12話目 ~邪悪な哀しい心 カタキは終わらす~
バトル回はこれで終わりです。すっきりしていってね!!カタキが何気にカッコいいです。
ではどうぞ!
11話の続き
「おいカタキ……」
スガさんは、突如現れてドヤ顔を決めたカタキに呟いた。
「なんすか? なんすか? 聞きたい事ならなんでもおkです!!」
カタキは自然にニヤけ顔になりながら、双剣を振り回す。危ない。
「俺のTM……どうした?」
「はあああああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁあぁ!!!!!!!!????????」
「は、はぁ」
スガさんの自然な問いに、カタキは拍子抜けという表情で叫ぶ。スガさんもつられて声を漏らす。
「なんかお前スゴいとかそんな感想じゃないんすかぁぁ!?」
「いやいや別になぁ……。とりあえずTMどうなんだ」
「いやとはなんすか!! あ、でもTMはここにあります」
カタキが期待していたのは、自らを称賛する言葉だったらしいが、スガさんの思考はそんなのどうでもよかったようだ。
まぁそれはそれとして、カタキは左手首をスガさんに向けた。そこには腕時計型のTMがつけてあった。
「うん、ならおkだ」
スガさんは満足げに少し笑った。
「カタキの事だから、どっかーんとか、ぐわしゃーんとかしてそうで怖かったんだよ」
「酷いっすよー……」
「まぁあれだ、サンキュ。助かったし。あれが天空人の力なぁ……。つくづく良く分からん世界な事で」
「そうそう、その言葉っすよ。でも平行世界とか行ってみたいっすね」
スガさんとカタキは腕組みをしながら、うんうんと頷く。いや、先ほどの会話に頷く要素なんてあったろうか。
それよりなによりかにより、二人は忘れてはいまいか。
今は、宇宙の存亡をかけた戦いを繰り広げているという事を。
「一人増えたからといって、結局は同じ事。滅ぼすのみ」
Xが、苛立たしげに叫んだ。そういえば攻撃してこなかったから、空気を読んでくれたのだろうか。なんて優しい敵キャラだ。
「今は少し余興を楽しませてやっただけだ。次にこんな隙があったら、どうなるか分かるな」
Xはもうブチ切れ気味だ。ありがとう、君達のことは忘れないであげたいが面倒なのでやめておこう。(酷
「あ、そうだよ。カタキ、お前勝手に介入してベラベラ話すのは止めとけ」
「しゃーせん。じゃあ2対1だけどいいんすか?」
「まぁ腐ってもアイトの体だ。なめない方がいいと思うんだが」
二人はXを改めて睨みつける。
「お前らがそんな真剣に睨んでくるのも、実に気分が悪くなる。早く終わらせてもいいか」
「やだ」
「同感」
カタキが言うと、スガさんも同感の意を示した。なんか先ほどまでのぐだぐっだな下りの後に、こんな真剣なやり取りをしていると、腹痛がしそうなものだ。
「ってかもう俺ダメだ。カタキが来たからちっとばかし和らいでたけど、殺気が渦巻いてんだよ」
「ほう、やはり自らの力に上限をかけていたのか。外すなら外せ」
「痛い目見るなよ」
「スガさんがカッコいい事言ってるよ」
Xが片眉を上げながら挑発してきたので、スガさんも剣を地面に突き刺し、力を解放し始める。カタキの場違いな発言は説明にも値しない。
「Evil・mode」
この言葉をスガさんが発した途端、スガさんの周りにどす黒いオーラが発生し、赤くあったオーラと混ざっていく。四方に黒ずんだ赤いオーラを放出させていく様は、見ていて気分が悪くなりそうだった。
「さぁ、続けようぜ」
周囲に放出されたオーラを、スガさん自身とTruth・ブレードが吸収し、スガさんの目は暗い赤となり、刀身も不気味な色に変わっていた。
先ほどまでのスガさんとは全てが違う。何もかもを殲滅させそうだ。
「スガさん怖いです」
カタキはEvil・modeになったスガさんを見ながら苦笑した。それでも心の底から怖いとは思っていないようだ。
そりゃあさっきまでバリバリカタキに突っ込んでいた人である。いきなりそんなどす黒いオーラを纏われたって、そんな表現で精いっぱいだ。
「赤黒い、か。どちらかというと、黒は私達の象徴なのだがな」
Xもその気迫に押されてはおらず、これから起こる戦いを楽しもうとしているだけである。
「もう止められない。全てを破壊してやる」
スガさんは邪悪な笑みを浮かべ、Truth・ブレードを右手で持ち直す。
「ふはは、それでこそコイツの父親だ!!」
「遅い」
「!?」
Xが狂笑していると、スガさんは感情の籠っていない言葉を呟いていた。それと共に、Xのすぐ横に移動していて、右腰の方で、剣を両手持ちしていた。もう暗い赤に色づいているだけで、視界を閉ざしたような瞳は、その高速移動を裏付けるかのように、赤い軌跡となっている。
Xがスガさんの存在に気付き、行動に移そうとした時は、もう全て遅かった。
「イビル・バースト」
ザキィィィィィィィィン!!!!!!!!!
