14話[地底中央館]
第十四話 [地底中央館]
俺達は入り組んだ路地裏を歩き続け、ついに路地裏を抜けた。
俺「・・・・・ようやく、あの騒がしい都を抜ける事が出来たな・・・・」
静葉「ええ、ようやくね・・・・・」
零「でも・・・・都を抜けたのは良いけど、これからどうするの?」
リリー「確かにそうね・・・・・都の中では明かりが有ったけど、
此処は完全に真っ暗ね・・・・」
俺「ああ・・・・・・」
(リリーの言う通り、先はとても真っ暗で、後ろから差して来る都の光だけが
唯一の頼りだった。)
蓮華「とりあえず、道らしきものが有りますし、そこを辿って行きましょう」
リリー「そうね・・・・・・」
俺「よし、じゃあ、行こう!」
静葉「分かったわ」
零「分かった!」
リリー「待って、無闇に先に進むのは得策では無いわ」
先に向って、進もうとした時、リリーが皆を呼び止めた。
静葉「じゃあ、どうするの?」
リリー「私の魔法で灯りを灯すから、それに付いて来て頂戴」
(・・・・・確かに、リリーの言うようにした方が良いかも知れないな・・・・)
俺「よし! そうしてくれ」
リリー「分かったわ」
そう言うとリリーは本を開き、呪文を唱えた。
すると、本の上に火の玉が出現した。
零「すごい! これが魔法なんだ!」
零は、現れた火の玉を見つめながら言った。
リリー「そういえば、貴女には見せたことが無かったわね」
静葉「・・・・・実際に見てみると、改めて、凄い物だって事が分かるわね・・・・・」
俺「ああ、そうだな」
リリー「魔法の感想は後にして、早いところ行きましょ! 時間があまり無いわ!」
静葉「そうね、すっかり忘れていたわ」
俺「よし、早いところ行くぞ!」
零「うん!」
蓮華「はい!」
静葉&リリー「ええ!」
(・・・・・何だかんだで、案外、息が合っているのかもな・・・・
・・・・・って、俺はこの二人の親かよ・・・・・)
そんな事を思いながら、俺は四人の後に付いて行った・・・・・
・・・・・大体、数分ぐらい歩いたかという所で、零が俺達の向かっている先を
指差した。
零「あれ見て!!」
零の指す方向を見てみると、うっすらと光を放っている館が目に入った。
俺「あれは・・・・・・」
リリー「間違いないわ! あそこが私達の向っている館!」
静葉「じゃあ、早く行きましょう!」
リリー「ええ! そうしましょう!」
そう言うと、二人は走って屋敷の方へと向かっていった。
俺「おい! お前達が居なくなると、周りが・・・・・」
(クソ! あの二人すっかり意気投合している・・・・)
俺「二人とも! あの二人に遅れないように・・・ってあれ、蓮華は?」
後ろを振り返ると、蓮華の姿が消えていた・・・・・
零「蓮華さんなら、二人が走っていったと同時に、
リリーさんの後を追って行ったよ」
俺「何時の間に・・・・・・って今はそんな事より、早く皆を追うぞ!」
零「分かった!」
俺と零は、リリーの火の玉を頼りに、三人を追っていった・・・・・
-地底中央館前-
俺「はあ、はあ・・・・・やっと追いつけた・・・・・」
館の少し離れたところに居た三人を見て、俺はそう言った。
俺「お前達! 先走りすぎだ! 俺達がはぐれたらどうするんだ!」
俺が三人に歩み寄ってそう言うと、
リリー「ちょっと静かにして」
俺「俺たちを置いて行っといて何だその言い草!」
静葉「ちょっと黙りなさいって言っているのよ、
貴方はそんな単純な事も理解できないの? 貴方は私達の親じゃないんだから、
上から目線で話し掛けないで頂戴」
俺「・・・・・・・・分かったよ・・・・・」
(そっちだって上から目線じゃないか・・・・)
零「で? 三人ともこんな所で立ち止まって、何していたの?」
静葉「あれを見て・・・・」
静葉は館の方を指差した。
俺「?」
静葉が指差す方向を見ると、赤い髪をした妖怪が、複数の妖怪に囲まれていた。
俺「!! あれは!」
リリー「どうやら、一人で此処を守っているみたいね・・・・」
零「このままじゃやられちゃうよ! 助けに行こう!」
慌てて走ろうとする零を、静葉が止めた。
静葉「待って」
零「どうして止めるの!? このままじゃ・・・・・」
静葉「少し様子を見ましょう、彼女からは何か特別な力を感じるの・・・・・
そうよね、リリー」
リリー「ええ、確かに此処に居ても分かる、彼女からは他の妖怪からは感じられない、
ただならぬ強い力を感じるわ・・・・・だから、少し様子を見させてくれるかしら?・・・・
勿論、彼女が危険になったら、そのときは助けに入りましょう。
だから・・・・・・」
リリーは、何も言わず零の目を見た。
零もリリーの言っていることに了承し、静かに頷いた。
リリー「ありがとう・・・・じゃあ、様子を見ましょう」
俺達は、館の前で囲まれている妖怪に、目を向けた。
妖怪1「ヘッ! たかが女一人で、俺達に敵うと思っているのか!」
妖怪2「十対一、常識的に考えて勝機はゼロだぜ!」
妖怪3「お前の首を、カッ斬ってやるぜ! 覚悟しな!」
彼女を取り巻く妖怪が、次々に彼女を挑発している。
妖怪1「おい! 何とか言いやがれ!!」
妖怪がそう言うと、彼女は口を開いた。
???「本当に・・・・・・・・・?」
彼女は、ぼそぼそと呟いた。
妖怪3「よく聞こえなかったな? もう一回言え!」
妖怪の一人が、叫んだ。
???「本当に、やる気なのかい?・・・・・後悔しても、私は知らないよ?・・・・・」
今度は、はっきりと聞こえる声で喋った。
妖怪2「何だと!? オメェ・・・そりゃどういう事だ!」
???「そのままの意味だよ、このまま戦っても、あんた達は私には勝てない・・・・」
妖怪1「ほお・・・・・ずいぶんと余裕じゃねえか・・・・・じゃあやってみろ!
