4話[出発]
第四話 [出発]
俺は今、暗い闇の中にいる、
もちろん普通なら、こんな時間にはとっくに夢の中だろう、
だが、今は違う、
俺達は幻獣を倒すため、この暗い闇の中にいる。
静葉「さあ、着いたわよ」
暗闇の中から静葉が話しかけてきた。
・・・と同時に、足音がやんだ。
俺「ここか・・・」
俺はそう言い、暗い闇の中、村を見回した。
(・・・・・静か過ぎる)
村の中は、物音一つ無い静寂に包まれていた。
(本当に幻獣なんているのか?)
と、言おうとした時。
零「幻獣がいるにしては、静か過ぎない?」
零が、俺の聞きたいことを聞いてくれた。
静葉「たしかに・・・・妙ね・・・」
少しの沈黙の後に、静葉が口を開いた。
静葉「とりあえず、ここに留まっていても仕方ないわ。
紅葉さんの言っていた屋敷を目指して見ましょ」
零「うん、それがいいね」
俺「警戒は怠らないようにしておけよ」
静葉「わかっているわ、貴方に言われるほど、私は不注意ではないわ。
人の心配より、まずは貴方が足手まといにならないようにする警戒をしたらどう?」
俺「・・・・・わかりました・・・」
(心配するどころか言い返されてしまった・・・)
静葉「まあ、行きましょう」
零「そうだね」
そう言うと、二人は歩き出した
それに続き、俺も歩き出す。
・・・・・
しばらく歩いたが、一向に幻獣は見つからなかった・・・
気づけば村の影が見えなくなるところまで歩いてきていた。
静葉「見つからないわね・・・」
零「そうだね・・・・」
俺は、「やっぱり、幻獣なんて居ないんじゃないか?」と、言おうとしたその瞬間。
ガサッ!
零「!」
静葉「!」
俺「!」
草むらの中から、何かが近づいてくる音がした。
俺達は剣を構え様子をうかがった。
するとその時!
グリャァァァァァァア!
と、うなるような声を上げ、草むらから、
大きな黒い獣のような影が、俺達目掛けて飛び掛ってきた。
と、同時に、静葉は構えた剣で、飛び掛ってきた影を斬った。
すると、真っ二つに斬れた影は、影も形も無く消え去った・・・
零「どうやら、こっちであっているみたいだね」
俺「・・・・・な、なんだ!? い、今のが幻獣なのか!?」
静葉「ええ、どうやらそのようね、
しかも、見事に囲まれているわ」
落ち着いて辺りを見渡してみると、見えるだけで、
五匹ぐらいの幻獣に囲まれていた。
俺達は互いの背中を守るように、円になった。
零「どうするの!?」
幻獣達は、どんどんにじり寄って来た。
静葉「・・・力ずくで通り抜けるしかないわ・・・」
俺「わかった、気をつけろよ」
零「うん」
静葉「ええ、言われなくても」
静葉「行くわよ!」
零「うん!」
俺「ああ!」
俺「いくぞ!」
俺は、掛け声を上げ幻獣に斬りかかる。
バッシーーン!!
鋭い音とともに、幻獣は消滅した。
(・・・・・実際、剣なんて使ったこと無いから不安だったが、
使ってみると案外どうにかなったな)
と、俺が気合を抜いたその時、背後からもう一匹の、幻獣が襲い掛かってきた。
(!! し、しまった!)
俺はとっさに、剣で攻撃を防ごうとしたが、
わずかに攻撃がずれ、左手に軽い傷を負った。
俺「く・・・」
俺はすかさず幻獣から距離をとり、体勢を立て直した。
(油断した、気をつけろなんて言っておきながら、これとは・・・
っと、考えている暇は無いな)
俺「やってくれたな」
そう言い、俺は思いっきり剣を握り閉め、剣を振り下ろした。
俺「喰らえ!」
ジャキィーーン!!!
思いっきり振り下ろした剣は、幻獣を真っ二つにした。
静葉「・・・・どうやら、片付いたみたいね」
俺「ああ」
零「真! 怪我してるじゃない!」
俺「大丈夫、ただかすっただけだ」
静葉「人のこと言っておきながら、自分が怪我しているじゃない」
俺「言い返す言葉も無い」
静葉「まあいいわ、大丈夫なら先を急ぎましょう」
俺「そうしよう」
俺達は剣を鞘に収め、再び歩き出した。
そして・・・
零「あ、あれ見て!」
零が指差すほうには、月の光に照らされぼんやりと写る屋敷の影が見えた。
静葉「ついに見えてきたわね」
俺「ああ、そうだな」
神社を出て、もう小一時間ほど、歩いていただろう。
確実にその疲労は、俺達の体に溜まっていた、
だが、それもあと少し、
俺達はそう心に思い、闇夜の月に照らされた屋敷へと、歩み寄っていった。
が、しかし。
ガアァァァーーッ!!!
という、叫び声を上げ、幻獣達が後ろから迫ってきた。
静葉「く、あと少しだというのに! このまま逃げても、追いつかれる!」
零「ど、どうしよう!?」
静葉「・・・・・」
静葉「分かったわ・・・」
静葉「真!」
俺「は、はい!」
静葉「ここは、私達に任せて、貴方が先に行きなさい!」
俺「し、しかし! 二人を置いて行くわけには!」
静葉「ふん、貴方が残ると、また足手まといになるから、先に行ってほしいの。
ここで零を行かせて貴方と私が残っても、貴方が足手まといでロクに戦えないからよ!
別に貴方が死ぬのは構わないけど、一人でこいつらと戦うのは骨が折れるからよ。
・・・・分かったなら早く行きなさい! 邪魔よ!」
俺「あ、ああ! 絶対生きて会おうな!」
零「気をつけて!」
俺「零も気をつけろよ!」
俺は、屋敷のほうへ走り屋敷の扉を開け、屋敷の中へと入っていった・・・・
零「・・・・・本当は、真に期待して行かせたんでしょ?」
静葉「・・・・・・・今は、目の前の敵を倒すことが先決よ」
零「やっぱり、素直じゃないね、静葉は。
まあ、そういうところを含めて、私は静葉が好きなんだけどね。
あ、もちろん友達としてだよ!?」
静葉「分かっているわ・・・・・・行くわよ」
零「うん!」
俺「ここは・・・・・?」
屋敷に入ると、俺の目にはとても広いエントランスが入ってきた。
(豪華なシャンデリアに、美しい絵画、まさに西洋の屋敷といった感じだ。
とても優雅な空間であるが、それと対照的に、禍々しいオーラを放っている・・・)
俺「もう敵の本陣だ、気を引き締めなければ」
そう言い、俺はエントランスへ上がった。
???「ようやく来ましたか・・・・・」
俺「!? だ、誰だ!?」
続く