今は昔、遊戯開始の咄
あっちこっちからカリカリと音のなる教室、時たま先生がこっちに向かって
喋り出す、そう今ここは学校で授業中の教室である。
真面目に勉強に励む生徒もいれば筆箱を盾にスマホをいじる生徒、午後だから眠いの
か完全に爆睡している生徒もいる、そんな中に一人空中に浮かぶ人影が存在している
だが、誰も気にもとめていないようだ。
それもそのはず、なぜなら普通の人間には見えていないからである。
かと言ってこれが幽霊というわけでもない、確かに黒髪がとても長く十二単の着物を
来ているので、そう言われれば信じてしまいそうである。
だが彼女は幽霊ではない、正体と言ってはなんだが特定の人物にしか見えないホログラムデータであるそれゆえに、一般人には見えていないのだ。
でも、そんな中それと会話する一人の少女がいた身長は147位と、とても小柄で宙に浮いている女性と服装と目の細さ以外はそっくりな少女、名前は小野理 輝奈
この少女がこの世界で言う遊戯参加者である
この類のホログラムデータはユーザーと関係者にしか見えない
しかし、例外もありたまに特異体質の人間がこのホログラムデータが見えることがた
まにあるそうだ。
そんなホログラムデータは退屈そうに輝奈に喋りかけていた。
「輝奈や~妾はつまらぬぞ…」
「いま授業中だから黙っといてくれるかしら?」
「ゐつもは勉強せず寝たり絵を描いたりしてをるのにか?」
「うるさいわね、テストが近いのよ流石に欠点取るわけにはいかないし」
「そこの問題、間違えておるぞ…」
「うっさい!、あ…」
つい本気で叫んでしまったのを今頃になってはっと気付く
しかしてるなに向けられた冷たい視線は回避することはできず
「小野理!!」
先生にも怒鳴られてしまう始末である
「す、すみません…」
しょんぼりと、体制をもとに戻し授業に戻るその隣でホログラムデータである彼女は
くすくすと笑っている
「輝奈、叱られたのぉ」
「誰のせいよ!」
彼女を睨みつけ声を殺して叫ぶ
「さぁ、だれじゃろうなぁ?」
そんな事をしているうちにチャイムが鳴る、寝ていたやつも起きて
一斉にざわつき始める教室、ホームルームも終わり、放課後となる
みんなが、「今日どうする?」や「部活いこうぜ!」などと
はなしをしている中、輝奈はそれら全てに興味なさそうに教室を後にする
それを追いかけてホログラムデータも教室を出て行った。
学校の正面玄関に置いてある下駄箱で輝奈が靴を履き替えていると
「て~る~にゃ~~ん!!」
輝奈の後ろに飛びついてくる女生徒、身長が見たところそこそこ高く
片方だけの三つ編みが印象的な黒髪の女子
輝奈友人の宮下 日向である
「ひな…重いよ…」
「なぬ!?僕が太ったと、そう言いたいのかい!?」
「いや、誰もそんなこと言ってないし…」
「相変わらず仲睦まじいのぉ日向よ」
「おや?かぐやもいたの?」
「契約者と式神は一心同体じゃろ?」
「まぁね」
そう、宙に浮いているホログラムデータの名は日本人なら誰もが知る竹取物語の
主人公かぐや姫である
輝奈のユニット登録データ及び形式番号
今昔タイプユニットtaketoriunit915kaguya
これが彼女の正式な今の名前である、因みになぜ日向がこのかぐやが見えるのかと
言うと、彼女もまた遊戯参加者だからである。
しかし、輝奈と違って周りにかぐやのようなホログラムデータは浮いていない
これは、輝奈や同じホログラムデータのかぐやですら見たことがないらしい
「はぁ…、せっかく明日は休日なんだからさっさと帰って寝るわよ」
「いや意味わかんないよてるにゃん、なんで明日休みなのに寝るのさ?」
