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天国⑵

「冥界は今『地球リセット計画』とやらを進めている」

 地球リセット計画という重々しい名前に侑里は身構える。

「今地球は温暖化や動物の絶滅などたくさんの問題があろう? その問題の全ての原因が人間だ。それはわかるだろう? 現世で聞いたことくらいあるだろう? これからも人間が住んでいけるように一旦人間を減らしていこう、そして我々冥界にいる者が今後また輪廻転生するときに快適に過ごせるようにしていこうというのが地球リセット計画だ」

「あ、はい」

 一気に難しい話になって侑里は戸惑いを隠しきれなかった。

「そんなに固くなるな、気楽に聞け」

 アイアコスは侑里を気遣ってか優しく言う。そんなに悪い奴でもないのかなと思う。

「天国ではみな何かしらの仕事をするのが義務だ。大体の奴らは現世と同じ仕事をしている。みなが少しでも仕事をしていないと社会が上手いこと回らないからな。でも現世にはない職業が一つだけある。それが冥界の使者だ」

「冥界の使者……」

 侑里が呟く。

「そうだ。貴様の目的であるペルセポネも冥界の使者だ。冥界の使者は地球リセット計画には必要不可欠だ。何故なら現世にいる人間を意図的に殺せるのは冥界の使者しかできないからだ」

 『人間を意図的に殺せる』そう聞いて侑里は少しゾクッとした。

「その感情だ」

 アイアコスに言われ自分の感情がバレていたことにびっくりし首をすくめる。

「そういういろんな、例えば怖い、とかの感情をどうしても背負うことになる。しかも上手くこちらに呼び寄せられなかった場合は殺人未遂として地獄行になるというリスクも背負っている。ただそれだけじゃ誰もやりたがらないだろう? だから冥界の使者には何人というノルマをクリアできれば即名前持ちに昇格という褒美があると言う訳だ」

 アイアコスは何か言いたげな顔をして侑里のほうを見る。

「なんでしょう?」

「貴様には地獄から出す代わりにこの冥界の使者としての仕事をやってもらおう!」

 地獄から出してもらえる、そう分かった侑里は心の底から嬉しかった。後はアイアコスに言われた通りリスクはあるが冥界の使者で結果を出すしかない。その先にペルセポネがいるのは明白だ。走り抜けるしかない。ペルセポネに会えるためなら、コレーに会えるためなら、何だってやってやる――。

 侑里は跪いた。

「分かりました。冥界の使者として働かせてください」

「ふははは!」

 アイアコスはまた高笑いをする。侑里は顔を下げたまま何も言わない。

「貴様は今から冥界の使者だ。取り敢えず我に着いて来い」

 早口でアイアコスは言うと立ち上がりアイアコスの後ろにある異様に光を放っている扉をくぐった。

 続いて侑里もくぐる。侑里はペルセポネに一歩近づいた気がした。


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