2話[掃除日和]
第二話 [掃除日和]
俺「・・・・・・・・・」
俺「ん・・・あ、朝か」
障子の隙間から差し込む朝日で、俺は目を覚ました。
俺「さてと、起きるか」
俺は起き上がり、布団をたたんだ。
俺「零は起きているかな?
・・・・・とりあえず行くか」
俺は部屋を出て、居間へ向かった。
ガチャ、
俺は扉を開けた。
そこには、朝食を食べている零がいた。
零「おはよう、アンタの分も作ってあるよ」
俺「ああ、ありがとう」
俺「それじゃあ、いただきます!」
俺は、零の対面に座り、朝食を食べ始めた。
ガツガツガツ・・・・・
俺「美味い!」
俺は零の料理をすぐに食べつくした。
俺「美味しかったぜ」
零「ありがと」
零「そうだ、私、今日用事があるの、だから留守番していてくれない?」
俺「あ・・・ああ、分かった」
零「じゃ、よろしくね~」
そう言い、零は部屋から出て行った。
俺「・・・・・さてと、とりあえず、食器を片付けるか・・・」
俺は食卓に乗っている皿を持ち上げ、台所へ持っていった。
俺「えっと、流し台はっと・・・・・」
俺は台所の中を、そう呟きながら見渡した。
俺「ここか」
俺は流し台に皿を置き、水を出して、皿を洗い始めた。
・・・・・
十分後・・・
俺「よし、こんな感じで良いか。
・・・・・さて、零に言われたとおりに、掃除でもするか」
俺は家を出て、庭の方へ行った。
俺「ホウキはどこだろう・・・・」
俺はあたりを見渡した。
そして、家の裏に立てかけてあるホウキを見つけた。
俺「よし、これで庭の掃除ができるな」
(・・・・・しかし、本当に掃除が苦手だったみたいだな、
ホウキの毛先は、新品のそれと変わらないくらいに、綺麗なままだ。
ホウキは持っていたが、二・三回使ったところで、
使うのをやめてしまったんだろう。)
俺「っと、冷静に分析するのは置いておいて、今は掃除をするのが先決だ」
俺はホウキを手に取り、掃除を始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・何分ぐらいたったのだろうか、
家の裏手に落ちている落ち葉や枯れ木は、大体片付いた。
俺「あとは玄関付近だな」
俺はホウキを持ったまま、玄関のほうへむかった。
すると、何者かが玄関のほうへ歩いてきているのが見えた。
俺「・・・・・だれだ?」
俺は反射的に家の陰に隠れて様子を伺った。
何者かは、玄関の目の前まで歩いてきた。
(さっきまでは遠くで見えなかったが、どうやら女性のようだ
見た感じ、零と同じか少し高いくらいの身長か、年も零と大差なさそうだ。
服装は、落ち着いた雰囲気だな。)
俺「とりあえず、様子を見てみよう」
女は、玄関の前に来ると、トントンと戸をノックした。
女「零、いる?」
(どうやら、零の知り合いのようだ、)
俺「話しかけてみるか」
俺は家の陰から出て、女に話しかけた。
俺「あの、すいません」
俺の声を聞いた女は、驚き、俺の方を見た。
女「だ、誰!」
俺「あ、いや、怪しいものではないです!」
だが、俺の姿を見た女は、とても疑った目でこちらを見て、
女「本当かしら・・・・・」
こういった。
俺「本当です! 俺は神埼 真と言います、
訳あって零さんの家に泊めさせてもらっているんです」
女「・・・・・にわかには信じがたい話ね・・・」
(とりあえず今は、どうにかして信じてもらわなければ・・・・)
俺「どうしたら、俺のことを信じてくれます?」
女「そうね・・・・・何か証拠となる物をがあれば、
信じてあげないことも無いけど・・・・・」
女は、「そんなものは無いだろう」と思ったような顔をしている。
(・・・・・どうしようか・・・・零が居たらすぐに解決するんだが・・・・・)
俺は悩んだ、そのとき、
零「ただいま、あ~疲れた」
と言い零が帰ってきた。
零「ん? あれ? 静葉じゃない、どうしたの?」
静葉「あら、零、ちょうどよかったわ、
この男、あなたの知り合いなの?」
零「知り合いというか、ただ家に泊めてあげているだけ」
俺「・・・・・これで分かってくれたか・・・・?」
静葉「ええ・・・・・それにしても、
あなたはよく、知らない男を家に泊めさせることができるわね、
普通はそんな事できないわよ」
(良かった・・・どうやらこの世界が変なんじゃなくて、
零がただ単に、純粋なだけだったのか・・・)
