白い兎を追って
雪が舞い落ちる森の中、積もりかけの雪たちに足跡を付けながら、私は一人歩いている。
いつから歩いているか分からないが、私はこの道を進まないといけないのは分かる。
そう歩いていると、視界に雪のように白い兎が一羽、飛び込んできた。
兎は私を先導するかのように、私が向かう方向へとぴょんぴょん跳ねている。
兎を追うように歩いていると私は何だか楽しくなってきた。
兎が急に跳ねるのをやめて静止したので、私も止まる。
ふたりして止まっていると、右側から白い兎が跳ねてきた。
兎は私たちのことは気にせず通り過ぎていった。
兎はまだ止まっている。
通り過ぎた兎が見えなくなると、その兎が来た方向から小さな女の子が来た。
女の子は小走りで移動している。
女の子も私たちのことを気にせず通り過ぎた。
女の子が見えなくなると、また兎は跳ね始めた。
雪は強くなったり弱くなったりを繰り返している。
また兎が止まったかと思うと今度は左側から黒い兎が飛び出してきた。
そしてその兎が見えなくなると、杖を突きながら歩く老婆が通り過ぎていった。
老婆は私と交差したとき、黒い兎に気を付けろと言っていた。
木乃伊取りが木乃伊になるという言葉が頭の中をよぎっていった。
老婆が見えなくなると、私と兎は移動を始めた。
太陽と月が昇ったりくだったりを繰り返す。
兎は止まり、私は待った。
右の方向から白い兎を抱きかかえた女の子が歩いてきた。
女の子はセーラー服を着ていた。
やっぱり女の子は私たちを見向きもしなかった。
そして女の子が見えなくなると兎はまた歩き出す。
だんだんと雪が落ち着いてき、完全に晴れてしまった。
太陽が私たちを照らし上げる。
光をもらった樹氷たちが輝き、綺麗だと思った。
そして兎と私は山小屋へとたどり着いた。
この山小屋が目的地だとなんとなく感じる。
山小屋の扉を開けると、中には黒い兎がいた。
黒い兎が嗤った気がした。