「眠たいからよ」
「相変わらず掴みどころないね」
「あんたにだけは言われたくないわよ」
そんな会話をしながら学校の正門を抜ける、その時だった日向と輝奈の表情が変わる
「久々に来たわね…うっふふ♪」
薄羅笑で笑う輝奈、日向もワクワクした顔でどこかを見つめる
しばらくすると、周りは光に包まれユニットが現れた、そう二人はこれを感じていたのだ
遊戯参加者は何故かは、知らないがユニットが他の遊戯参加者により出現させられる直前に
なにかしらの感のようなものが働くらしい、さっき彼女たちが不意に何かに反応したのもこのためである。
「かぐや行くわよ!」
「御意じゃ!」
勢いよく何かをしようと長い髪の毛に触れた瞬間そこでてるなの動きが止まる
「?、何事じゃ?輝奈」
「狂が覚めた…」
そう言って親指で後ろを指す、見てみると最初に現れたユニットの他にもう一体ユニットが出現している。
「てるにゃん先越されちゃったね」
慰めているつもりなのか、輝奈の頭をぽふぽふと叩く日向
「なんのつもりよ…」
「いやぁ慰めてあげようt…」
日向が話し終わる前に本人の首には黒色の切れ味が良さそうなカッターナイフが日向の首元に当てられていた
「てるにゃん、頼むからそれやめてぇ~」
「頼むから二度と子供扱いしないで?ワカッタ??」
「わかった、分かりましたからその某切れ味抜群の黒カッターしまってぇ~~!!!」
体が小さいことが原因でよく子供扱いを受ける彼女、そもそも大人にはどう見ても見えないわけで
しょっちゅう、こんな感じで日向と絡んでいたりする。
「始まるぞ」
かぐやの一言で仲良く絡んでいた二人も真剣な表情になる
片方の(最初に出現した)ユニットは腕に白いムチのようなものを巻いていて
手が蛇の頭のような形状をしている。
「情報確認、今昔タイプユニットkaiiunit0208hakuda、現時点の得点2P」
かぐやが何かにとりつかれたように情報をスラスラとてるなに伝える
「今昔タイプねぇ、自分と同じタイプか…でもポイントを聞く限り初心者ね」
もう片方(あとから現れた)のユニットは所々につばさのような形の飾りがついており
全身真っ白がとても目立つユニットだ。
「あれって、まさかぁ…」
「まさかもなにもあんな目立つ機体あいつしかいないでしょ」
「だよね~」
もう片方のユニットはどうやら、輝奈と日向の知り合いのようだ。
その、輝奈と日向の知り合いから先制で攻撃を仕掛ける
真っ白なユニットが前に手をかざすと、十字型の武器が出てきたそれを手に取ると
そのユニットから光の翼が4枚と天使の輪が頭部に出現した。
「相変わらずの手加減なしね、あのバカ」
「初心者狩りの藤井の異名は有名ですから」
「それにしてもひな」
「ん?」
「少しまずいわね」
「どして?」
「自分たち校門の外にいたから結界の外に出たわよ」
「あ…」
「戦闘の被害に巻き込まれないよう気を付けないとね」
「言っても、僕とてるにゃん被害受けても平気だけどネ…」
そんな会話を二人がしている間に二体のユニットは戦闘を繰り広げていた
だが、真っ白なユニットはかなり余裕に遊んでいるようにも見える
さっき二人が話していた通りこのユニットのユーザーである藤井という人物は
狙っているわけではないが、当たるユニットが大体初心者という初心者狩りと呼ばれてしまうのも仕方がないような状態になっている。
もうひとつの理由としては、初心者に手加減がないということだ
いつもどんな相手でも全力で潰すのが彼のやり方である。
その藤井のユニットの十字架が相手のユニットの伸びた腕を切り落とす
