70 エピローグ 1
結局、ローダス王国の復興は、各国から人員を派遣することになった。
ヴィーステ王国の代表として、私、エレンナ、バルバラ、ケトラが派遣されることとなった。復興が終われば、ヴィーステ王国に帰還せずにフェードアウトすることで、ゼノビアとは話がついている。すべての任務が終われば、遊びに行くくらいはしようと思っている。
派遣された者それぞれが、出身国の事情を優先して、復興が前に進まないことが懸念されたので、なんと最高責任者は勇者になっていた。本当に頭が痛い。今も目の前で、帝国、スタリオンの関係者と勇者が激しく口論し、シャシールが必死に宥めている。勇者とシャシールもしばらく結婚できないだろう。そんな中、一番に結婚したのはケトラとケトルだった。
ケトラが言う。
「結婚すれば、私もダンジョン協会の会議やイベントに参加できるニャ。そうしないとケトルがまた変なことになってしまうニャ」
いい選択だと思う。またダンジョン協会に変なことを押しつけれられたら、堪ったもんじゃないからね。
そのダンジョン協会は、魔王様でも分からない謎の組織らしい。まあ、あまり深く突っ込まないのが、身のためのようだ。
★★★
復興には3年を要した。
勇者の強い意向により、国名はローダス教国からローダス共和国に変更になり、議会も設置された。また、世界で初となる軍隊を持たない国になった。形だけなら、勇者の理想の国となったというわけだ。
でも実際は、議員のほとんどが帝国やスタリオンの息の掛かった者たちだし、選挙も行われていない。それに軍隊はないけど、多くの傭兵団がやって来て、軍隊の仕事を請け負っているので、実質軍隊を持っているのと大差はないんだけどね。
勇者はというと、それなりに満足している。次は選挙を実施すると言って、息巻いている。ただ、今選挙をしたところで、賄賂なんて渡し放題だし、選挙自体も各国が裏で支援するから、勇者が真に望むような結果にはならないだろう。
それとケトルが押しつけられた大聖堂ダンジョンだけど、こちらは「聖なるダンジョン」と名付けられ、かなり賑わっている。
大聖堂の地下にダンジョンを作り、礼拝に来たついでにダンジョンに挑む冒険者も多い。また、シャシールのプロモーションで、「始まりの遺跡」、「奇跡の遺跡」、「恵みの洞窟」、「聖なるダンジョン」をすべて攻略すれば、ご利益が得られると教会関係者を通じて噂を流し、他のダンジョンも入場者は増えたようだ。
それとケトラだが、魔王軍を退役して予備役となり、今はケトルの仕事を手伝っている。というか、ケトラがメインでケトルがお手伝いなんだけどね。この前お茶をした時もケトラはこう言っていた。
「またケトルが変なことをしそうになったニャ。書記という謎の役職と引換えに、火山の頂上のダンジョンを買わされそうになったニャ。ずっと目が離せないニャ」
そして今、私は極秘会議に招集されている。
メンバーはローダス教会関係者、ヴィーステ王国、スタリオン、ユーラスタ帝国、小国家群連合の代表者たちだ。
議題はもちろん勇者だ。提案してきたのは小国家群連合の代表者だった。
「勇者様を南大陸に派遣しようと思っています」
これにはスタリオンの代表者が賛成する。
「我がスタリオンは構わんぞ。南大陸で何があろうと、流石に我が国まで難民は来ないからな」
帝国の関係者はというと・・・
「我が帝国は、賛成もせんし、反対もせん。勝手にしてくれ。但し、責任は持たんからな」
「卑怯者だな、帝国は!!」
「何を!!」
また恒例の帝国とスタリオンの喧嘩が始まった。堪りかねた小国家群連合の代表者が私に話を振ってくる。
「ティサリア大臣はどのような、お考えでしょうか?」
「私はもうすぐ、帰国致しますので、後任の担当者と相談していただけますか?」
そう、私は魔王国に帰国することになっている。もうこんな厄介ごとに首を突っ込みたくないと思った私は、後任の担当者に丸投げすることにした。それに議論の流れからして、すぐに決まりそうにないしね。
★★★
悲しい事もあった。
昨年、バルバラがこの世を去った。医師の見立てでは、老衰とのことだった。元々いつ死んでもおかしくない状態だったらしい。魔王国だけでなくヴィーステ王国も悲しみに包まれた。バルバラの遺言を思い出す。
「ここ数年は、本当に充実しておった。長い妾の人生でも、ここまで楽しかったことはない。苦労はしたがな。もし生まれ変わりがあるのなら、今度は「氷結の魔女」となって、世界を救う勇者と旅をするのも面白いかもしれんのう」
バルバラの中で、実は勇者の評価は高かったようだ。というか、いつの間に「暴風の魔女」から「氷結の魔女」になったのだろうか?
「最後に妾の頼みを聞いてほしい。妾の遺骨はパルミラに埋葬してくれ。発展していくパルミラを見守ることにする。何たって「氷結の魔女バルバラ」が誕生した場所じゃからな・・・」
ゼノビアに相談すると、パルミラを見渡せる丘の上に立派なお墓とバルバラ像まで建ててくれた。今では観光名所となり、多くの市民や観光客が訪れ、バルバラの功績を称えている。そしてバルバラの命日には、お祭りが開かれることになり、毎年魔王国からは、私と魔王様、エレンナとケトラが出席している。
今年も魔王様と二人でバルバラのお墓の前で祈りを捧げた。
賑わっているパルミラを見ながら、私は魔王様ことオサムに言った。
「バルバラが言ったとおり、バルバラは別の世界に生まれ変わって、元気にやっていると思うのよ。ちょいちょいFFQシリーズには、バルバラっぽい幼女が登場するからね」
「そうだな・・・そう思っておこう・・・」
「もし日本に帰れたら、オサムにも見せてあげるよ。まあ、帰れるとは思えないけどね・・・」
日本に帰りたい気持ちもあれば、もう帰りたくない気持ちもある。
ただ、この世界に転生したことは感謝している。色々なことに気付かされた。私がここに来たことも何か意味があったのだろう。
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次回が最終回になります。




