6話[悪魔]
第六話 [悪魔]
俺「二階か・・・・」
俺は階段を駆け上がり二階へやって来た。
(この階に、この屋敷の主が居るのか?
・・・・・いや、違うな、この階には人の居る気配がしない・・・・
さらに上の階か・・・?
・・・・・考えているより行ってみた方がいいな)
俺は、足を踏み出し、一直線に続く二階の廊下を歩き始めた。
俺「いくら人の気配は無いとはいえ、何もいないとは限らないからな、
警戒するのに越したことは無い・・・・
・・・・・しかし・・・屋敷と言うだけあって、部屋がたくさんあるが・・・・
こんなに大量の部屋、全部使うことなんてあるのか?」
そんなことを呟きながら、俺は先へと進む。
俺「・・・・・・・・」
俺「おかしい・・・・さっきから歩いているが、一向に先が見えない・・・
いくらなんでも、この廊下は長すぎる、外から見た屋敷の外見と釣り合っていない・・・
まるで同じ道を歩いているようだ・・・・・まさか!」
俺は後ろを見た、すると、来た筈の道は壁になっており、扉が付いていた。
俺「どうやら、此処に入れということか・・・・・」
俺は背後に出来た扉の中へ入っていく、
そこには、何も無い殺風景な空間が広がっていた・・・
俺「どうやら、ここに何かが居るみたいだな。
たぶん空間をおかしくしているのもそいつだろう」
(・・・・・だが、なんと言えばいいのだろう・・・・
こんなこと普通ではありえない話だ、空間を捻じ曲げるなんて・・・・
でも、幻獣が出てきたという有り得ないことが起きた以上、
そういうことも有り得るか・・・・
このまま行くと俺は、非現実的思考の持ち主になりそうだな・・・・
・・・・・と、今はそんな心配よりも、この空間の原因をどうにかしなければな)
俺「誰か居るのだろう! 正々堂々、姿を見せないか!!」
・・・・・・・・・
静寂な部屋に俺の声が響き渡り、やがて静寂が訪れた。
しばらくすると、何処からとも無く声が聞こえて来た。
???「悪魔に対し、正々堂々と言うとは、面白い」
俺「悪魔だと!?」
悪魔「まあ、そう焦るな。
確かに俺は悪魔だ、だがな、人から魂を奪うだとか、
命を削るだとか、そのようなことはしない。
ただ俺は、困っている奴、特に人に恨みを持っている奴に、
いい知恵を貸してやっているだけなんだよ。
・・・・・どうだい? お前さんにも、恨みを持つ奴は居るだろう?
だったら俺が、力になってやるぜ?」
(!!まさか、こいつの言っている事と、あの蓮華が言っていた事からして、
幻獣召還は、こいつが仕向けたんじゃないか!?)
俺「ふざけるな! あれの何処が、いい知恵なんだ!?
もっと他に解決法はあるだろう!!」
悪魔「おっと、確かに他に良い方法は有った、
だが、俺が協力した奴は、殺したいほど恨んでいる、
と言っていたから、この方法を勧めたんだよ。
な? だからさあ、お前さんも俺の知恵を使わないか?」
俺「断る! どんなことがあっても、俺は絶対、悪魔の手は借りない!」
悪魔「・・・・・・・・」
悪魔「・・・・・・チッ、つまらねえ奴だ、まったくよぉ
これだからお前みたいな、人間は大嫌いだ。
大人しく俺の言いなりになればいいのによぉ、
まあいいさ、俺に協力しないならお前は此処で死ね」
俺「本性を現したな! 出て来い! 相手になってやる!」
悪魔「ああ、言われなくてもそうするさ、お前は他の人間と違って、
俺が直々に殺してやりたくなってんでな!」
そう言うと悪魔は、俺の目の前に姿を現した!
だが、出てきた悪魔は、俺の想像と違った姿だった。
確かに背中から悪魔の象徴ともいえる、黒い羽が生えていたが、
服装は禍々しいイメージを放つ派手な服というより、
黒いスーツのような・・・まるで執事のような格好をしていた。
悪魔「ほう、お前さん、想像していた悪魔と、この俺の格好がかけ離れている。
・・・・・と思っただろう?」
(なに!?)
悪魔「まあ、無理も無いさ、俺みたいな上級の悪魔になれば、
それなりの服装をするのが当然だからな! ハッハッハッ!」
(何だコイツ、言っていることが、腹立つぞ。
・・・・・だが、此処でつられてしまっては相手の思う壺だ!)
俺「ああ、確かにそう思った、それが分かったということは、
お前は人の心を読んでいるのか?」
悪魔「さあ? どうだろうねぇ?」
俺「まあいい、戦えば分かる事だ! 行くぞ!」
そう言い俺は剣を構えた。
悪魔「いいでしょう・・・・・何処からでも掛かって来い!」
悪魔は両手を横に広げ、ただそこに立っている。
俺「・・・・・・・・」
(クソ、行くぞとは言ったものの、何処から攻めればいいのかが分からない、
迂闊に攻撃すれば、反撃を食らう!)
