1話[始まり]
俺「あ・・・あれ、ここは・・・どこだ?」
気がつくと、俺は森の中で倒れていた。
俺「確か俺、コンビニから家に帰る途中だったよな・・・
で、その途中にいきなり頭に激痛が走って・・・
・・・・・だめだ、そこから先は思い出せない・・・・・
・・・・・こんなところで考えていても仕方ない。とりあえず人でもいいから探すか・・・・」
そう言い、俺はまだ痛む頭を起こし、歩き出した。
第一話 [始まり]
俺「・・・・・・クソ、」
しばらく歩いたが、人に会うどころか森から出ることすらできていない。
俺「はぁ・・・・・・」
俺は木に寄りかかって座り込み、思わず口からため息をこぼした。
その時、
?「アンタこんな所で何してんの?」
という声が聞こえた、
俺「あぁ・・・・・」
俺は情けない声を出して顔を上げた。そこには、目の前に黒い髪の一人の女が立っていた。
女「だいじょぶ? 手、貸してあげようか?」
女は俺に手を伸ばしてきた。
俺「あ、ありがとう」
俺は女の手を掴み、立ち上がった。
俺「ありがとう」
女「別に良いよ、これぐらい。」
俺「・・・・・」
(見た感じだと、二十歳になっているかいないか位の見た目だな。)
女「どうしたの? なんか付いている?」
女は首をかしげてこちらを見ている。
俺「あ、いや、なんでもないです」
女「あ・・・・・そう?
・・・・・あ、そうだ! アンタどこから来たの?
見たところ、この近くの人じゃないみたいだし」
俺「えっと、俺は、東京から来ました・・・・」
女「東京? 聞いたこと無いね・・・・・で、そこからはどうやって来たの?」
俺「じつは、よく覚えていないんです・・・・」
女「え? 覚えていないってどういうこと?」
俺「俺、実はさっきまで気を失っていて、
ここに来る前に何があったかよく覚えていないんです」
女「つまり、気がついたときにはここに居た・・・・と?」
俺「はい・・・・・」
女「そっか、じゃあ、私がこの辺りのこと案内してあげるわ、
ここにアンタ一人を置いて行く訳にも行かないしね、
とりあえず今は、私の家へ行きましょ、一旦落ち着いて、話を聞きたいし」
俺「わかりました・・・」
女「そんな、堅苦しい喋り方しないでさ、もっと普通に喋ってよ」
俺「わかった、じゃあそうするよ」
女「うん、そうして、その方が話しやすい」
女「じゃあ、行こうか」
俺「ああ」
女は歩き出した、俺もそれに付いて歩き出した。
女「そういえば、アンタ、名前は何ていうの?」
女は歩きながら俺に言った。
俺「そういえば、言っていなかったな。」
俺「俺は『神埼 真』だ」
女「ふーん、いい名前ね。」
俺「ありがとう
零「じゃあ次は私ね、
私は『白川 零』よ、よろしく、真」
俺「よろしく、零。」
零「っと、見えてきたわ」
零「ほら、あそこが私の家よ」
と、零が指差したさきには、木造の平屋が建っていた。
俺「あれが零の家なのか?」
零「そうよ、さあ行きましょ!」
俺「ああ」
俺「案外、大きいんだな」
零「ありがとう」
ガラガラガラ
零「さあ、入っていいよ」
零は、引き戸を開けて、家に入るよう招いている。
俺「ああ、そうさせてもらうよ」
そう言い俺は家の中に入った。
零「とりあえず、この部屋に入って」
零は家に上がってから一番近いところにある部屋の扉を開けた。
俺「分かった」
俺は靴を脱ぎ、家に上がり部屋に入った。
・・・が、部屋の中にはとてつもない光景が広がっていた、
部屋にはそこらじゅうに物が散乱していて、足の踏み場も無い有様だった。
俺「お、おい・・・何だこの部屋・・・」
零「ああ、ここかい? ここは居間だよ」
零は笑顔で答えた。
俺「いや、そういうことじゃなくて、何でこんなに散かっているんだよ!?」
零「え? そんなに散かっているかい?」
