後悔のない人生を
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
それは夏の声も聞こえてくるような、春の終わりを告げるような季節だった。
これは、僕の後悔だらけの遺書。
ちょうど2年か、そこらか後悔のど真ん中の話。
高校を卒業した僕は頭が悪くすぐに就職をするほか道がなく、身を委ね職についた。
そこは高校卒で入った割にはアットホームで明るい職場だった。そこは所謂倉庫内の作業だった。指導につく先輩方も優しくしてくださり、すぐに馴染むことが出来た。初めて社会人の一員として働けていること、人のためになっていることに喜んでいた。僕はこの時、正しかったのか自問自答している。
働き始めて数年経った頃後輩が出来た。その後輩の名は田宮と言った。偶然、同校の後輩だということを知りそこからは仲良くなった。互いに若く慣れていない煙草を吸いながら仕事の愚痴や、プライベートな話をしたりそんななんでもないような日々を過ごした。田宮はいつも元気で明るく冗談を言ったりするおちゃらけた人間だったが、仕事中は真剣に取り組んでおり分からない部分があればすぐに聞いたりしていた。
一言で言えば世渡り上手だった。
そんな彼も遅刻や当日欠勤も多い人物だった。
田宮にこんなことを言ってる自分も同じように朝が弱く遅刻が多かったりと目立つ部分があった。
同じ高校で生き方が似ていたりと重なる部分が多くどこか憎めないとこがあったり。お互いに遅刻した日には「何遅刻してるんすか〜(笑)」なんて言い合ったりの日々。
ミスをすればジュースを奢ったり奢られたり、そんないち後輩先輩を超えた友情を感じてた。年はひとつ違いだか僕は心の底から友と思っていたし、むしろ友達の多い方ではない僕ではありますから余計に友達と感じていた。
その日も田宮は遅刻をしてきた。
そのうえミスが重なり田宮の仕事だけが午前中までに終わらせたい仕事が終わらない、そんな日だった。
僕も僕でその日は午前中に終わらせなきゃいけない業務が終わらず、お昼休憩を10分ほどオーバーして事務所に向かった。
今日は厄日だなーなんて思いながら歩いていた時後ろから不意に足音が聞こえた。
他の人は皆、事務所でご飯を食べてる時間だよな?と思い後ろを振り返ると田宮がいた。普段ならあちらから話をかけてくるのにその日は無言で2人とも歩いていた。僕はその日の業務で疲れており喋る気にも起きず、あちらから声をかけてきたら話そうぐらいの気持ちで事務所へ歩いた。
事務所の前につき扉を開け、扉を押さえて田宮が入ってくるのを待ったが居ない。遅刻に加えミスで遅れていたのもあり他の皆に会わす顔無いのかな、なんて考えながら事務所の扉から倉庫内を見た時田宮は外の扉に手をかけて外に出ていくところだった。外の自販機で飲み物でも買うのかな?でも今の時間的にもうご飯食べてる時間だよな?てかなんで後ろから来たんだろう?なんて考えながら事務所へ入りご飯を食べた。
それが田宮を見る最後なんだとも知らずに。
お昼休憩が終わり午後の作業が始まったが、どこを探しても田宮がいない。今までも遅刻をしたり、作業が遅れることはあれど、居なくなるなんてこと無かった。
これはおかしいと皆感じ、職場の外を探したが見つからない。お昼休憩中外に向かった田宮を見たこともあり、もしかしたら家に帰ったのかもしれないという結論に至り、田宮の家を知ってる僕と上司の二人で家へ向かうことになった。
田宮の家は職場から遠く、電車を使って向かうのが早いということで上司と電車で向かった。
最寄りの駅に着いてからは僕が道案内した。
道中、上司と家にいなかったらもうどこにいるのかお手上げ状態じゃないですか?なんて話しながら歩き、家の前に着いた。
そこには1台の救急車が止まっていた。田宮は実家暮らしだったこともあり、外で救急隊の人と一緒にいるお母様からお話を伺った。
正午過ぎに忘れ物をしたと言い帰ってきて、自分の部屋にいったと、しかし何分たっても出てこない為部屋に入ったところ、首を吊っていたと聞いた。
そこからは記憶が朧気で、職場に戻って仕事をした気もするし家に帰らされた気もした。
田宮はその日のうちに亡くなった。
頭の中ではどうしてという言葉が止まらない。
元気で明るかったのにとか、溜め込んでいたなら相談をしなかったのかとか、
田宮と僕はそこまで仲良くなかったのだろうか、そこまでの信頼関係は築けていなかったのだろうか、心配をかけたくなく言えなかったのだろうか、
僕は突然の後輩の死を受け止めきれなかった。
あの日僕が話をかけたら何か変わったかも、いつものように喫煙所に誘ってなんでもない雑談や愚痴を話し合っていれば。
これこそが僕の後悔だ。
田宮今までありがとうねごめんね