そして、十字架が相手ユニットのコアと呼ばれるいわばコックピットを貫いた。
その瞬間、倒されたユニットの破片が勢いよく周りに飛び散る
「輝奈!危ない!!」
「!?」
輝奈が叫んだ日向の声に反応する前に破片は勢いよく輝奈の体を後ろから突き刺した。
周りに真っ赤な血が飛び散る、破片は100cmはあり、見事に輝奈の体を貫いている
破片には輝奈の内臓らしきモノも絡まっていて、見るも無残な状態だ。
周りの人間がそこに群がる、ひとりの男が「お嬢ちゃん大丈夫か!」とさけぶ
「どこをどう見ても大丈夫じゃないでしょ…」
普通喋れるはずのない輝奈がその男に返事を返す。
周りの人々は一瞬目を…いや、この場合耳をうたがっただろう、普通は即死の大怪我をおっているはずの人間が喋っているのだから。
その死んでいるはずの人間が
「あんたも…見てないで、ゲホッ…破片抜いてよ…」
血を吐きながら喋る輝奈のお願いに日向はニコニコしながら首を縦に降った
「いくよ、てるにゃん」
破片を握り綱引きのように勢いよく「そぉれぇぃ!」と掛け声付きで引き抜く
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
これ以上ないまでの悲痛な悲鳴をあげた後に破片は輝奈の体から取り除かれていた
しかし、とうの本人はばったりと倒れてしまい、まったく動く気配がない、今度こそ死んだんじゃないかと、まわりの人々は思っただろう、だが現実は予想を大きく外し、少女は何事もなかったかのように立ち上がった。
「てるにゃん、みんなビビってますけど…」
「いつものことでしょ」
「いや、そうだけどさぁ…っていうか、そのズタボロ真っ赤な制服でうろつく気?」
「まっすぐ家に帰るわよ」
「いやそういう問題じゃなくて」
よく見れば輝奈の背中からお腹にかけてできたはずの風穴は綺麗に傷跡一つ無く治っている
周りに飛び散った血や内臓と言った肉片は奇妙な青い炎で燃えてなくなっていた。
「よ!」
日向と輝奈の前に現れたのは一人の男子、きのこみたいな髪型に触覚のようなアホ毛
嘘つかなそうな、表情と瞳身長は162cm前後。
そう、彼こそさっきまで真っ白なユニットを操り輝奈をあのような目に合わせた張本人
藤井 涼馬である
「いやぁ、さっきの戦闘結構面白かったぜ?相手が以外に粘るからちょっと時間かかちまった
なるべく、被害最小限にしたかったんだけどなぁ、てかなんでこんなに人いっぱいいんの?」
「藤井や、お主は本に空気の読めぬ、愚か者じゃな…」
「え?」
かぐやの言葉で周りの視線に気づき周りを見渡す藤井、その怖い視線の中には当然輝奈も含まれている
「俺、なんかした?」
「今すぐにでも君を殺したいけどその前に自分たちが殺されそうだから…ひな!」
「りょーかい」
輝奈の合図と共に日向が涼馬と輝奈の手を握る、次の瞬間にはその姿は無く輝奈達の周囲にいた人間は周りをキョロキョロして「自分はこんなところで何をしていたんだ?」と、皆口々にそう言っている、日向達の存在は愚かさっきあった出来事すら忘れているようだった。
一方、日向たちはと言うと、実はただただその場を走って逃げただけだったのだ
これが日向の能力らしく、一番仲がいい輝奈すらその能力の正体がわからないらしい。
「さーて?どうやって殺してあげようか?」
長い髪の毛から呪いをかけられそうな目が藤井を睨む
「てるにゃん、さっきの破片まだ持ってるけどどうする?」
血まみれの棒状の破片をブンブンと涼馬にむかって振り回す日向
「いやいやいやいや、訳わかんねーから!っていうか宮下さっき俺と小野理の手握ってたよな!