静葉の話を聞いて、少し俺はほっとした。
静葉「まあ、今の所は何も被害が無いようだし、それでいいわ・・・でも」
静葉は俺のは方を向き、睨みつけるように、
静葉「もし零に何かしたらタダじゃすまないわよ」
と念を押した。
俺「わ、わかりました・・・」
俺はあまりの威圧感に無意識にそう言っていた。
零「ま、まあ争いはそれくらいにしてさ、とりあえず、家に入ろうよ」
静葉「・・・・・そうね・・・・・そうしましょう」
そう言い、静葉は零の家へ入っていった。
俺「・・・・・・」
(とても威圧感のある女性だな・・・・・
これは、零と違ってうかつに話しかけれないな・・・
とりあえず、彼女の前では、あまり目立たないようにしよう・・・)
零「アンタも早く入りなよ」
零はこちらを見てそう言った。
俺「あ、ああ」
俺は頷き、零の家に入った。
零「ほら、二人とも座って!」
静葉「ええ」
俺「はい」
そう言い俺と静葉は、座った。
零「まあ、まずは自己紹介から始めたら?」
静葉「・・・・・そうね、零が言うならそうするわ・・・・・」
静葉「じゃあ、まずは私から・・・・・
私は『北上 静葉』よ、まあ零とは小さいときからの友達よ、
とりあえずよろしく」
静葉「・・・さてと、次は貴方の番よ」
静葉は、「早く言え」と訴えかけるような顔をして、俺のほうを見ている。
俺「あ・・・はい、わかりました」
俺「えっと、俺はさっき言ったと思いますが、神埼 真です、
これと言って何か特徴的なものは無いです・・・
静葉さん、よろしくお願いします」
と言い、俺は頭を下げた。
静葉「ふーん、以外に礼儀正しいじゃない」
俺「・・・ありがとうございます」
静葉「で、私が一番聞きたいのは、何で貴方が零の家に泊まることになったのか、
それについて聞きたいわ」
俺「えっとですね、それにはいろいろと分けがありまして・・・・・」
俺は零の家に泊まることになった成り行きを説明した。
静葉「なるほどね・・・・」
俺「分かってくれましたか?」
静葉「まあ、とりあえずね」
俺「そうですか」
(良かった、何とか丸く収まった・・・・のか・・・・?
ま、まあいいか)
零「そういえば、静葉は何しにここへ来たの?」
零は、静葉に問いかけた。
静葉「そういえば、言うのを忘れていたわね」
そう言うと、静葉は真剣な顔をし、話し始めた。
静葉「実は、紅葉さんが村外れの森の中に、今まで無かった屋敷が建っていた、
今は害は無いそうだけれど、もしかしたら何かが起きる前触れかもしれない・・・・と、いっていたわ」
零「なるほどね、分かった警戒しておくよ」
静葉「それじゃあ、用も済んだし、私はこれでお暇させてもらうわ」
そう言い静葉は立ち上がった。
零「あ、そう? 気をつけてね」
静葉「ありがとう、それじゃあ」
静葉は出口へ向かって歩いていった。
零「じゃあね」
少し間を空けて、俺は零に質問した。
俺「なあ、零、紅葉って誰なんだ?」
零「そう言えば、知らないんだったね」
そう言い零は俺のほうを向き話しかけた。
零「紅葉さんは、村を治めている賢者様だよ。
俺「け、賢者? そんなに凄い人なのか?」
零「もちろん! 凄い人だよ!
何百年と生きた、大賢者様だからね!」
俺「ふぇ!?」
俺は、自分の耳を疑った。
(確かに今、何百年も生きた、と言っていたよな・・・・
ま、まさかな・・・・そんなに生きれる人間が居るはずが無い・・・・
だが、待てよ、ここは少なくとも俺の居た世界ではない、ということは、
何年も生きる者が居ても、おかしくないのかもしれない。)
俺「な、なあ」
零「ん? なに?」
俺「その紅葉って人は本当に人間なのか?」
そう言うと、零は少し困った顔をしてこう答えた。
零「実は、紅葉さんが何者かは、誰も知らないんだ。
何せ、私達の世代が生まれる前からここに居るからね」
俺「そうか・・・・」
(やはりこの世界では、今までの常識を捨てる必要があるな・・・)
零「さてと! 予期せぬ来客があったけど掃除の続き、よろしくね!」
俺「ああ、わかった」
俺は外に出て、また掃除を始めた・・・・
(紅葉とは何者なのだろうか、そして突如として現れた屋敷、
なんだか、悪い予感がするな・・・・・)
だが、この後、この予感が的中するとは
このとき彼は思いもしなかった・・・・
第二話 [掃除日和] END