零は不思議そうな顔をしている。
俺「いやいやいや、散かり過ぎってレベルじゃないだろこれ・・・」
零「そう・・・私は気にならなかったけどね」
零「ま、とりあえずご飯作ってくるよ! ちょっと待ってて」
にこりと笑ってそう言い、零は奥の料理場へ行った。
俺「・・・クソ、やっぱり落ち着かない、少し片付けてやろう」
俺はそう呟き、床に落ちている本を拾って片付け始めた。
それから数分後・・・・・
俺「よし、こんなもんか」
俺は落ちていた最後の本を棚に入れた。
俺「よし、綺麗になったな」
綺麗になった部屋を眺めて満足した。
零「ごはんできたよ!・・・・・ってあれ? なんか綺麗になってる?」
ご飯を持ってきた零が、綺麗になった部屋を見渡している。
零「もしかして、掃除してくれたの?」
俺「ま、まあ・・・・家に連れて来てくれたし、そのお礼かな・・・・・」
と言うと、
零「ありがと!」
と言い零は微笑んだ。
零「っと、ごはんができたんだった」
零「はい、これ、野菜炒めだよ!」
零は、持ってきた皿を食卓に乗せた。
俺「おお、おいしそうだな!」
俺「それじゃあ、いただきます」
カツガツガツ・・・・・
俺は、皿にのっった野菜炒めを勢いよく食べた。
零「ど・・・どう? 美味しい?」
俺は、少し間を置いて、
俺「あ、ああ・・・うまいぞ!」
と答えた。
すると、零は、
零「本当かい! ありがとう!」
と、喜んだ。
そして俺は、零の作ってくれた料理を平らげた。
俺「ありがとう、美味しかったよ」
零「うん、いいよ」
零「そういえば、もう夜だね」
零は、外を見ながらそう言った。
俺「あ、本当だ・・・・・・」
外を見ると、真っ暗だった。
それから少し間が空いて、零が、
零「仕方ない・・・ここに泊まって行ったらどう?」
と、提案してきた。
俺「え?」
あまりの提案に、俺は驚き、困惑した。
俺「い、いや、悪いじゃないか、今日会ったばかりの女性の家に泊まるなんて」
俺は、慌ててそう答えた。
すると零は、
零「いいよ、別に気にしなくても、空いている部屋があるし。」
と微笑みながら言い返してきた。
俺「だけど・・・・・」
零「いいよ、いいよ遠慮しなくて、それに今から行けるとこなんて無いでしょ?」
俺「たしかに・・・・」
零の言っているとおり、俺には行くあては無い。
零「でしょ! だからさ、ね?」
俺「わかった! そうさせてもらう、でも、
タダで泊めてもらう訳にはいかないから、何か手伝いなんかをさせてほしい」
零「その点はもう大丈夫! アンタには、掃除をしてほしいの!」
俺「掃除? またなんで掃除なんか・・・・?」
零「私ってさ、掃除が苦手なんだよね・・・だから掃除の上手いアンタに頼みたいって訳」
零「まあ、今日は遅いから、掃除は明日からでいいよ。」
俺「ああ、分かった。
・・・・・で、俺はどこで寝れば?」
零「ああ! そういえばそうだったね。
えっと、廊下に出て、突き当りの部屋が空いているよ。」
俺「分かった、ありがとう」
俺は立ち上がって、廊下に出た。
俺「えっと、こっちか」
右へ行った。
俺「で、こっちか」
俺は廊下の角を、さらに右へ曲がった。
俺の目の前には、二つの襖が見えた。
俺「ここか」
スーーッ
俺は二つのうち奥にある襖を開けた。
部屋の中は、意外に広く、八畳の大きさだった。
俺「・・・俺の家の部屋より大きいな・・・」
そんなことを口にして、俺は、部屋に入った。
俺「さて、布団は・・・・・ここか」
俺は押入れを開けて、布団を出した。
俺「よし、これで寝れるな。
・・・さて、寝るか・・・」
これから、俺は、どうなるのだろうか・・・・・
どうしてここに来たのだろうか・・・・・
東京に帰ることはできるのか・・・・・
いろいろな考えがよぎる中、俺は眠りに着いた・・・
第一話 [始まり] END