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僕を狂わせた彼女。

作者: 秋山蜜柑

 僕の通う中学校で苛められている女子生徒がいた。僕は彼女を苛めなかったが、助ける事もしなかった。ただの傍観者でいた。ただの傍観者でいることが一番安全に決まってるから。

 でも僕は一つだけ気になる事があった。


 彼女が、なぜ苛められているのか解らないのだ。彼女は、特にブサイクな顔でもなく、太っている訳でもなく、頭の良さは平均よりも少しだけ上。運動は普通。少し大人しめな女の子。それだけなのに、彼女はどうして苛められているのだろう。


 教科書をビリビリに破り捨てられたり、机に落書きをされたり、体操着を隠されたり。彼女を苛めてる人達は、彼女に何かされたのだろうか。彼女はどうして苛められなきゃならないのだろうか。見る限りでは、何も悪い事をしていない。周りの人達と変わらない筈なのに、どうして彼女だけ苛められているのだろう。



 僕は理由が知りたかった。だから、彼女に訊いたんだ。「どうして苛められてるの?」って。そしたら彼女は「わからない。でも……私は選ばれたから」って答えたんだ。僕にはその言葉の意味が解らなかった。

 僕が黙っていると、彼女は頬を緩めて笑ったんだ。そして「話しかけてくれて、ありがとう。私の事を見てくれてありがとう」って、泣きながら僕にお礼を言った。

 僕はその時、なぜか心臓がドクドクと早くなって、彼女のことを可愛いと思った。僕が彼女を守らなきゃ。そんな正義感たっぷりの感情を覚えた。


 それから僕は傍観者を止めようと思った。でも、止めることは出来なかった。彼女のことを守りたい、そう思ったけど、彼女の様になるのは嫌だった。彼女のことを僕が庇って、彼女が苛められなくなったとしても、次に苛められるのは僕なんじゃないか。そんな事を考えた。

 それでも、彼女と二人きりになれば、僕は彼女の事を励ました。「大丈夫だよ。僕がいるから。僕が君を守るから」そんな僕の言葉を彼女は笑顔で受け取って、いつも「ありがとう」と言うだけだった。

 でも、あの日だけは違った。彼女がボコボコに殴られた日だ。可愛らしい顔はパンパンに腫れ、腕や脚も青アザだらけで、酷く痛々しいものだった。そんな彼女を目の前にしても、僕はいつもと変わらない言葉を掛けた。そしたら、彼女は怒りに満ちた表情を浮かべて、僕を睨んだ。


「そんなの嘘ばっかりっ!いつも見てるだけで助けてくれないじゃないッ!今日だって!!私が殴られてるの見てるだけで、助けてくれなかった!!!」


 キーーンと彼女の声が耳に響いた。僕はどうすれば良いか解らなくて、いつも大人しい彼女が、僕に向かって叫んでいるのを眺めていた。



 その次の日、僕は変わらず彼女が学校に来ると思っていた。でも彼女は学校に来なかった。その次の日も、次の日も。

 彼女が学校に来なくなって一週間が経った頃、仲良くしている友達から、彼女が「死んだ」と聞かされた。そんなの出鱈目(でたらめ)だ、嘘だと言ったが、友達の家は彼女の隣の家だったし、先生からも彼女が「亡くなった」と伝えられた。僕は凄く悲しかった。クラスの皆もそうだろうと勝手に思っていた。でも、違った。


 彼女を苛めていた人達はクスクスと笑っていて、むしろ嬉しそうだった。僕は怒りに満ちた感情を覚え、カッとなってしまう。そして僕は、皆の前で笑っている人達を殴ってしまった。彼女がボコボコにされたように、僕が彼女を苛めた人達をボコボコにした。

 でも、こんなことをしても彼女は戻って来ない。彼女に会うことは出来ない。彼女が僕に笑い掛けてくれることも、話し掛けてくれることも、怒ることも。


 もう二度と彼女に会えない。そう実感すると、胸にポッカリと穴が空いた気がし、喪失感を感じた。知らない内に、僕の中で彼女という存在が大きな存在となっていたのだ。




 彼女がいなくなって、彼女を苛めていた人達はターゲットを変えた。選ばれたのは、もちろん僕だった。あの時殴ってしまったからだろう。でも、僕は嬉しかった。僕を選んでくれた事が。これで、彼女がどれだけ苦しくて、痛くて、辛かったのか知る事が出来る。それは、彼女を知る事と同じだと思った。


 でも、僕は苛められなくなった。どうしてなのか、その理由は解らなかった。苛めて欲しい。もっと僕の事を。そう思っても、苛めるという行為を忘れてしまったように、誰も僕を苛めなくなった。

 また、何かが足りなくなってしまったような喪失感を感じた。それからの生活は酷くつまらないもので、生きることが何なのか解らなくなっていった。

 毎日毎日、彼女のことを考えていた。そして僕は思いついたのだ。唯一彼女に会える方法を。


 僕も、生きる事を止めればいいんだと。

 嬉しかった。また、彼女に会えるという事が。彼女に会えるなら、僕は喜んで死ねる。

 会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい。

 会いたいという感情が爆発しそうなくらいだ。



 会いに行くから。

 まっててね。

お目汚し失礼いたします。

短編小説を書いてみようと思い、こちらを執筆致しました。思いつくままに文を綴った為、滅茶苦茶な部分などがあるかもしれません。そして、私はこの作品を何か意図して書き上げた訳ではありませんので、ご了承ください。


暗めの小説となっている為、気分を悪くされた方がいらっしゃいましたら、この場を持って謝罪させて頂きます。


本当は私自身、この小説を投稿しようかしないかと悩んでいました。ですが、書き上げたからには投稿させて頂こうと思い、こうして皆様の目に触れさせて頂きました。

この小説を読んでくださり、ありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。

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