悪魔「どうしたのですか? 何処からでも掛かって来て良いのですよ?
それとも? 俺の恐ろしさに恐怖し、動くことが出来ないのかなぁぁ!?」
俺「そんな訳ないだろう!!」
俺「うおぉぉぉぉぉお!!」
俺は大声を挙げ、悪魔に斬りかかった・・・・・が!
スカッ! という剣が空を切る音と共に、悪魔は俺の前から姿を消していた。
俺「ハッ!?」
俺は驚き、その場に立ちすくんだ。
俺「そ、そんな、さっきまで奴は此処に!」
悪魔「フッフッフッ 甘いなぁ! そのような動きの読める単調な攻撃が
俺に当たるとでも思っていたのか! 間抜けめ!
今度はこちらから行かせてもらおうか!」
悪魔「来い! ザ・スピア・オブ・シャドウ!」
そうすると悪魔は闇を右手に集め、一本の槍を作り出した。
・・・・・いや、槍と言うよりかは、斧の先端に槍を付けた様な見た目だ。
(なッ! 闇から槍を!
・・・・・そして名前長!)
悪魔「行くぞ!」
そう言い悪魔は、俺目掛け突撃してきた!
俺「うっ!」
カキーン!!
俺は霊剣を使い、攻撃を防ぐ、
だが、悪魔は剣を振り払い、立て続けに攻撃して来た。
俺はすかさず、攻撃を防ぐ、
そのような攻防が少しの間、続いた・・・・
悪魔「やるな、さすがはあのメイドを倒した奴だ、
今までの人間とは一味、いや、二味も違うな、
・・・・・・だがな!」
そう言うと悪魔は、俺の右脇腹に蹴りを放ってきた!
俺「ッ!!」
俺は蹴りを食らい、その場に膝を着いた。
悪魔「やはり、さっきの傷は癒えてはいなかったようだな!」
俺「お前・・・・・見ていたのか!」
悪魔「当たり前だろう? これから戦うであろう者の情報を調べておくのは基本だからなぁ!
フ、だが、あの馬鹿メイドを退けてくるとは、予想外の強さだったぜ・・・・
まあ、あいつが弱らしてくれたおかげで、こうしてお前を跪かせることが出来た、
この世界を支配したら、メイドもあの女共々消し去るつもりだったが・・・・・
案外、あのメイドも役に立ってくれたな・・・・
まあ、最終的に殺すんだがな!
っと、話が過ぎたな、まあいい、俺の計画の実現のためにも、お前には此処で死んでもらうからな!」
そう言うと悪魔は、槍を振りかざし、叫んだ。
悪魔「死ね!!!」
悪魔は叫び声と共に、槍を振り下ろした。
俺は死を悟った、さっき出た火事場の馬鹿力は偶然出たものだったんだな、と思い・・・・・
(・・・・・・・・死ぬというときは、何も感じない物なんだな・・・・・
すまなかった零・・・・・約束、果たすことが出来なかった・・・・・
静葉さんの言うとおり、俺は期待されない様な、弱い人間でした・・・・・
・・・・・・・・
待てよ・・・・・どうして俺は今、こうやって考えることが出来ているんだ?
普通、死んだら、何も考えれないはずだ・・・・・
じゃあ、どうして・・・・・・
・・・・・ハッ! まさか!)
俺は、全神経を意識中に張り巡らせた。
やっぱりだ!
俺の脚には、床の固い感触が有った。
ということは、俺はまだ死んではいないのか!
・・・・・・今、どうなっているんだ・・・・・?
俺は、恐る恐る、自分の目を開いた。
さっき閉じたばかりの筈なのだが、まるで、
永い眠りから覚めたような、そういう感覚だった。
俺「・・・・・・何だこれは!」
目を開くと、目の前には、悪魔の攻撃を受け止めていた、光の壁があった。
俺「いっ・・・・一体なんだこれは!?」
悪魔「く・・・・霊壁か! どうやらその剣、ただの剣じゃない様だな」
俺は悪魔の言葉を聞き、足元に落ちていた剣を見た。
俺「どういうことだ! 剣が・・・・・光っている!?」
霊剣は青白い光を放っている。
俺「これが霊剣の力なのか!?」
悪魔「なるほど・・・・霊剣というのだな、それは・・・・・
今は、分が悪い・・・・一旦引かせてもらう!」
そう言うと悪魔は、黒い霧に覆われ姿を消した。
と、同時に、俺はさっきまで居た、廊下に立っていた。
(・・・・・逃げられたか・・・・・
・・・・・とりあえず、先に進むしかないな)
俺は落ちていた霊剣を拾い上げ、先へと進んでいった・・・・・・
(どうやら、そろそろのようだな・・・・・・・・・)
続く