光明⑴
「あははは! それでどうなったんだ?」
今日もいつもと変わらず運動場で殺し合いをしたあとに二三一八番とお喋りタイムだ。最近二三一八番は侑里の笑いのツボが分かってきたのか笑い声が絶えなくなっていた。
「おい! 二六〇三番!」
急に二三一八番の声とは違う怒鳴り声で侑里が呼ばれる。
振り返ると牛頭が立っている。
「何ですか?」
せっかく楽しい話をしていたのに水を差されて不機嫌になる侑里。
そんなことはお構いなく牛頭は話を続ける。
「お前に会いたいという人が来ている」
そう言われて侑里はコレーの顔が思い浮かぶ。胸がドキッと高鳴る。あまりの急激な緊張に動けないでいると二三一八番が背中をさすってくれた。
「良かったじゃんよ。念願の人に会ってこいよ」
そう言われ振り返ると二三一八番は優しく微笑んでくれていた。
その笑顔に勇気をもらえた気がして侑里は立ちあがる。
「面会室にその人は来ている。ついてこい」
そう言う牛頭の後を侑里は静かについていく。長い廊下にコツコツと二人の足音だけが響き渡る。
緊張しすぎて口から心臓が飛び出てきそうだ。
かなりの時間歩いた頃、ようやく一つの扉の前に着いた。地獄に似合う何とも禍々しい扉だ。でも今はそんなこと気にしていられない。
侑里の緊張は最高潮に達していた。
「ここが面会室だ、入れ」
牛頭は一歩下がって侑里に扉の前を譲る。
扉の取っ手に手をかける。緊張で今にも吐きそうだ。
深呼吸をして扉をゆっくり開ける。
部屋の中にいたのは待ち焦がれたコレー……ではなく、一八七九番だ。
「ふぁ?」
侑里は思わず変な声を出してしまう。
「コレーさんじゃなくすみません」
一八七九番は相変わらず死神の格好には似合わず丁寧な言葉づかいで謝る。
「あ、いや、え……?」
侑里は突然の出来事に頭の中が整理できない。
「この人がお前に会いたくて来た面会人だ。俺は外で待っている」
牛頭は気を利かせて部屋から出ていく。
二人きりになった部屋はかなり広くガランとしている。部屋にあるものと言えば椅子が二つだけだ。
「取り敢えず、座りましょう」
一八七九番は何もできずに立ち尽くしている侑里に優しく座るように促す。
「コレーさんだと期待していらっしゃったでしょうに本当にすみません」
二人が椅子に座ったところで一八七九番はもう一度謝る。
「コレーのこと、前は知らないって……」
侑里は必死に頭を回転させてやっと喋る。
以前一八七九番にコレーは知らないかと聞いたとき知らないと言っていたのだ。
「あれから二六〇三番さんのことが気になって、現世の頃やどうしてこの冥界に来ることになったのか等いろいろ調べさせてもらいました。ここに来る理由がコレーさん、いえ、ここ冥界での呼び名が五〇一番さんだったのですね」
「五〇一……」
侑里は一八七九番の言葉に必死についていく。
「はい。五〇一番さんについて話しても大丈夫ですか?」
そう訊かれて侑里は生唾を飲み込む。
今まで欲しくて欲しくて、しかし地獄でどうすることもできずに諦めていた情報が今目の前にぶら下げられている。侑里の緊張はもうすでに限界を超え、意外と冷静だった。
今なら聞ける。
「教えてください」
「分かりました」
一八七九番は深呼吸をして話し始めた。
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