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14「捌くぞっ、このウサギもどき!!」

「クロムさん、髪なくなっちゃいました。しかも黒くなってます」


 ああ、日本では銀髪、長髪は目立つからな。人に化けるなら目立たない黒髪、短髪がいいと思ったんだ。こっちでは銀髪のほうが目立たなそうだが、いちいち変えるのが面倒でな。


「人に化けるのはいいとして、気配自体も変わるとはどういうことだ?」


 ほぉ、違いがわかるのか。すべてはスキルの成せる業だな。


『つーか、若くなってね? 中身ジジィなんだから外見だけ若作りしてもな』


 ジジィ言うな! 日本じゃ高校に通うために人に化けたんだから、違和感のないの姿にしたんだよ。決して若作りではない。


 三つのセリフに心の中でツッコミを入れ、俺は深くため息を吐いた。


「はぁ、ティルとオールの疑問には答えよう。それとルビー、誰がジジィだ、確かに永く生きているが、心まで老けた覚えはない」


『えー? 変わんないって』


「捌くぞっ、このウサギもどき!!」


 軽口をたたくルビーを一喝し、俺はコホンと咳払いを一つした。そして始まる説明タイム。


 ティルには吸血鬼の姿では街などに行くことができないため、人に化け髪も目立たないようにした、と説明した。


「そうだったんですね、黒髪もとっても似合ってます」


 満面の笑みで言われた。天使かな。


 オールには特別な偽装スキルを使っている、と説明した。詳しくは言わなかった。ただ魔力の質を偽ることができるとだけ言う。


「まったく、お前は規格外すぎる。ーーーだが、それならこれはいらなかったな」


 オールは懐から金属片を取り出し、俺に見せてきた。それはタグであり、中央に獅子を象った紋章が彫られている。


「なんだ、それ?」


「従魔の証だ。これをつけていれば街を覆う魔物避けの結界に弾かれることもないし、他の冒険者に攻撃されることもない」


 なるほど、職業の中には魔物を使役するものもあるんだろうな。ゲームよりの知識だが、たしかテイマーとかいったか。大事な戦力が街に入れないのは困るし、街の外に待機させていたとしても警備兵や冒険者に狩られては死活問題だからな。


 しかし冒険者っているんだな。さらっとセリフの中に出てきたよ。いや、こいつのステータスには表示されていたがな。


「もしかしなくても、その従魔の証、俺がつけるはずだったのか?」


「そうだな、人に化けようが、本性のままだろうが、魔力の質は変えられないからな。お前には不本意だろうが、俺の従魔っていうことにしといたほうが、一番面倒がないと思った」


 ああ、だからあっさりと街へ行こうと提案したのか。情報を集めるには、遅かれ早かれ行くことにはなったが、俺が結界を通れるように考えてくれてたんだな。


「そうか、ありがとう。しかしすまない、それ無駄にしてしまった」


「いや、無駄にはならないな」


 オールはルビーに近づき、その首に金属のチェーンに通したタグをつけた。え? なんでつけた? ルビーは核にティルの魔眼を使っているから魔物ではない。魔力の質もティルと同じものだから、結界に弾かれる心配はないと思うんだが。


「オール、そいつは魔物じゃないぞ。外見はあれだが」


「その外見が問題だ。ただの動物の姿ならよかったが、明らかに魔物よりだろ。つけていたほうがトラブル避けにもなる」


「ああ、なるほど」


 納得した。しかもルビーはティルの側にいることが多いだろうし、そうなるとティルにもいらぬトラブルが降りかかるかもしれない。それを防ぐ上での従魔の証か。


「ただ、従魔の証をつけた魔物は、冒険者ギルドで従魔登録をしなければならないんだ。登録なしで結界を通れるのは一回だけ。二回目以降は登録しなければ通れない」


「ならティルの従魔としてギルドに登録すればいいんじゃないか」


 そう俺が言えば、オールは黙りこんだ。何か問題でもあるのだろうか。


「冒険者ギルドの登録は10才からなんだが、ティルはいまいくつだ? 10才以下だというのなら……」


「? 何をいってるんだ、ティルは12才だ」


「は?」


 嘘だろ、と言わんばかりのオールの表情に、俺はいろいろと察した。どうやらオールには、ティルがずいぶんと小さい子供に見えていたようだ。


 まぁ、いままでの生活からして、栄養は十分に摂れていなかったようだし、牢屋の中では当然摂れるはずもない。


 年齢の割に体が小さく細いのは、当たり前と言えば当たり前なのだが。


「とりあえずティルは12才で間違いない。ーーで、ギルド登録は10才からだから問題はないな」


 俺は無理やり話を前に進めた。オールもティルに関しては言いたいことはあるだろうが、本人のいる前で言うことではない。あとで時間ができたら、ティルの食事について話し合いたいと思う。


 オールもなんとなく察してくれたようで、話の流れにのってくれた。


「ん、ああ、そうだな。12才というなら、後見人には俺がなろう」


「後見人? ギルド登録するのに、そんなものが必要なのか?」


「ああ、13才まではなーー」


 オール曰く、冒険者ギルドの登録自体は10才からできるらしい。ただし、10才から13才までは後見人を必要とし、その後見人もDランク以上の冒険者でないとだめだとか。しかしギルドに登録する者の中には孤児も多く、必ずしも後見人を得られるとは限らない。そういう場合は、依頼内容を街の中に限定し、最低限の衣食住、つまり宿舎を用意するそうだ。


 13才までは冒険者見習いとし、後見人がいるならその者に、いない場合はギルド内で開かれる講習で冒険者について学んでいくらしい。


 確かにティルの後見人は、オールで問題ないのだろう。この男、こう見えてもギルドランクはBなのだから。


 え? なんで知っているかって? ステータスにのっていたからな。


 これでギルド登録と従魔登録は無事にできそうだ。まぁ、他に問題が出てきたらその都度解決すればいいか。


 あまり深くは考えず、俺はゆっくりと街道を進んだ。

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