7 食料危機 2
王都から出て、砂漠にやって来た。
一面砂だらけだ。水の羽衣を装備していなければ、ケトラなんて一瞬で行動不能になるくらいの暑さだ。最初に遭遇したのは、大型のカニ型の魔物サンドクラブの群れだった。エレンナが言う。
「攻撃力は然程高くはないし、素早くもない。ただ、異常に硬い。私でさえも長期戦は覚悟しなければならないくらいだ。砂漠という環境でなければ、どうとでもなるのだがな」
資料によると、キャラバン隊が遭遇すると一目散に逃げるくらいの危険な魔物として認識されているようだ。砂漠で長時間、激しい戦闘なんてできないからね。
遭遇してすぐに、戦闘になった。
少し時間は掛かったが、危なげなく討伐には成功した。
「とりあえず、食べてみようか?不味くて食べられないなら、いくら狩っても仕方がないからね」
カニなので、茹でてみた。意外に美味しい。
「大味じゃと思っていたが、意外に繊細な味がするのう。これは商売できる味じゃ」
試食が終わった後にレドラに指示した。
「狩れるだけ狩ってよ。できる?」
「了解した!!皆の者、包囲陣形を取れ、一匹も逃がすな!!」
統制の取れた動きで、サンドクラブを討伐していく。結局30匹を狩ったところで、帰還することにした。これ以上多くなると持ち運べないからね。帰り道、エレンナが、弓で3匹デザートフォックスを仕留めていた。
「この距離なら外すことはない。初日にあまり狩れなかったのは、暑さの所為だからな」
エレンナの凄さを感じた。
バルバラが言う。
「明日からはレドラたちに任せて、妾たちは、他の仕事もしたほうがいい。問題は山積みじゃからな」
「そうだね。そうするよ」
それから一週間、市民は大盛り上がりだ。久しぶりにお腹いっぱい食べられたからね。最初は人族とは全く違う容姿のレッドリザードたちを敬遠していた市民たちも、連日食料を持ってきてくれるレッドリザードたちと打ち解けていた。目ざとい商人たちは、レドラたちの狩りに同行するようになり、かなり儲けたようだ。搬送は商人たちがしてくれるから、助かっているしね。
バーバラなんかは、調子に乗って巨大なサンドクラブを火魔法で、丸焼きにしていた。このデモンストレーションは、市民に大ウケだった。
「妾は「灼熱の魔女」を名乗ってもいいかもしれんな・・・」
魔王国にいた時は、風魔法以外使わなかったのにね。
★★★
順調に狩りは続いていたが、レドラからある相談を受けた。
「大型の魔物を狩ろうと思うのだが、ある程度ダメージを与えると砂の中に潜って出て来なくなるのだ。流石に砂の中までは潜れんからな」
レドラの報告から推察するに、こちらも危険な魔物として認識されている、大型のヘビ型魔物であるサンドサーペントだった。資料を読む限り、遭遇すると全滅を覚悟するレベルとの記載があった。弱点は大きな音だという。生き残った者の記録によると大きな音を出すと、逃げて行ったそうだ。それはそうと、そんな危険な魔物を逃走させるなんて、レドラたちは本当に強い。
「この魔物は聴覚が異常に優れているのかもしれんな。大きな音を立てれば、スタンするやもしれん。妾が特大爆裂魔法を使えばいいのじゃろうが、毎回、妾が出向くなど、現実的ではないしのう・・・」
ここでロクサーヌが言う。
「だったらいいのがあるッスよ!!その名も音爆弾ッス!!」
ロクサーヌが持ってきたのは、手榴弾のような魔道具だった。説明によると大きな音を出すだけだという。
「趣味で開発したんスけど、使い道がなくて、在庫がいっぱいあるッス」
「だったら、使ってみようか?駄目なら、また考えればいいしね」
早速、サンドサーペントを討伐に向かう。
しばらくしてサンドサーペントが現れた。実際に見るとかなりデカい。体長は5メートル以上ありそうだ。早速レドラたちが攻撃を加える。すぐにサンドサーペントは血塗れになった。するとサンドサーペントは砂の中に潜ってしまった。
「ロクサーヌ!!お願い!!」
「了解ッス!!喰らえ!!音爆弾!!」
ドカーンという大音量が響き渡る。するとサンドサーペントは砂から飛び出て来て、地上でもがいている。すぐにレドラが指示をする。
「総攻撃だ!!今の内にとどめを刺すぞ!!」
「「「オオオオー!!」」」
あっという間にサンドサーペントは討伐された。
「じゃあ、食べてみようか?とりあえず、焼いてみる?」
「任せるがよい。「灼熱の魔女」たる妾にな!!」
バルバラ・・・「暴風の魔女」は辞めたの?
乗りに乗っているバルバラを見たら、ツッコミは入れられなかったけどね。
食べてみるとこれも美味しかった。
「部位によって味が全然違うのう。淡白な味の部位もあれば、油の乗った部位もある。これは料理人心をくすぐるのではないか?」
「そうね。焼くだけでも美味しいけど、特産品のスパイスと合わせてもいいしね。これは間違いなく売れるわ!!」
帰りにもう一匹見付けたので、これも討伐する。王都に持って帰ると大声援で市民に迎えられた。
「す、凄い!!サンドサーペントまで狩るなんて・・・」
「ああ、奇跡だ」
「サンドサーペントには、親父も殺されたからな・・・いっぱい食って、仇を取ってやる!!」
大人気のバルバラが叫ぶ。
「皆の者、よく聞くがよい!!我こそはと思う料理人は、名乗り出よ!!妾を唸らせる料理を作った者は、特製のかき氷を10杯無料で進呈してやろう。肉はいっぱいあるからな!!」
市民から歓声が上がる。
実は、バルバラはちゃっかり、かき氷を作ってお小遣いを稼いでいるのだ。かき氷のアイデアを出したのは私なんだけどね。
砂糖はいっぱいあるし、フルーツも香り付け程度だから売り物にならない物を使えば、ノーコストだし。
これで少しはゼノビアである私の評価も上がると思っていたが、そうはならなかった。
「まったく、聖女様がこんなに頑張っているのに、あの馬鹿は何をしてるんだ」
「お城でゴロゴロしてるんでしょうね・・・」
「多分、神様が私たちの窮状を知って、聖女様たちを遣わせてくれたのよ」
いきなりは、上がらないよね・・・
でも聖女ってなんだ?
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!