第2話 初めまして。
僕は学校に着くなり、自分の席に座って本を読んだ。話す相手がいないというのもあるが、僕は小説家を目指している。
だから毎日読書をしている。
やがて日は経ち、クラスの多くが生徒打ち解けていた。静かなクラスで、僕は窓の景色をバックに、本を嗜む。
だが本ばかり読む僕に、話しかけてくる物好きはいない。
いつしか、僕はその日常に抵抗を感じていなかった。
一人でいるのは辛いことだ。だが結局はいつか消えていく人間関係ばかり。
中学生の頃の人間関係など、大人になる過程で不必要になるもの。
僕は自分に言い聞かせ、いつからか自分自身を他人から閉ざしていた。
昼休み。
僕はいつも通り学校の裏庭で小説の内容を考える。
学校の裏庭は誰も来ること無く、それでいて昼になると日光が当たるので、小説のネタを考えるにはうってつけの場所だ。
地面には芝生が生えているので、座っていても制服は汚れない。
「主人公は蟻に転生するお話。これは相当面白いかもな」
僕は自分の考えた小説を自画自賛していた。
「ねえ朝比奈くん。私は香月しずく。君のクラスの図書委員さ」
突如話しかけてきた女の子。
本ばかり読んでいる僕に話しかけてくれる女の子。
一人で寂しがっている僕に手を差し伸べてくれた女の子。
赤みを帯びた髪の毛を後ろで束ね、僕の目をまっすぐ見てくれる女の子。
「朝比奈くん。私と本を書いてみない?」
唐突に投げ掛けられた質問。
答えがすぐに出せない質問。
好奇心が溢れ出す質問。
「香月さん。僕で良ければ……」
僕は中学に入ってから初めてする笑顔で答えた。
理不尽だと思っていたクラス替え。期待に胸を踊らせ学校に登校したのに、誰一人として知り合いはいなかった。
だから諦めていた。けどそれは間違っていた。
ーー青春は諦めるものでは無かったようだ。