69 決戦 2
マスタールームのリッチが言う。
「よく来たな、魔王エクセリオン。お前にされた仕打ちは忘れんぞ!!」
意味の分からない私はバルバラに聞く。
「あ奴はティサの前任者の四天王、リッチのネクロードじゃ。見た目のとおり、陰険で根暗な奴じゃ。魔王軍の四天王をクビになったのも、公金を横領したり、勝手に宝物庫のアーティファクトを持ち出したりしたからじゃな。先代の魔王様までは黙認していたようじゃが、今の魔王様になり、クビにされたのじゃ」
ネクロードが叫ぶ。
「聞こえているぞ、バルバラ!!我は先々代の魔王時代から四天王として仕えているのだ。先輩に対する態度が全くなってない奴め」
「不正を働いた奴が偉そうに!!四天王でも何でもないポンコツスケルトンに言われたくはないわ」
ケトルも加勢する。
「コイツは「始まりの遺跡」と「奇跡の遺跡」の前のマスターだニャ。お前の所為で、どれだけ僕が苦労したか分かっているのかニャ!?」
それは自業自得だろ!!
というツッコミは入れなかった、雰囲気的に。
そこに空気の読めない勇者が言う。
「どうやら知り合いのようだね?まずは対話をしよう」
カオス状態だ。
冷静な魔王様が、ネクロードに言う。
「一体何が目的だ?話だけは聞いてやろう」
「まあいい、冥途の土産に教えてやる。我のダンジョンを奪い返す為だ。教会の馬鹿どもを扇動したまではよかったが、あの無能共ときたら、全く情けない。だから我が直々にダンジョンを奪い返すことにしたのだ。それもこれも、すべてがお前の所為だ、魔王。魔王軍をクビになったから、ダンジョン協会も返済を待ってくれないし、経営していたダンジョンを差し押さえられるし、散々だ。どうして、長年魔王軍に貢献してきた我をクビにした!?」
何とも自分勝手な理由だった。
「ネクロードよ。それはお前が不正を働いたからだ。何度も警告しただろうが!!」
「我の功績を考えれば、それくらい目を瞑れ!!」
バルバラが言う。
「先代の魔王様も言っておったぞ。仕事をせん役立たずだと。先代の魔王様も温情で四天王においてやっただけじゃからな」
「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!皆殺しにしてやる。ここに来たのが運の尽きだ。ダンジョン内でダンジョンマスターに勝てると思うなよ。ダンジョン内であれば、ダンジョンコアの魔力を無限に使えるからな。
出でよ!!我が最高傑作、スカルドラゴン!!」
骨だけのドラゴンが出現した。見た感じマドラーム並みに大きく、かなり強そうだ。しかし予想外のことが起きた。
「ダンジョンコア、緊急停止だニャ!!」
ケトルが怪しげな魔道具を操作したら、スカルドラゴンが崩れ去ってしまった。
「ダンジョンコアを緊急停止したから、スカルドラゴンに供給される魔力がカットされたニャ」
得意気にケトルが言う。
するとエレンナと魔王様がネクロードに飛び掛かる。あっという間にネクロードは拘束されてしまった。
バルバラが言う。
「全く骨のない奴じゃ」
バルバラ、それはツッコミを入れたほうがいいの?
本当に呆気なく終わってしまった。しばらくして、全身黒ずくめの集団が現れた。一瞬緊張が走る。黒ずくめの代表者が言う。
「心配しないでください。我々は怪しい者ではありません」
どう見ても怪しすぎる。
「魔王様、ご協力感謝します。我々はダンジョン協会特別捜査隊の者です。ネクロードについてはこちらが連行してもよろしいでしょうか?」
皆が悩んでいるところでバルバラが言う。
「それがいいじゃろう。スカルドラゴンのことをマドラームが知ったら、八つ裂きどころでは済まんぞ。どうせ、墓でも荒らしたのじゃろう」
バルバラの一言が決め手となり、ネクロードの身柄はダンジョン協会に引き渡されることになった。詳しい事情聴取などは、ダンジョン協会が行うという。
ある程度話がまとまったところで、ダンジョン協会の代表者がケトルに言った。
「ケトル殿、貴殿は今回の活躍で幹部候補生に昇格しました。つきましては、こちらのダンジョンを再建させてください。再建が完了しますと幹部に昇格します。やってくれますね?」
「もちろんだニャ!!」
「でしたらこちらの契約書にサインをお願いします」
「はいニャ!!」
あっと言う間の出来事だった。せめて、もっと契約書を確認しろよ!!
あんな感じで、ケトルは厄介事を押し付けられてたのか・・・
ネクロードを連行して、颯爽と去って行くダンジョン協会の関係者たち・・・当然ケトラのネコパンチがケトルに炸裂したことは、言うまでもない。
★★★
少し落ち着いたところで、今後の方針を勇者たちと話し合うことになった。
まず、ダンジョン関係については、すべて秘匿にすることを勇者たちに了承してもらい、魔法契約もしてもらった。破ると厳しい罰則がある。
また、ダンジョン外に出たアンデットは、ダンジョンコアを停止させても消滅しないことが判明し、ローダス教国を復興するには、まずは大量のアンデットを討伐しなければならいようだった。
シャシールが言う。
「復興については、かなり揉めるでしょうね。利権が絡むことですし、スタリオンと帝国が張り合うでしょう。小国家群や騎馬王国も抜け目ありませんし・・・」
魔王様が言う。
「とりあえず、我々がここに残る。勇者殿は一旦帰還して、各国の代表者に説明してくるといい。ダンジョンを再建させるには、まず国を復興させなければならんからな」
その通りだ。
問題は山積み、まだまだ私たちは結婚できそうにない。
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