68 決戦
マドラームとリバイドに乗った私たちは、多くの市民に見送られながら、ダイバーシティーを後にした。
2時間程で、大聖堂まで到着した。
道中、勇者は仕切りにリバイドに話し掛けていた。
「いくら見習いだからといって、不当な扱いを我慢してはいけないよ。言うべきことは言わないとね。何なら、ボクが代わりに言ってあげてもいい」
「そ、そうですね・・・そうしようかな。マドラーム叔父さん、少し修行のほうを・・・」
言い掛けたところで、マドラームにリバイドは殴られた。
「何を言っておる!!お前は重大な掟破りしたのを忘れたのか!?」
勇者が言う。
「暴力反対!!その掟自体が正当なものか、ボクがチェックしてあげよう」
「調子に乗るな小娘!!ここから突き落とすぞ」
「暴力や脅しを使うなんて、それでは若い者はついてこないぞ」
「うるさい!!黙れ!!竜人族の伝統に口を挟むな!!」
「伝統とは変わっていくものだ。そんなことも分からないのか?」
魔王様が止めに入る。
「その辺にしておけ、マドラーム。勇者殿に議論では勝てん」
「し、失礼しました。おい、小娘、命拾いしたな」
流石のマドラームも勇者には勝てなかったようだ。
「全く締まらん奴らじゃ。マドラームまで引きずられよってからに・・・」
バルバラが苦言を呈する。
しばらくして、私たちは大聖堂前に着陸した。無数のアンデットが徘徊している。
こちらに攻撃を仕掛けて来るアンデットもいたが、あっという間に撃退した。
みんな強いからね。私と勇者以外は・・・
ここからは、マドラームたちと別れて私たちだけで、進まないといけない。
飛び立つマドラームに魔王様は言う。
「マドラームよ。もし我が帰還しない場合は、お前が魔王代理となって魔王国を治めよ。無理を頼んで、すまないがな」
「無事のご帰還を祈っております。ご武運を」
魔王様がマドラームを帰還させるのは、魔王国を思ってのことだ。マドラームも、その辺は理解している。マドラームも作戦に参加したかったに違いない。
勇者が言う。
「では行こう!!僕たちの手で平和を掴み取るんだ!!」
そこは魔王様のセリフだろうが!!
まあ、勇者らしいけどね。
★★★
大聖堂に入る。無数のアンデットが攻撃して来た。
これは難なく撃退できた。ケトルが言う。
「ここは間違いなくダンジョンだニャ。それにしても、ここのマスターは何を考えているんだニャ?こんなことをしたら誰も来ないニャ。マスター失格だニャ」
「ケトルも同じようなことをしていたニャ」
「け、ケトラ・・・」
ケトラがツッコミを入れる。
本当にそう思う。ケトルには苦労させられたからね。
それはさておき、ケトルは意外に活躍を見せる。魔物発生装置を立ちどころに見付け、どんどんと回収していく。
「これは証拠になるニャ。それにしても、スポーンを剥き出しにして設置するなんて、信じられないニャ」
ケトルが言うには、普通は隠して設置したり、ある程度魔物を出現させた段階で、一旦回収するという。
魔王様も褒める。
「優秀な捜査官を派遣してくれたダンジョン協会に感謝しないといけないな」
ケトルは調子に乗ってしまう。
それはそうと、私は疑問に思ったことを口にする。
「ところで、目の前でスポーンが消えているのはなぜ?」
「これはボクの「空間収納」のスキルだニャ。馬車5台分くらいなら、生き物以外、何でも異空間に収納できるニャ」
おい!!それを早く言えよ!!
それだったら、ダンジョンマスターではなく、行商人になったほうがよかったんじゃないのか?
ケトラも同じ気持ちだったようで、「やっぱりケトルは馬鹿だったニャ」とつぶやいていた。
ケトルのお蔭もあり、攻略は順調だった。迷うことなく、進めるからだ。
「こっちにダンジョンコアの反応があるニャ。多分、最深部にマスタールームとダンジョンコアがあるニャ」
ダンジョンは、ダンジョンコアというアーティファクトの魔力によって形成されているそうだ。ダンジョンコアを破壊すれば、それでダンジョンとしての機能はなくなるらしい。
「反応からして、ここのダンジョンコアは盗難品だニャ。無許可ダンジョンの構築、スタンピードを故意に発生させたこと、ダンジョンコアの窃盗、ここまで証拠が上がれば、ダンジョンごと壊してもいいニャ」
このダンジョンを構築した馬鹿なダンジョンマスターは、一体どんな奴なのだろうか?
更に私たちは大聖堂を奥に進む。
大きな礼拝所にたどり着いた時、ケトルが何もない壁に向かって、怪しげな魔道具を起動し始めた。しばらくして、壁から扉が出現した。
「この扉の先にマスタールームがあるニャ。激しい戦闘になる可能性が高いから、みんな気を付けるニャ」
勇者が言う。
「だったら、まずは対話を試みよう」
皆が勇者を無視する。
魔王様が指示を出す。
「再度各自で確認してくれ。バルバラ、支援魔法を。勇者パーティーは2列目で、後方支援を頼む」
そこから、魔王様が細かい指示を出し、戦闘力が低い私と勇者は後方で安全確保に努めることになった。
意を決して、扉を開けて中に入る。
そこに居たのは、黒いをローブを纏ったスケルトンだった。オーラからして、普通のスケルトンではない。多分リッチと呼ばれる上級のアンデットだ。私が緊張を走らせていると魔王様とケトルが言った。
「お、お前は・・・」
「あっ!!コイツは指名手配されている奴ニャ!!」
どうやら、二人が知っている人物のようだ。
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