誕生日なのに
今からする話は、15年前、私の身に起こった不思議なできごと
何人かの友人に話したが、夢でも見たんだよと、みんなは言った
私自身、あれは夢だったのかと思うことが今でもある
だけど、あのできごとがそれまでの私を変え、今の私へと導いてくれたんだと、私は思っている
それは、私の10才の誕生日に起こった
学校が休みだったこともあって、友人も来てくれて、楽しい時間が流れていた
母がケーキを切り分けて、みんなに配ってくれた
私の大好きな、イチゴのケーキだった
私はとってもうれしかった
なのに、弟が私のイチゴに手をのばした
「なにするのよ」
私は、弟をひっぱたいた
弟が泣き出した
母が私を注意した
「あなたはもう10才でしょ
大人に向かう区切りの年なのよ
小さい子には優しくしなきゃダメでしょ」
「もういいよ」
私はケーキを床に落として、部屋へと駆け込んだ
しばらくすると、弟は泣きやんだ
母がみんなに謝っている声が聞こえ、友だちも帰って行った
「なによ、お母さんったら
今日は私が主役なのに、友だちの前で叱らなくたっていいじゃない」
私は泣きながら、絵本のページを開いた
そこには、私と同じ名前の女の子がにっこり笑っていた
つづく