第4話 絵本創り。
香月さんの描いた絵は、鉛筆一本で描いたとは思えない迫力と臨場感。僕は香月さんの才能に、言葉を無くす。
「草原の中に巣を創る蟻たち。それを描いてみたんだ」
香月さんの言葉通り、周囲には草が生い茂り、草をかき分け蟻が自分達の巣に向かっている。そんな神秘的な光景が、僕の目の前にはあった。
「どう?」
香月さんはスケッチブックを僕に見せながら、自慢するように聞いてくる。
「こんな上手な絵を描けるなら、君は世界一の絵本職人になれるよ!」
「そうでしょ」
「それより香月さん。何で絵本を描くの?」
理由は聞かされていなかった。だから少し気になっていたので聞いた。
「実はね、一週間後、お婆ちゃんが住んでいる田舎の方で私に絵本を描いてほしいって頼まれたの。それを大勢の子供たちに披露するんだ。私は断れないから、だから子供たちを楽しませようと絵本を描き始めたんだ」
僕は香月さんの助けになりたくなった。
「香月さん。僕も絵本の絵を描くの、協力するよ」
「いいの!」
「うん。香月さんのためなら、僕は頑張るよ」
香月さんは僕に手の甲を上にして差し出してきた。僕がポカーンとしていると、香月さんは説明する。
「君も手を私に重ね合わせて」
僕は言われた通り、手の甲を上にして香月さんの手と重ね合わせる。
「絵本、頑張って創るぞ~」
少し遅れて、僕も声を張り切って出す。
「お~」
そして香月さんが思いっきり手を上に挙げた。僕も遅れて手を挙げる。
「これから絵本づくり頑張ろうね」
絵本と言っても、創るのはただの紙芝居のようなもの。台紙に絵やセリフを書き、それを子供にも分かりやすいように並び替える。
だが想像以上に難しく、僕はセリフを担当し、香月さんは絵を担当した。この1週間、ほぼ寝ずに絵本を創り上げた。
次の日、学校に行くと、その日は紙芝居のセリフを子供たちに分かりやすいように考えていたので、授業中に眠ってしまった。