半信半疑のババ抜き―1
ここはどこだ?視界が歪んでよく見えない。
宮城は目を凝らしていると少しずつ視界が開けてくる。
なんとなく観光バスなのは何となくわかってきた。けど、なんでこれ、体が思うように動かない……それに、落石はどうなったんだ?
少しずつ周りの状況が分かってきた。だが、その光景は宮城にとっては信じられない光景だった。宮城の視界に飛び込んできたのは血しぶきと炎で真っ赤に染まった車内、天井にクラスメイトの何人か転がっている姿。その中には難波や佳奈の姿もあった。
なんだよこれ……俊直、佳奈さん。どうして、こんなことに……嫌だ!!
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
誰か助けて!!
● ● ●
宮城は飛び跳ねる様に起き上がった。宮城は息を切らしながら額の汗を拭う。
……あれは、夢だったのか?あれ?ここはどこだ?
宮城は周りを見渡す。
カーテンとドア一つで区切ってある部屋。宮城はL字型のソファーに座っていた。 L字型のソファーは部屋の角に付くように置かれ、近くには長方形のテーブル。その上には文字らしき物が書かれてる紙と水が注がれているガラスコップ。他には正面の壁には固定型のテレビや観賞植物、小物などの装飾品が置いてある。部屋の内装としてはシンプルで落ち着いた感じにまとめられている。
僕は助けられたのか?見た感じリビングみたいだけど……これ、なんて書かれているか分からないけど……飲んで大丈夫だよな。
宮城はコップの水を一口含み。そして、大丈夫な事が分かると一気に飲み干す。
「はぁ、生き返る」
『あっ、起きましたか?』
カーテンの奥から声がし、カーテンが開いた。そこには身長約155㎝。見た目は小学校高学年ぐらいの女の子が立っていた。見た目相応の体付きに手袋と薄いピンクのローブ、顔以外の露出が見当たらない。
そんな少女はこっちを見るとぎこちない笑顔を見せる。
……警戒されてるのかな?まぁ、当たり前か、どんな奴かも分からない状況だし。助けてくれたってことは味方なのかな?とりあえず、悪い印象与えないようにしないといけないけど……日本語通じるのかな?
「大丈夫ですか?お兄さんが倒れている時、近くに毒蜘蛛が居たみたいですけど……体の調子はどうですか?」
日本語を喋った!?言葉は通じるのか……?
「あ、大丈夫……」
「そうですか、それはよかったです」
日本語が通じた……でも、どうしてだ?ここは異世界のはずなのに……でも、こっちのほうが都合がいいから今はいいか……さて、どうしようかな。
「えっと、ここはどこかな?」
「ここは貨物機ディルアの中です。お姉ちゃんがお兄さんを見つけて助けたんですけど……お兄さんはどうしたてノームに追われてたんですか?」
あのミミズみたいな奴のことを言うのか?それにしても、子のこの雰囲気が少し変わった。ちょっと嫌な感じがするな。
「分からない、急に襲われて……とにかく助けてくれてありがとう」
「わたしはなにも……助けたのはお姉ちゃんですし。でも、あんな所を武器も持たずにどこに行くつもりだったんですか?」
「それは……近くの街に行こうと思っていたんだけど迷っちゃて」
宮城は苦笑いを浮かべる。そんな宮城を少女はジッと見ていた。
この子はなんだ?見た目は小学生みたいなのに……この尋問みたいなやり取りはなんだ?
「そうですか、それは大変でしたね。……だったら疲れてますよね。ちょっと待っててください、今お茶を出しますね」
「あ、ありがとうございます」
少女はカーテンの奥にへと消えていった。すると宮城は一気に肩の力を抜いて、大きく息を吐く。
緊張した。なんだったんだ、あのプレッシャーは?なんか怖かった……でも、お茶を出してくれるってことはお客さん扱いになったのかな。
そんなことを思っているとドアの方から誰かが入って来た。白の着物の様な一枚布を体に巻き、腰に紐をまいて固定した服装をし、茶色いローブを着た女性が入って来た。そして、女性は宮城が起きている事に気付くと冷静な視線を宮城に向ける。
「起きたんだね、体は大丈夫?」
「あ、はい、おかげさまで……」
女性はそのままカーテンの奥へと消えていった。
見た感じあの女性はあの子のお姉さんかな?あの人から色々と話しを聞けるといいけど、どうかな?
カーテンから先ほどの女性が現れ、宮城の前に座った。そして、宮城の事を不思議な物を見るような目線を向ける。
「話しは聞いたよ。街に行こうとしてたんだって?」
「は、はい」
なんだろうこの人は、さっきの女の子とは違うプレッシャーを感じる。まるでいくつもの修羅場を潜り抜けた戦士のようだ。警戒、敵意があるようなプレッシャーだ。
「見た所、この辺の服装じゃなさそうだけど君は何処から来たんだい?」
なんて答えればいいんだこれは!?異世界だしな、本当の事を言っても……。
「えっと、極東の国にから来ました」
「極東……ずいぶんと遠くから来たのね。どうしてこんな所に来たの?」
それは僕も知りたいです。
「えっと、ですね……気付いたらここに居て……僕自身もどうやってここまで来たかまでは分からないんですよ」
「もしかして君、神遊びにあったのか?……それは災難だね。だとしても、かなり遠くに飛ばされたね」
「すみません。それはなんですかなんですか?」
「え!?わかんないですかお兄さん!」
驚きの声と共に二つのコーヒーカップとクッキーのような焼き菓子が入っているお皿をトレーに乗っけてた少女が、カーテンの奥から現れた。そして、コーヒーカップを宮城と女性にそれぞれ置き、真ん中にお皿を置いた。
やばいな、神遊びって奴はこの世界の常識だったのか!?でも、今更変な言い訳するより素直に神遊びの事を聞いたほうがいいか。
「あ、はい。はじめて聞きました」
「地方によって呼び名が違うのかしらね。……そうね、簡単に言うと突然人が消えたり、現れたりする現象の事をそう呼んでるわ。そうそう、最近では見た事もない怪物が現れるって話も聞くわね」
……神隠しみたいなものかな。まぁたしかに僕も、一種の神隠しみたいなもんか。……僕のように別の世界から来た人は居るのかな?だとしたら俊直や佳奈も居る可能性はあるかな。
「そうなんですか……戻る方法とか知ってますか?」
「ごめんなさい、そういった話はまったく聞いたことないわ」
「そうですか」
そりゃあ、そうだよな。なんとか戻る術を見つけないとな。
「もしかして、街に行く理由ってそれ?」
「それもありますけど、もしかしたら一緒にいた友達も神遊びにあってるかもしれないので」
「なるほどね」
「……あの頼みがあるんですが」
「なに?」
「僕を街まで連れてってくれませんか?」