一方的な鬼ごっこ
……どうなった?すごい爆発音がした後、何も感じない。どこかに触れている感触もない。まるで空を飛んでいる感覚……。死んだのか?
宮城はゆっくりと目を開けるとそこには青空が広がっていた。
えっ?なんで青空が……?
そう思った直後、突如宮城の背中に衝撃が走った。
「いってえ……」
宮城は背中を摩りながらゆっくりと上体を起こし、体を確認する。
体のあちこちに擦り傷などはあるけど、そこまでひどいものではないか。……あのバスの事故はなんだったんだ?みんなはどこに居る?
周りを見ると自分の小さめのキャリーケースと肩下げバックがあった。
なんで僕の荷物が近くにあるんだ?他には……。
宮城は周りを見渡すために立ち上がり、周りを見た。すると、視界に飛び込んだのは地平線まで続く砂漠だった。
「……はぁ!?なんだこれ!」
夢か、これは……でもだったらこんなに体中痛くはないか……どうなっているんだ?
宮城はさらに見渡す。すると上空に薄っすらと白い月が見えた。だが、宮城の知っている月ではなかった。
昼なのにしっかりと月が見えてる!!大きさも知っている月の倍もあって、その月の近くに別の月のような衛星が見える。……地球じゃないのか!?
「取り合えずどうするか……ここに居ても何が起こるか分からないし。歩くか……もしかしたら、みんなに会えるかも」
宮城は荷物を拾い、少し重い足取りで歩き出した。
● ● ●
太陽がちょうど真上に差し掛かった頃宮城はまだ砂漠の中を歩いていた。
いったいどこまで歩けばいいんだ?歩き始めて三時間ほど経ったぞ……いったいこの砂漠は何処まで続くんだよ。
宮城は着ているジャージはまるで上からバケツの水を掛けたかのように汗で濡れていた。体力も限界なのか少しフラつきながら歩いていた。
せめて、歩く目標が欲しいけど。何もないな……
宮城は荷物を置くと地面に座り込んだ。
「さすがに歩き続けるのはつらいな……どこか日陰になる所まで歩こうと思ってたけど無理だ……疲れた」
宮城はボーっと遠くの方を見ている。しばらく時間が経過する。すると後ろに置いてあったスーツケースの様子がおかしい。何故か少しずつ宮城から離れて行く。そして先ほどまで何もなっかた場所にくぼみが現れ、吸い込まれていく。だが、その状況をまだ宮城はまだ気付かない。
「はぁ……歩くか。このまま夜になったらどうなるか分からないし」
宮城がスーツケースを取ろうと後ろを見る。するとそこには、直径5mぐらいの流砂が出来ていた。そして、宮城のスーツケースはすでに流砂に半分ぐらいはまっていた。
「げっ!!スーツケースが……!!」
宮城がスーツケースを取ろうとした時には時既に遅く、スーツケースは流砂の中へ消えていった。
やってしまった。着替えや食べ物、歯ブラシなんかの日用品が全部入っていたのに……このまま野宿はキツイな……なんだ?
宮城が名残惜しそうに見ていると、流砂が少しずつ盛り上がって行く。そして、一気に流砂の中から長い物が飛び出してきた。長さ4m太さ直径2mはあるだろう、ミミズのような生き物飛び出てきた。だが、よく見ると表面は金属で出来ており、頭の方には赤黒く光る目に似たセンサーらしき物が付いている。
……もしかして、ロボット!!
「すごい……綺麗」
光沢のある姿、まるで血管のような溝に光る玉の様なのが流れている。そんな姿に宮城は心を奪われていた。
僕も学校で何度かロボットを作ってきたけど……これは、どうやって出来てるんだろう。この世界はこんなに近代技術が発達してるんだ。これは有人だろうか?見た感じ敵意があるみたいに見えるけど。宮城は恐る恐る右手を上げてみる。
「や、やあ、こんにちは?」
ミミズ型ロボットは何も反応を見せない。
……言葉が通じないから反応がないのか?それとも、これは無人で動いているから反応が出来ないのか?
