16話[地底賢者『聖奈』]
第十六話 [地底賢者『聖奈』]
エル「じゃあ、改めまして・・・・・私に付いて来て下さい!」
エルは立ち上がり、そう言った。
俺「別に敬語を使わなくても良いよ、俺も堅苦しいのは慣れてないんだ。
それに、零にだけ敬語を使わないっていうのも大変だろ?」
エル「え? ですが、他の皆さんは・・・・・」
静葉「私は別に気にしないわ」
リリー「そうね、無理して敬語を使わなくても、私達は特に気にしないわ」
蓮華「お嬢様と同じく、私も特に気にはしません・・・・
貴女は貴女らしくあるべきです」
エル「そうですか・・・・・では!
私の後に付いて来て!
・・・・・これで大丈夫ですか?」
(何で聞いちゃうんだよ・・・・・)
俺「いや、別に大丈夫かは、気にしなくて良いよ」
エル「分かったよ!」
エルは笑顔で言った。
(・・・・・何だか、とても心配性な子だな・・・・・)
そうして、俺達は、館の中に入っていった・・・・・
-地底中央館・エントランス-
俺「ほへぇ~此処が、地底賢者の住居なのか・・・・・・」
俺は、エントランスの中を見渡した。
(やっぱり地底だけあって、少し薄暗くて不気味な雰囲気を出しているが、
逆に、その雰囲気がこの館にマッチしている・・・・・こんな雰囲気と館が
バッチリ有っている豪邸なんて、俺の居た世界では、お目に掛かれないだろうな・・・
しかし、聖奈って言ってたかな・・・・・紅葉とはかけ離れている所に住んでいるな・・・・
こんな立派な館に住んでいるんだもんな・・・・それに比べて紅葉は・・・・・・
神社・・・・だもんな・・・・
・・・・・っと、あんま神社を悪く思うと天の罰が降りてきてしまう、
ここらで止めとこう)
リリー「それで、その聖奈って人は何処に居るのかしら?」
エル「ああ、聖奈様だったら部屋に居るのかな?」
エルは、少し考えながら言った。
すると、エントランスにある内の、俺達からして右にある一つの扉が開いて、
中から赤い髪をした、エルと同じくらいの年の見た目をした少女が出てきた。
(うをおッ! また赤髪だ! あ、でも、彼女はエルみたいなショートヘアとは違って、
リリーと同じような腰まで掛かる、ロングヘアーだな)
???「あれ? エル、その人達はお客さん?」
エル「あ、綾! 丁度いい所に! 聖奈様が何処に居るか分かる?」
綾「ああ! それだったら今、話してきた所だから、案内するよ!
それで、その人達は?」
エル「ああ、この人達が聖奈様の言っていた、地上からの人達だよ」
綾「へー、じゃあこの人達が人間なんだ! 始めまして! 私は『綾』
って言うの、よろしくね!」
俺「ああ、俺は神埼 真、よろしく!」
(何だか、零と似ている性格だな)
エル「じゃあ、綾、よろしく」
綾「うん! じゃあ、付いて来て!」
そう言い、綾は扉の方へ歩いていき、俺達もそれに続いた。
綾「人間って、私達と似ているね!」
エル「確かに見た目は似ているけど、人間の心は妖怪よりも、
もっと優しさに溢れているよ・・・・」
綾「へ~~そうなんだ!」
蓮華「いや、だが、例外は有ります」
綾「? どういう事?」
蓮華「妖怪の中にも、エルさんみたいに、人間の心を持つ者が居ます、
無論、綾さんもその内の一人です」
綾「? それって良い事なの? あ・・・でも、エルが言ってからわざわざ言うって事は、
きっと良い事なんだよね?」
蓮華「ええ・・・・・」
綾「そっか! じゃあ良かった!」
綾は喜びながらそう言った。
俺「じゃあ、話も終わった所で早速、案内してくれるか?」
綾「分かった!」
そうして俺達は、綾の案内で聖奈の元へと向った。
綾「ここだよ!」
綾は、エントランスを出て、三つ目の扉の前で立ち止まり、そう言った。
静葉「じゃあ、入りましょうか」
そう言うと静葉は、前に出て扉を開けた。
部屋の中を見て、俺達は驚き、言葉も出なかった。
扉の先は書斎になっていて、部屋の壁じゅうが本で埋め尽くされており、
中央やや奥よりに机が置いてあった。
だが、そこまでは普通だったが、部屋の机に座っていたのは男だった。
(え・・・・聖奈様って・・・・・まさか彼の事なのか・・・・・?)