「ぐああああああ!!!!!」
「え、うっそ」
刹那、技の名が呟かれ、剣でXを斬る。
一刀両断し、その衝撃波で体が刻まれていく。一瞬で起こった現象に、Xも対応できず、ただただ叫ぶだけだ。スガさんの息子、アイトの体はもう使い物にならなくなっていた。星が揺れ、思わずカタキは驚き声を洩らす。
しかし、これは仮の姿。Xの本体はまだ死んではいない。
アイトの体から黒いものが飛び出して、形を成していく。その間、アイトの体は消滅していった。
「絶対に……、許さん……!!!! こんな屈辱などあってはならないのだ!!」
Xは怒りに身を任せ叫んだ。Xの本体、それはただ黒くあるだけの人型のような物質。不完全な存在ゆえに、体の輪郭がゆらめいている。
「それがお前の本体か。殺ってやる」
スガさんは、特に驚きもしていない様子で、感情も無く言い放った。
「スガ……さん?」
カタキは、明らかな異変を感じていた。スガさんがEvil・modeになってから、だ。本能のままに全てを破壊してしまいそうである。
スガさんを止めないと!! カタキは心の中で思った。今も、Xと戦い続けているスガさんを止めなければ、スガさんが、宇宙が危うい。
おそらく、スガさんが現役のSAS勤めであったら、こんな事は無かっただろう。
しかし、今は三十代後半。力の制御がしきれていないと考えるのが妥当である。
「ハハハ、死ねええええええ!!!!!!!」
カタキが考えを巡らせていく間にも、戦いは終わらない。Xが叫んでスガさんに殴りかかる。
「素手じゃあどう考えても不利だと分かんないのか」
突っ込んでくるXを剣でいなし、そのまま放り投げる。もはやXを弄んでいるとしか思えない行動だ。
「―――さーせん、スガさん」
周りの景色が見えていない二人の戦い。だからこそ、隙をつける。
考えが纏まったカタキが呟いて、スガさんの背後に回ったのだ。そして、スガさんの首筋を、右足を上げて思いっきり蹴った。
「うああっ……!!」
ドサッ
スガさんが、気絶したようで倒れてしまった。カタキにそんな力があったとしても、あんな戦いを繰り広げていた人がこんなに呆気なく倒れるのはどうかと思う。しかし、力の消耗が激しかったのだろう。
カタキはスガさんが倒れるのを確認してから、上げたまんまの右足を下ろす。
「これでスガさんだけが死ぬ可能性は回避っと」
いつもはあんなにアホなカタキだが、こういう時はちゃんと頭が回るようだ。
「わざと一人にでもなって何をする気だ!! スガさんがいなくては私達が全て滅ぼすぞ!!」
Xはスガさんが気絶した事に少々の不満はあるものの、それはそれでまた一興という心らしい。体から、より一層黒いものが放出される。
「それはどーかな? さ、決めるよー」
カタキは笑みを向けながら腰を落とし、飛び出す態勢になる。双剣の内、ルイン=ブレードは収納されていて、エンド=ブレードを両手持ちにし、右腰辺りに構える。
「ハハハハハ!!!! 来るなら来いッッ!!!!!! 返り討ちにしてやるわ!!!!」
Xは高笑いし、両腕を広げる。そんな事に構わずカタキが突進する。
「エンド・スラスト」
カタキは剣の表裏を二度変えながら、Xの後ろで止まった。その間にゆっくりと技の名を言い放つ。
しかし、何も起きない。
「所詮は見かけ倒しの技か!! 死ねええええ!!!!」
Xが自分の身に何も起きていない事を、カタキが弱過ぎだと思い、そのまま後ろで直立しているカタキに殴りかかろうとした。
でもそれが間違いだったのだ。
「さようなら、X」
シャキン
「な……に!?」
カタキがエンド=ブレードをしまった瞬間、Xの腹の辺りに複数の傷をつけ、そこからXの体が真っ二つに斬れていた。Xは最期にカタキを殺そうとするが、腕が届かない。
カタキはXの方も向かずに言い放つ。
「まさか簡単に死ぬなんて思わなかったなー。これ、効く人と効かない人があるし。とりあえず、Xには効いたみたい。そんな怨念の塊なら」
ここまで言うと、カタキはXの方を向いて、
「成仏しなよ」
と一言。この言葉が終わったと同時に、Xが消滅していく。
「許さん……!! 許さんぞ……!! だが私達の魂は消えることはない!! 今、この時にも理不尽に命を奪われている人がいる限りはぁぁぁぁぁ!!!!」
口角泡を飛ばしそうな勢いで一気に言うと、光のエフェクトと共にXは消滅した。ただ、Xの言う事を信じるならば、Xの精神は完全には滅びず、また新たなXが誕生した時に受け継がれていくのだろう。
「はぁ……。久しぶりに疲れたなぁ……。おーい、スガさーん。終わりましたよー。起きてくださーい!!」
カタキは首をコキッと鳴らすと、そこらへんの地面で気絶しているスガさんを揺さぶり起こそうとする。
「んーあーおーふーあーぐおへぇ」
「なっかなか起きないなぁ……」
どうしたものか、と腕組みをするカタキ。
しかし、まだカタキは気付いていなかった。自分達がとんでもない事をした、という事と、そんな事をすれば、Xよりも恐ろしいであろう、いつまでもどこまでも付きまとう、ある意味かなり疲れてしまう存在に追われるという事を……。
既にその存在は宇宙の各所から、二人がいる星に来ようとしていた。
それより何より、一応宇宙の平和は救われた。
そんな二人を祝福するように、宇宙に光る星は一層輝いてみえた。
次話に続く
お、終わったぁ……。次話で一章完結です。
お知らせ;13話は3月18日午後6時くらいに投稿