決意⑴
それから侑里とコレーはどこに行くにも一緒に行動した。
といってもコレーは侑里にしか見えていないので傍から見れば侑里1人で行動しているように見えるが。
でも侑里はそれで良かった。今まで誰にも興味を示さず、家に帰っても両親は仕事だから一人。ずっと生気のない生活を送っていた侑里。そんな笑うことすらない生活をしていた侑里がすっかり笑うようになっていた。家に帰っても真っ暗な空間に1人なんてことはなくなり、常にコレーと一緒に人生を楽しんでいた。それもこれも全てコレーのおかげだった。
いつの間にか侑里はコレーに特別な感情を抱くようになっていた――。
今日はコレーと二人で侑里は家の近くの川原に来ていた。
ここ数日間でわかったことだが、幽霊だからかコレーは寒さや暑さを感じないらしい。こんな冬に河原なんて普通の女の子なら嫌がりそうだが、コレーに対してはその心配もしなくていいらしい。だから河原に行こうと提案したのだ。
「この河原、俺の大好きな場所なんだコレーと一緒に見たかったんだ」
二人は川岸の少し高くなっているところに立って川を見ながら話している。
「そうか。ここがお前の好きな場所か。良いところだな」
コレーにそう言われ侑里は照れた。
「ここから川辺に降りよう」
侑里はコレーが滑って転ばないように手を差し出すY。コレーもそれを掴もうと手を伸ばす。
しかし二人の手は合わさることなくすり抜けた。
「あ……、すまぬ。言うのを忘れていたが儂は幽霊だ。触れることはできぬ」
コレーがすかさず早口で、しかしどこか寂しそうな声で言い切った
手を伸ばしている自分が酷く滑稽に見えて侑里はすぐさま手を引っ込めた。
それから二人の間にはしばらく沈黙の時間が流れた。
なんて切ないんだろう。この気持ちが恋なのだと今更気付いた。恋などしたことがなかったが、こんな温かい気持ちになれるなんて、こんなに充実した日々がすごせるなんて、想像以上に恋は素晴らしいものだと知った。それと同時に、こんなに切なくて苦しくて心が痛いのなら知らなくても良かったとも思った。でもせっかくできた好きな人。元々生気のないような人生。どうせならこんな気持ちを教えてくれたコレーを抱きしめたい。なのに触ることも、手を握って助けることすらできない。俺が人間で、コレーは幽霊だから――。
それから侑里はずっと考え事をしていた。ずっとずっとずっと考えた。今までそんなに使ってこなかった頭をこれでもかというほどフル回転させ、考えて考えて考え続けた。コレーに触れたい一心で――。