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光明⑵

 一八七九番は深呼吸をして話し始めた。

「ではまず冥界の仕組みからお話ししましょうか」

 侑里は黙って頷く。

「輪廻転生、その言葉は知っていますか? ここ冥界にいる者は全員また人間に生まれ変わるのです」

「その話、本当だったんだな」

 二三一八番が言っていたことを思い出す。

「はい。その輪廻転生するまでの間をここ冥界で過ごします。輪廻転生できる条件があるんですがそれが『天国の住民であること』なのです。さらにどこの家に生まれ変わるかを決められるのがお偉いさんたち、所謂名前持ちの方々なのです」

「だからみんな名前持ちになろうとするってことか」

「そうですね。まあ名前持ちになればここ冥界では絶対的な権力、さらにエーリュシオンの野での快適な生活が約束されているというのも名前持ちにみんながなりたがる理由でしょう」

「エーリュシオンの野?」

 初めて聞く単語だ。

「はい。ここ冥界に来るときの渡し船で見ませんでしたか? 大きな塔を」

「あ、見ました。かなりデカい塔。カロンにあそこには絶対に近づくなって言われました」

「そうです。あの塔は船からは見えなかったかもしれませんが、野原にポツンと建っているのです。その野原の名前がエーリュシオンの野という名前なのです。あそこは名前持ちの方々の住居となっており警備が厳重になっているのでカロン様も近づくなと言ったのでしょう」

「なるほど。そういうことか」

 カロンが近づくと痛い目に遭うと言っていたのも理解できる。

 『何をしても許される』これが大袈裟でないくらいには名前持ちは権力があり、その他と格差がしっかりある。それはこの冥界に来ていろんな場所で感じられ侑里も身に染みて分かっていた。

「そこで五〇一番さんなんですが……」

 一八七九番は言いにくそうに言葉を詰まらせる。

「大丈夫だから言ってくれ。大丈夫だから……」

 侑里は自分に言い聞かせるように大丈夫と言い続ける。

「では言いますね……。五〇一番さんは冥界の使者として働いていらっしゃいます」

「冥界の使者? 働く?」

「はい。冥界に来たものの多くは地獄に落とされますが、天国の住民たちもたがのうのうと暮らしているわけではないのです。必ず仕事をして何か貢献しなければなりません。それが決まりだからです。大体の方が現世でしていた職業をしていらっしゃいます。そして唯一現世にはない職業があります。それが冥界の使者です」

「冥界の使者の仕事は……?」

「現世の人を死なせ地獄行にするのが冥界の使者の仕事です」

「っ――」

 侑里の声にならない叫びが漏れる。

 一八七九番に使者の仕事内容を聞く前から何となく想像はついていた。ただ本当にそうであって欲しくなかった。

「俺は……、コレーに仕事の一環として……」

 侑里は椅子から崩れ落ちた。上手く言葉が出てこない。床はとても冷えていて膝が冷たかった。

 一八七九番は続ける。

「そして最近五〇一番さんは冥界の使者としてのノルマをクリアし、新たな名前を手に入れたそうです」

 この前一八七九番が最近名前持ちになった女の子がかわいいらしいと話していたのを思い出した。そりゃコレーはかわいいからななんて今更ツッコミを入れる。

 侑里の目から涙が溢れている。何故泣いているのか自分でも分からない。

 やっとの思いで声を絞り出す。

「なんて名前になったんだ?」

「ペルセポネ様、です」

「ペルセポネ……」

 そう呟くと精神の限界を迎えたのか、侑里は気絶した。


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