宮城の額に冷や汗が流れる。するとミミズ型ロボットの方から機械音が流れ始めた。
《……ニンショウ、カンリョウ……モクヒョウ、ハッケン……ホショクシマス》
「え!?日本語喋った!!もしかして日本語通じるのか!!……え?今、捕食って言わなかったか!?」
ミミズ型ロボットは2回機械音を鳴らすと頭が直径1mに辺6枚の花弁の様に口が開く。口の中は無数の牙が生え、奥にはシュレッダーの様に歯車が回っている。そして、ミミズ型ロボットはそのままの形のまま空に飛んだ。全長9mも伸びたミミズ型ロボットが宮城に向かって大きな口を開いて降って来る。
「ちょ、まてまて!」
宮城はとっさに横に向かって転がるように飛ぶ。すると、その瞬間。前まで居た場所にミミズ型ロボットが降って来た。
「何でいきなり襲って来るんだよ!!」
ミミズ型のロボットが起き上がりこちらを見てくる。そして、また機械音が流れる。
《……ホショクシマス》
ミミズ型ロボットは赤黒い目を強く光らせる。
ヤバイ、これはマジで殺される。
宮城は全身に悪寒が走り、冷や汗が一気に噴き出してきた。それを合図かのように宮城は全力で走り出す。それを見たミミズ型ロボットはヘビのようにウエーブしながら追いかけて来る。
「何なんだよ、アイツは!!」
ヤバイ、歩き続けた疲れで思うように歩けない。このままじゃ追いつかれる。
宮城は後ろを振り向いた。見るとそう遠くない距離にミミズ型ロボットが口を開けながら距離を詰めてくる。
「死んで……たまるかよ!!」
宮城はさらにスピードを上げようと前かがみになりながら走る。だが、ミミズ型ロボットの方が早く、距離が縮まって行く。そして、宮城が後ろを見ると大きな口がすぐ側まで迫っていた。
「あっ……オワッタ」
宮城は涙目になり、ミミズ型ロボットが口を閉じていくのを黙ってみている事しか出来ずにいた。
突如ミミズ型ロボットの頭が爆発し倒れた。
……えっ?何が起きた?
宮城は起きた状況が呑み込めずに呆然と立っていると何かが飛んで来た。そして、それはミミズ型のロボットの頭に着弾し爆発した。宮城は何かが飛んで来た方向を見るとそこには……
大きな……ウミガメ?
見た目は大きなウミガメに大きな棒状の何かが付いている。
……もしかして、あれもロボットなのか?あの棒状の奴は大砲か?距離が遠くて大きさが分からないけど、少なくとも5mぐらいの大きさがあるかな。あれ?……その奥にも何かいる?
宮城は目を凝らして見るとウミガメの奥に三倍以上の大きさがあろう塊が動いている。
なんだあれ?……ダンゴムシかアルマジロに見えるけど……いったい、どうなってるんだ?
宮城が考え事をしているとミミズ型ロボットが起き上がり、咆哮に似た機械音を流す。
《キキェェェェェェェ……!!》
「ヤバイ、起き上がった!!」
咆哮を上げると、ミミズ型ロボットはウミガメ型ロボットに向かって突進し始めた。ウミガメ型ロボットは甲羅についている大砲で砲撃を開始した。ミミズ型ロボットは最初の方は砲撃をかわしていたが、次第に狙いが正確になり、ついにミミズ型ロボットに命中した。ミミズ型ロボットの頭は完全に消し飛んだ。だが、ミミズ型ロボットは黒い煙を出しながら動き、最後は体を大きく上に上げ、しばらく静止したあとそのまま倒れて停止した。
……助かったのか?あそこのウミガメはこっちに近付いて来るみたいだけど……味方なのか?……あ、ヤバイな、視界が……歪んで、きた。
宮城はフラつきながらその場で倒れこんでしまった。そんな宮城の近くにウミガメ型ロボットが近寄って来た。ウミガメ型ロボットの頭が開き、その中から人が出てくる。
薄茶色の着物の様な一枚布を体に巻き、腰に紐をまいて固定した服装。そして、茶色いローブ、腰には短剣、青白く光るゴーグルを付けている。身長は165㎝ほど、体型はローブの上からでも分かるほどの豊満な体をしており、おそらく女性だろう。
そんな女性はウミガメ型ロボットから降りると宮城に近付き腰の短剣を抜く。
「その服装……お前はどこから来たんだ?」
女性は腰から短剣を抜くとそれを地面に向けて投げた。すると、宮城の顔の横に刺さる。
短剣の先には蜘蛛の様な生き物が刺さっていた。女性が短剣を抜いているとダンゴムシの様なロボットが女性に近付いてきた。
「……この男どうしようかしら」