アインは気づいてる? 真相まであと少し
長の家にご招待→長から仕事の依頼される→アイン様~これから帰りますよ~
レニと別れた後の我らが主人公のアイン。彼は何をしていたのかと言うと、宿で受付を終わらせていたのだった。
レニが街の長の家から出た頃にはベッドに腰をかけて開いた窓から外を眺めていた。
彼が借りた部屋はベッドと机が二つずつ、後は適当に短期間過ごすには不自由ない家具が置かれている部屋。本当は別々の部屋にしたかったのだが、生憎と部屋に空きがなく仕方無くレニと同室にするしかなかった。因みに、アインが借りた宿は一階に飲食店を経営しており、二階に宿として使われている部屋が七部屋ある仕組みになっていて宿の受付も食事の支払いをする所も扉の近くにあるカウンターで行われているのだが、関係無い話である。
おもむろにアインは立ち上がり、窓に向かって歩を進めると鍵をあけ開放した。換気の為だろうか? いや、違う。
初めは遠くて気づかなったが、アインとレニが別れた際にレニの後を追いかけさせてた掌に収まる程度の光の玉が飛んできたのだ。開放された窓から部屋の中へと入り込んできた玉、遠見の玉と呼ばれるマジックアイテムを手に取る。
「……なーるほどねぇ。ハゲの依頼はいつもめんどくせぇな」
遠見の玉とは何か? 簡単に言ってしまえば持ち主の魔力を流し込む事で自在に動かす事が出来る様になり、更に周囲の情報、例えば遠くの景色や遠くの会話を魔力を通した者に伝える事を可能としたアイテムである。
アインは遠見の玉を使いレニ達の会話を聞いていたのだった。
先ほどのアインの一人言に出てきた人物、ハゲと呼ばれた者の依頼でここ最近の行方不明者の続出の原因を調べてくる事になってアインはこの街に来ていたのだが、依頼された際に聞いていた情報ではモンスターの話は無かった。
これはただ単に、関係の無い所でモンスターが出てきたのか。それとも……とアインが考えていると慣れた魔力を感じた。
レニが戻ってきたのだろう。が、アインは表情に思いっきり嫌そうな感情を出す。場所を伝えてなかったのに早々に見つけやがったかと内心悪態をついていたのはここだけの秘密である。
そうアインが思っていた頃、レニは宿の受付でアインが借りた部屋の番号を聞き出していた。
その際に一階の飲食店の男性客の視線を一身に受けていたレニだったが、いつもの事であったので気にせずに階段を上っていく。その時、彼女持ちの一人の男が足を思いっきり踏まれ変な声を出していた事は関係無い話である。
受付で聞いた部屋に辿り着いたレニは番号を確認すると、早速扉を開けた。
部屋の中には案の定アインが面倒くさそうにベッドに腰掛けていて、その姿を目にすると思わず笑みがこぼれてしまった。
「アイン様、只今戻りました」
「おぅ。報告はいらん。これで聞いていた」
そう言って手に持っていた遠見の玉をレニに見せる。
「はい。ところで、私の部屋は隣で?」
「いや、今日は同じ部屋だ。何故か部屋が空いてな」
「アイン様!!」
話を途中で遮られたアインはレニを見ると、面倒くさそうな顔がより面倒くさそうな顔になった。何故なら、ほんのり頬を赤く染め、思いっきり期待を込めた眼差しで見つめてきたからである。
「とうとう、私を受け止めてくれる気になってくれたのですね。私レニは、この時をどれほど待ちわびた事でしょうか!!」
そう言うやレニは魔力を一瞬で全身に通し『身体強化』の魔法を重ね掛け、常人では反応すら出来ないスピードでアインに飛びついた。……が、アインも慣れたものだ。
常人では反応すら出来ないスピードを出したレニに対して焦りもせず魔法を発動、魔力で前方の空気に干渉し分厚い氷の壁を一瞬のうちに作り上げたのだ。
突如現れた氷の壁に超スピードのレニが避ける事など出来ず飛びかかった姿勢のまま顔面からゴンッ!と激しい音を出してぶつかり、そのままズルズルと床に落ちていくのであった。はっきり言って、才能の無駄使いである。
ちなみに、一階の足を踏まれた男が必死に謝る事で女が足の力を緩めたその時。二階から何かがぶつかった様なもの凄い音が響いてきてびっくり驚いて思わずまたも足に力が入ってしまい、男の二度目の変な声が響いたのは関係の無い話である。
「で、落ち着いたか?」
「うぅ……アイン様の愛情表現は痛いです」
「死ね。氏ねじゃなくて死ね」
アインがもう一度魔法を使おうとするとレニは慌てて嘘です冗談です!と涙目で誤る。
そんなレニにアインがため息をつき、レニはアインをこれ以上怒らせない様に遠慮気味に見つけてた椅子に座る。
「レニ。今日一日で何か思う所はあったか?」
「ギルド本部長の依頼の事で宜しかったでしょうか。それでしたら、正直の所私自身答えは見つけておりません」
ですが、と言葉を続ける。
「この街の長であるイザヨさん、それから長お抱えの魔法使いこと、アババさん。このお二方曰く街の外にモンスターが住み着いたとの事ですが……。モンスターに襲われているにしては、街の中にその情報が全く流れておりませんでした。これは、街の人々がなのか、イザヨさん達が何かを隠しているのでは無いかと思われます」
「そうか。じゃぁ、ヒントをくれてやる」
「ヒントですか?」
「ああ。一般人が言っている事に嘘は無い。お前に何かを隠しているとしたら、イザヨとアババだ」
そうアインに言われ、レニは今日の会話を振り返る。おかしな点はなかったか、嘘をついている素振りはなかったか。
「……アイン様。明日、イザヨさん達と会う約束があります」
「じゃ、そん時にでも判るんじゃねえの? しっかり見抜いてこい」
「アイン様は別行動……ですか?」
「お前が失敗した時の尻拭いだ」
アインとまた別行動になる事に残念だと思ったレニだが、アインの手をかりずに解決出来れば褒めてもらえるかもしれない。そんな考えに辿り着くと元気な声ではいっと返事をするのであった。
大変お久しぶりの投稿です。待っていてくれた方はいらっしゃいましたか?
もし、居る様でしたら本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
執筆をやめるつもりは無いですが、不定期更新は確実です。こんな私ですが宜しくお願いします。




