ヤンデレの分類
概説に引き続いて、今度はヤンデレをいくつかの分類に区切ってみようと思う。
これらは筆者の独断と偏見だが、ヤンデレには大別して四つの種類がある。
これらを列挙し、分析、解説、そして考察を交えた私見を述べてみたいと思う。
1.独占型
おそらくこれが最も主流であると考えられるタイプである。
この系統のヤンデレは、何よりもまず意中の人間を自分の制御下に置くことを望む。独占欲と嫉妬が強く、いろいろな手段を弄して異性とのつながりを絶とうとする。自分の姿だけを見て欲しい、自分の声だけを聞いて欲しい、自分の心だけを受け入れて欲しい……。そして邪魔なものを除去していく。対象の視界にはヤンデレしか残らず、対象の鼓膜にはヤンデレの声しか残らず、対象の心中にはヤンデレしか残らない。
それはだるま落としに似ている。木槌で一段ずつ抜いていく。家族や友人、他の異性とのつながりが断絶していく。疎遠になる人間関係。そして一番最後に残存したものこそが、ヤンデレなのである。
このタイプのヤンデレは勢い余って監禁や脅迫に走るケースが多い。
2.依存型
簡潔に言えば、対象に粘着質になり、過度に執着する傾向を示す。
このタイプは自己が希薄で、何よりもまず対象の意向に沿うよう行動する。行動規範は常に対象に置かれていて、他の物は歯牙にもかけない。相手さえいればそれでいい。完結している。
次いでこのタイプは、依存相手がいなくなれば恐慌を起こす算段が高い。相手に自分のあり方や生き方を仮託しているため、何もできなくなる。襲ってくるものは吐き気を催す不安とパニックである。何も成すことができず、何も達することができず、何も遂げることができない。自らの指針を相手に預けている。
このタイプのヤンデレは無理心中を企図したり、「あなたを殺して私も死ぬ」といったパターンが多い。
3.妄想型
頭の中がお花畑である。
物事を自分にとって都合のいいようにしか解釈しない。既に自分の中で物語は完結しており、対象がそれにそぐわなければ暴力も辞さない。勝手に決めつけ、「そうあるべき姿」を対象に強いる。ある意味最も身勝手かもしれない。
仮に対象が拒絶や反抗の意を表明しても、やはり都合のいいように解釈する。自分の愛を確かめているだとか、○○はそんなこと言わないだとか、誰かにたぶらかされたんだ……等々、「そうあるべき姿」というバイアスをかける。何よりもまず、自分の望むあり方が先行する。現実と理想の区別がつかない。屈折した愛。
このタイプのヤンデレは、現実と理想との乖離から最終的に対象を殺害する場合が多い。
4.狂気型
正直、ヤンデレという感じではない。
このタイプはどちらかというと後天的なものではなく、先天的な場合が多々見られる。
おそらく読者の想像するヤンデレは、愛ゆえに壊れ、狂っていく様だと思う。しかしこの型枠は、初めから致命的な欠陥を抱える人間がたまたま人を好きになったというだけである。もとより思考を破綻させているため、自ずと行動も狂気に満ちている。その狂気が対象を破壊するという死に結びつくものもいれば、対象を神のように崇拝するものもおり、あるいは食人癖や異常性癖を抱えているものもいる。正直愛の有無や多寡は問題ではなく、元より狂っているのである。純粋な愛に一滴、劇薬のごとき狂気を垂らしたがゆえに発生する。
このタイプのヤンデレは、理解者が現れれば平穏に収束することもなくはない。
極めて大雑把な区分と言わざるを得ないが、大まかな系統を網羅したと思われる。当然誤記や遺漏もあると思われるが、是非ともご容赦いただきたい。