が来ているかすぐに分かったので、2階にある僕の部屋から出て、階段を下りて1階にある玄関に向かった。

 靴を履き、ドアを開けると……香月さんはいた。


「朝比奈くん。行こ」


 家の前には、香月さんの車が止まっている。香月さんは、親の車で僕を迎えに来てくれていた。

 僕は車に乗り、遠くの田舎の方に向かった。


 運転席に香月さんの父。助手席には香月さんが座っている。僕は後部座席に座っている。


 僕が静かに外に見える森の景色を見ていると、香月さんの父が静かに話し掛けてきた。


「朝比奈くんと言ったか?」


「はい……」


「君は小説家を目指しているのか?」


「はい……」


「では朝比奈くんには一つだけ、人生先輩として良いことを教えてやる」


 僕はどんなことを言われるのかドキドキしていた。


「私の娘は君のような(やから)にはやらんぞ」


 どうやら香月さんの父は、僕のことを香月さんと付き合っている彼氏だと思っているらしい。


 僕は返す答えが見つからず、絞り出せた答えが、


(のぞ)むところだ」


なぜか車内は気まずくなった。

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