その男は、座って何かを書いていた。
すると、俺達が入ってきたことに気付いたらしく、男はこちらを見てきた。
???「あら? 二人とも、もしかしてその人達は・・・・・」
エル「はい! 地上から訪ねてきた人達です!」
???「やはり、そうでしたか!」
そう言うと、男は立ち上がり、俺たちの方へと歩いてきた。
???「遠路はるばる来て下さり、ありがとうございます」
男は、俺達にそう言うと一礼した。
俺「え? もしかして貴方が聖奈様?」
???「はい、私が地底賢者を務めております『聖奈』と申します」
(マジかよ・・・・・てっきり女だと思っていた・・・・・)
聖奈「やっぱり皆さん、私が男だった事に驚いていますよね・・・・」
静葉「あ・・・・分かりましたか・・・・・」
静葉は申し訳無い様な口調で、そう言った。
聖奈「あ! いえ、お気になさらず。
誰だって驚きますよね・・・・・こんな名前の男が居たら・・・・・」
聖奈は笑いながら、そう言った。
(何か、口調が女っぽいな・・・・・)
聖奈「皆さんの事は、紅葉さんから聞いています。
今、私に話しかけてくれたのが、静葉さんですよね?」
静葉「はい」
聖奈が問いかけると、静葉はすぐに答えた。
聖奈「それと、青い髪をしているリリーさんと、
そのメイドを務めている、蓮華さん。
間違ってないですよね?」
二人の方を向いて、聖奈は問いかけた。
リリー「大丈夫よ」
蓮華「仰るとおりです」
二人は、その質問に返答するよう答えた。
聖奈「そして、そちらが、零さんと、真さん」
俺達の方を見て、聖奈は聞いてきた。
零「はい!」
俺「はい」
俺達がそう答えると、少しの合間を開けて、聖奈は喋りだした。
聖奈「ごめんなさい、急ぎの用だって言われて、何の用で地底から呼ばれたか、
教えられていないですよね・・・・・」
リリー「ええ・・・・・まあ・・・・」
聖奈「分かりました、では何故皆さんを呼んだのかを、説明します。
今回、皆さんを呼んだのは、私達と反乱妖怪との戦いに力を貸して欲しく、
地上に助けを求めたのです」
俺「反乱妖怪?」
聖奈の言葉に、対して、疑問を放った。
すると、エルが代わりに説明を始めた。
エル「反乱妖怪って言うのは、さっき私が、入口で戦っていた妖怪達のことさ・・・
あいつらは元々、都の路地裏で生活している、下賎妖怪と言われるヤツラさ」
零「もしかして、ここに来る途中に路地裏で襲ってきた、あの妖怪も・・・・」
エル「ああ、多分そう・・・・路地裏で襲ってくる奴は大概、下賎妖怪さ・・・・」
なるほど・・・・と、俺は理解した後に、もう一度尋ねた。
俺「何度も聞いて悪いが、その下賎妖怪って言うのは何なんだ?」
エル「下賎妖怪ってのは、他の妖怪と比べて身分が低かったり、力の無いヤツラ
の事をまとめて、そう言うのさ・・・・・・
ヤツラには他者なんて、自分達の生きるための糧としか見ていない・・・・」
エルは少し不機嫌な顔で、そう言った。
(・・・・? エルと下賎妖怪の間には、何か関係が有るのか・・・・・?)
聖奈「しかし・・・・・・どうして他者を、気にかけない彼らが、
団体で行動する様になったのか・・・・・そこだけが気がかりです・・・・・
・・・・・・・とりあえず、皆さんお疲れでしょうし、二階に部屋を
用意しておきましたので、休息をとって下さい。
まず静葉さんが一号室、零さんが二号室、
真さんが三号室、蓮華さんが四号室、そして、リリーさんが五号室です。
客室までは、私が案内しますので、付いて来て下さい」
そうして、俺達は聖奈に付いていき、それぞれの部屋で休息をとる事にした。
(一体、下賎妖怪をまとめて、聖奈を狙う理由は、何なのだろうか・・・・・?
それに、奴らをまとめた方法も気になる所だ・・・・・・
・・・・・・まあ、とりあえず今は、休む事が先だな・・・・・・・)
そうして俺は、ベットに横たわり、休息をとる事にした・・・・・・
続く