ロリっ娘の人の分その2
ノリと勢いだけで書きました。
相変わらず投げっぱなしでごめんなさい
シャルルは少女の手から綺麗な三角形をしたライスボールを受け取ると、躊躇う事なく口に運ぶ。
表面はすっかり乾いてしまっていたが、それが味を損ねる事はなく普通のライスボールと何ら変わりはなかった。
自分が気にし過ぎていたのだろうか。
一口、二口と続けざまに口にして、ゆっくりと咀嚼する。
単調な塩と米の味にいささか飽きて来た所で、塩辛くて酸っぱい梅干しに行き当たる。
米の味が引き立つ絶妙な組み合わせの一つだと言われるが、食べ付けていないシャルルにとって、この味は余り得意なものではない。
それでも食べると言った以上、最後まで食べきらない訳にはいかない。
シャルルが静かに咀嚼していると、その様子をつぶさに見ていたハンナがくすりと笑う。
「ねえ、先生。知ってるかしら?三角形のライスボールは他のライスボールと違って「おむすび」って言うの」
「そうなのかい?」
掌に付いたコメ粒も綺麗に舐め取って始末しながらシャルルがハンナの言葉に耳を傾ける。
「三角形のお結びは、元々神様への捧げものなの」
もう廃れてしまって、殆どの人は知らないけれどと祖母が昔話していたわとハンナが続ける。
「だから、きっとそれにも特別な力が宿っている筈よ?」
「……特別な力…ねえ…」
こうやって一欠片も残さずに食べてしまったが、シャルルの身体は何の変調もきたしていない。
「疑わしいって思ってるでしょ?」
「…伝承は伝承でしかない事も時としてあるからね」
シャルルが言葉を選びながら言うのを見て、ハンナが小さく肩をすくめる。
「いいのよ別に。私も疑わしいと思っていた所だから。…でも疑う必要はなかったみたい」
「どういう意味だい?」
「判らない?」
そう言って、ハンナがぺたぺたとシャルルの頬に触れた。
「こら!やめなさい!」
満月期は狼化していない時でもその影響が非常に出易い。
気性が荒くなり、普段よりも感覚が鋭くなる。
身体的に言えば、体毛が濃くなり、眼光が鋭くなる。
そんな男の顔に不用意に触るものではないと言ってから、ふと、ハンナが頬に触れた時に生じた音に気が付く。
「…判った?」
「どういう…事だ?」
「狼化が解けてしまったってことじゃないかしら?」
「…まさか」
「一時的なのか、恒久的なものなのかまでは判らないけれど、ね」
廃れてしまった伝承もそう馬鹿に出来ないってことかしら。
楽しそうに、ハンナが笑った。