どこにそんなの、持ってたんだよ!」
「誰もお前の手なんか握ってねぇし」
「え!?」
「いや、お前の思い込みねそれ」
「意味分かんねぇ、色々と…」
頭に大量の「?」を浮かべる藤井にかぐやが口を開いた
「壱から解説するとじゃなぁ、輝奈が怒っておるのはお主(藤井)に久々に出現したユニットを横取りされたからと言うのと、その戦闘で破壊したユニットの破片が輝奈に刺さってしまい二度も殺されたことじゃ、次に、人々はそれ(輝奈に破片が刺さった事態)にむらがってゐたのじゃ、平民は遊戯が嫌いであろう?それなのに事態を起こした人間がその現場に現れれば恨まれて当然じゃろう、それと、日向の能力がお主に手を握ってゐると錯覚させたとそれだけじゃ、以上で解説終了じゃ」
話が終わる頃には藤井の頭から煙が出ていた。
「何かもうアホすぎて殺す気にもなれないわ」
「だよねー」
呆れかえる輝奈と日向、日向は投げやりに例の破片を後ろに投げ捨てた。
そろそろ帰ろうかとしたとき、二人の前に四枚の翼を持った黒装束の天使が現れた
「すみません少女達よ、どうかこの愚か者を許してやってはくれませんでしょうか、こう見えても彼も久々に暴れられると楽しげだったのです。もちろん止めましたがききませんでしたよ?貴女を殺したのも悪意があってやったことではありませんしそのぉ…」
「わかってるわよ、殺したいほどムカついてはいるけどミカエルがそう言うなら許してやるわよ」
「慈悲深き少女よ主もきっと貴女を見ていますよ」
彼は神話タイプユニットtestamentunit0702Michael
つまりはかぐやと同じでユニットである、実はさっきの真っ白なユニットは彼であるといっても過言ではない、ユニットはホログラムデータが実体化した存在であるからだ、しかし、本体がホログラムデータと言う訳でもないので、実のところはどういうシステムかは、開発者辺りの人間しかわかりえないのだ
「さて、帰るわよひな」
「おっけ~」
「お、おいちょっと待てよ!」
そそくさと帰る日向と輝奈を追いかける藤井。
こんな日々でもそれなりに楽しいそう思う輝奈、ユーザーになる前の自分には絶対に戻りたくない
そんな思いから、優勝も狙わず戦いた時に戦うと言うシステムをとっている、しかし最近はそのユニットすら現れる事が減ってしまっている。
それでもこんな世界なら生きて行ける、前まで死ぬことを恐れなかった自分は、今は生きることが怖い死ねない体になってわかったこともたくさんある、それでもまだ、この世界はつまらない。
「てるにゃん?」
「ん?どうしたのひな」
「ぼーっとしてたよ、なんか考え事?」
「そうね、この世界も、少しは面白くなったかなって…思っただけ」
「昔はつまらない世界、面白くない、存在してても意味がないとかばっか言ってたのに最近変わってきたね、輝奈」
「何よいきなり名前呼びなんて気持ち悪い」
「えへへへ」
でもまぁ、実際そうだ自分は、ユーザーになる前はこんな世界にうんざりしていた、最低な人間の器の小さい行為によって、人生を潰される人間、それを正す者も犯罪に手を染め、上に立つ者は自己中心的な考えを他人に押し付け、結果的に自分しか得をしないような結果を出す、世の中は正当な人間ほど堕ちていく、いや、堕とされて行く、そんな腐りきった世界はとてもつまらなかった。
だって、そうでしょ?人を外見やデキだけで判断する、いくら心が綺麗で見た目とは裏腹な能力を持った人間でも、見抜いているようで見抜いていない人間が決め付けて行く、自分はそうやって何度も裏切られた、都合が悪ければ目を背け逃げるような人間のなかで育った、腐ってる本当にどうしようもない、だから毎日をアニメや漫画なんかのとても綺麗な世界を見て退屈をしのいでいたのに、それすらも許されなくなった頃、自分はかぐやと出会い、ようやく少しは面白い世界を見つけることができた。
でも代償はおおきかった、そう<永遠の命>いわば不老不死だ、死ぬことを許されない、人生から逃げることができない、一時期それに悩み果てて何度も自殺を図ったが全部無駄だ得た物といえば、死の痛みに耐えること、それとこの体は元はいつ死ぬかわからない体だった、その上からの不老不死だ、つまり、いつ死ぬかわからない不老不死いかにも中途半端な体は心底使い勝手が悪い、それでもこの遊戯が面白いから、まだ生きていられる。
「なんで不老不死なんだろう」
ふと、思わず声に出してしまう、でも日向は笑いながら
「僕のお願いが叶ったとか?」冗談なのか、本気なのか、それでも日向のために生きるのも悪くはない
外に出てみて、中ではわからなかったこともたくさん知った、知らなくていいことも含めて。
頑張って、生きてみよう、この思いは大切にしまっておくと、そう決めた、あの人のためにも。