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迷い
「おねえちゃん、絵本見ていい?」
「いいよ」
ミカちゃんはうれしそうに笑って、絵本を開いた
ミカちゃんが読んでいるのは、私がいた絵本だ
この絵本を読んでいる時、ミカちゃんの瞳はキラキラ輝いている
それを見ていると、私はうれしいような気持ちになる
夕方になり、ミカちゃんは帰っていった
ひとりになると、急にさびしさがこみ上げてきた
私は絵本を開いた
そこには、私と入れ替わった女の子が、にっこりと笑っていた
この絵本が、この家にやってきた日のことを思い出した
この絵本を大切に抱えて帰ってきた母は
「見て この女の子、あなたと同じ名前なのよ」と、うれしそうに言った
入れ替わる前の私も、この絵本が大好きだった
ミカちゃんと同じように、キラキラした瞳で読んでいた
あの日から15年
私は、いろいろなことを経験した
あこがれていた、大人にもなった
今までの時間には不満はないけれど、近頃ほんとうにこれでよかったのかと思うことが多くなっていた
涙がこみ上げてきて、私はつぶやいていた
「戻りたい」