5話[従者]
第五話 [従者]
俺「だ、誰だ! 何処に居る!」
俺の声は静かなエントランス中に、響き渡った。
???「・・・・・誰だとは・・・失礼な人ですね・・・・」
俺「姿を見せろ!」
???「何を言っているんですか? 私なら貴方の目の前に居ますが?」
俺「ハッ!?」
落ち着き、前を見ると、階段の上から、俺を見下ろす一人の影があった。
???「ようやく気づきましたか・・・」
そう言い、その影は階段を下りてきて、俺の前まで来て立ち止まった。
???「ようこそ、私はここでメイドをしている蓮華と申します」
(・・・・・メイド?)
さっきまでは遠くで見えなかったが、近づいてきたことで、
奴の姿ははっきりと分かった。
俺「お前達が、幻獣を召還した犯人か?」
蓮華「ええ、貴方の仰る通り、その幻獣は我が主であるお嬢様によるものです」
俺「なぜお前達はそんなことをするんだ!?」
蓮華「お嬢様は人間に嫌悪感を抱いていらっしゃるのです。
なので、その人間共を始末するため、幻獣を召還したのです」
俺「人間って・・・・お前も人間だろう! 同じ人間を痛めつけて楽しいのか!?」
蓮華「私を! 貴方達みたいな愚民と! 同じにしては欲しくないですね!
私は他の人間とは違うのです!」
俺「・・・・・・」
蓮華「だんまりですか・・・・まあ良いです、貴方はここで死んでもらいます。
お嬢様のためにも!」
(・・・・・戦うしか・・・・ないのか!)
俺は剣を抜き、構えた。
蓮華「どうしたのですか? かかってこないいのですか?」
蓮華は俺のほうを見て、余裕そうな表情で挑発している。
(・・・・・ダメだ、今挑発に乗ってはいけない・・・・
たぶん、アイツには何か策があるのだろう・・・・
それが分からない今、迂闊に突っ込めない。
ここは何を言われても、様子を見よう)
蓮華「来ないのなら、こちらから行きます!」
そう言うと蓮華は、俺のほうへ向って走ってきた。
(き、来た!
し、しかし人間を斬る訳には・・・)
考えている間に、蓮華は俺の目の前に来て、右足で蹴りを繰り出していた。
俺は剣を降ろし、とっさに右手を挙げて蹴りを防ぎ、蓮華から距離をとった。
(くッ・・・・とっさに手で防いだが、とてつもない力だ・・・女とは思えない。
まともに食らったらタダじゃすまないな・・・)
するとまた、蓮華はこちらに向って走ってきた。
(とりあえず、今は回避に専念して、対抗策を考えなければ)
蓮華は俺の目の前に来て、パンチを繰り出してきた。
(また来た!)
俺は、それをギリギリでかわした。
(・・・・・はッ!!)
パンチはかわしたが、息をつく間も無く、蹴りが飛んできた。
(や、やばい! かわしきれない!!)
蓮華の蹴りは、俺の右脇腹に入り、俺はその場に膝を付いた。
(やばいぞ! 痛みで立ち上がれない! このままでは・・・)
蓮華「所詮、貴方もただの人間ですね。
まあ、同情はしませんし、したくも無いです。
さてと・・・・・さっさと死んでもらいます」
そう言い、蓮華は俺のほうへ寄ってくる。
(クソ・・・・・やっぱり俺は、何も出来ない、力のないただの人間だ・・・・
死はそこまで迫っている、天国への道・・・・いや、地獄への道が近づいている・・・・
逃げたくても逃げれない、大人しく此処で覚悟を決めないといけないのか・・・
ああ、もっと色々なことを知りたかった・・・運命とは残酷だ・・・・・
・・・・・・・・・・・いや、此処で死ぬのが運命なんて誰が決めたんだ?・・・・
それは俺が勝手に決めた運命であり、あくまで仮定じゃないか!
そうだ・・・・そうだ! 俺はまだ生きている! 最後まで抗うべきだ!)
蓮華「これで終わりです」
俺「うおぉぉぉぉぉ!!!!」
蓮華「なッ!?」
バッシィィィィィン!!!
蓮華が、蹴りを出そうとした瞬間、俺は、渾身の力を込めた拳を、
思いっきり蓮華の顔面に放った!
蓮華「キャァァァァア!!!!」
予想外の攻撃により、蓮華は俺の拳をもろに食らい、
その場にしゃがみ込んだ。
蓮華「あ、あああ、ど、どうして立ち上がれたの・・・・ありえない・・・
ちゃんと急所を打ったのに・・・・・」
俺「・・・・・俺にも良く分からないが、これが属に言う火事場の馬鹿力って奴なのかもな。
・・・・・まあ俺は行かしてもらう」
蓮華「・・・殺さないのですか・・・?」
俺「殺す? 何故? 俺は此処に人を殺しに来たんじゃ無い、
ただ、この世に召還した幻獣を消して欲しいだけだ」
蓮華「やはり・・・・・それだったのですね・・・ですが、貴方はお嬢様には勝てない。
・・・絶対です」
俺「・・・・やってみなければ分からないだろう?」
蓮華「・・・・・」
俺「・・・・・」
(気絶したのか? ・・・・だが・・・・・やってみなければ分からない・・・
なんて言ったが、正直、彼女ほどの力の有る者を従えるなんて奴に、勝てるのか?
・・・・・いや、勝てるかじゃなく、勝つしかないな。
さて、早いところ先を急ごう!)
そうして蓮華を倒した俺は、階段を上り、元凶へと近づいていった。
続く