まあ! 無理だろうが・・・な!」
妖怪は、彼女のそばに近づいて言い放った。
???「・・・・・・私は忠告したからね・・・・」
そう言うと同時に、彼女は、近くに居た妖怪を蹴り飛ばした!
妖怪1「ケッ! こんなのきかねーな」
???「今のが、攻撃だと思ったのかい?・・・・・いいや、違うね、
今のはアンタを間合いに入れるためにやったのさ」
妖怪1「は? お前、本当になに言ってんだ? こんな距離から武器も無しに、
攻撃出来るわけ無いだろ!」
???「そんな事を言っているより、そこから離れないのかい?」
妖怪1「そんな事を言って、俺達から距離をとりたいだけだろ!
俺は離れないぜ!」
???「・・・・・そう・・・・・じゃあ・・・・」
そう言うと彼女は2メートルぐらい飛び上がり、なんと背中から炎の翼を出した!
妖怪1「!?」
零「!」
リリー「!!」
静葉「なッ!」
蓮華「!?」
俺「!?」
俺達は皆、驚きを隠せなかった。
(何だあれは! 炎の翼!? リリーの言うとおり、彼女は只者じゃない!)
???「不死鳥降下! フェニックスダイブ!」
そう叫び、彼女は赤い光を発しながら、妖怪に向かって急降下して行った。
妖怪1「あ・・・・あ・・・・」
妖怪達は驚きにより、その場に立ち竦んでいた。
妖怪1「う・・・・・ウギャァァァァァァーーッ!!!!」
彼女の急降下が当たると同時に妖怪は叫び声を上げた。
そして、やがて断末魔が消えて、妖怪はその場から消し去られていた・・・・
妖怪2「あ・・・・・ああ・・・・・」
妖怪3「て・・・・・テメェ! よくも俺達の仲間を! この同種殺しが!!」
妖怪の一人がそう叫んだ。
???「同種殺し・・・・・? 可笑しなことを言うね~、自分達だって
同種を殺してきたんだろ? そんな奴等が急に同種殺しだって?
ハハッ、笑わせるんじゃないよ!! 自分達は今まで散々殺しときながら、
いざ自分達が殺されると同種殺し・・・・・? ふざけるのもいい加減にしな!!」
彼女は妖怪達に、怒鳴りつけた。
だが、彼女が怒鳴りつけた後に、
???「・・・・・・さてと・・・・・じゃあ次は誰が相手してくれるんだい?」
と言い、微笑んだ。
俺は彼女の微笑を見て、背筋が凍りついた。
彼女の微笑からは、彼女の強さから来る恐怖とは違う、性格の冷酷さを感じた・・・・
妖怪3「お・・・・・俺が相手だアァァァァァァァッ!!」
妖怪2「おい! やめろ! お前も・・・・・」
妖怪は聞く耳を持たず、そのまま彼女に突っ込んでいった。
???「・・・・・ただ単に突っ込んで来るだけじゃ、私は倒せないよ!」
すると彼女は屈んで、炎の翼を真上へ振り上げた。
妖怪3「!! う・・・・うわぁ!!」
翼に煽られて、妖怪は宙へと舞った。
と同時に、彼女は構えて、赤い光を放ち始めた。
???「不死鳥飛翔! フライング・オブ・ジ・フェニックス!」
そう言うと、彼女は宙へ舞った妖怪目掛けて、跳んで行った。
妖怪3「グ・・・・・グギャァァァァァァーーーーッ!!!!」
断末魔を上げ、妖怪は消え去った。
妖怪2「う・・・・・うわァァァァァアッ!!!
敵わない殺されるまだ死にたくない、嫌だいやだイヤダ!!!
わアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
そう叫びながら、妖怪の一人は逃げ出した。
妖怪4「お・・・・・おい・・・・逃げるなよォ!!!」
妖怪5「置いてかないでくれええええええ!!」
妖怪6「俺だってまだ死にたくねーヨォォォォォ!!!
うわァァァァァァァァァァッ!!」
妖怪7「ヒイィィィィィィッ!!」
妖怪8「亜zqwxscでvfrtgbhyぬjmk、。;p・!!!」
妖怪9「助けてェェェェェェェッ!!!」
妖怪10「しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないィィィィィィッ!!!」
妖怪達は次々と逃げて行った・・・・・
???「・・・・・・仲間が死んだら、見捨てて逃げる・・・・・やっぱり、
妖怪は他者を信頼し合う事は、出来無いの・・・・?
そんな感情を皆が持っていたら、私がこの手で同種を葬るなんて事は、
しなくても良いのに・・・・・もう辛いよ・・・・・こんな事・・・・・
それに・・・・・あいつには、こんな風な殺し等・・・・して欲しく無い・・・・・」
(彼女は冷酷ではなく、冷酷な振りをしていたんだな・・・・
彼女が、同種を殺すのにも訳が有るみたいだ・・・・)
俺「・・・・話しかけてみるか・・・・・」
リリー「・・・・・・確かに、そうしなければ始まらないわね・・・・」
(・・・・そう言えば、さっき彼女が言っていた、あいつ・・・・一体誰のことだろうか?
まあ、これから判るかもな・・・・・しかし、あの話を聞いた後だと、
なんて声をかけていいか・・・・)
続く