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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
最終章

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65 決死隊

 緊急会議に突如現れた魔王様が話し始める。


「まず我々が掴んだ情報によると、発生源はローダス教国の聖都にある大聖堂だ。既に大聖堂はダンジョン化している。各国が出した意見には概ね賛成する。ダンジョンであれば大部隊を派遣することはできないし、少数精鋭で臨むのが基本だ。また、戦死した兵士をそのままにしておくと、アンデット化される。無駄に敵戦力を増やすことになってはいかん」


 これに素早く反応したのは小国家群連合の代表者だ。


「なるほど、では決死隊の部隊編成をお願いしても?」


 もう「決死隊」と言ってしまっている。


「むろん、概ねの作戦は立案している。魔王国は数こそ少ないが、精鋭揃いだ。それにダンジョンの専門家も用意している」


 各国の関係者が安堵する。

 スタリオンの代表者が言う。


「見返りは?何か裏がありそうだが?」


 魔族に対して、未だに悪感情を持っているスタリオンならではの意見だ。


「ない・・・強いて言えば、この作戦が上手くいった暁には、各国とも我が国と不可侵条約を締結してもらいたい」


 これは破格の条件だ。

 各国とも魔王国と国境を接していないし、わざわざ攻め込む理由なんて、今のところないからね。


 魔王様の案は全会一致で採択された。



 ★★★


 各国の代表者が対応策を議論している中、私たちは決死隊の編成を行った。

 勇者が言う。


「ありがとう魔王さん。戦う力のないボクを助けてくれて」

「勇者殿、貴殿は勇者だ。強い弱いは関係ない。どんな困難にも立ち向かう。それが勇者だと我は思う」

「そ、そうだね・・・ここで逃げたら勇者じゃないね。怖いけど頑張るよ」


 魔王様の作戦では、勇者パーティーと魔王パーティーを編成し、マドラームとトリスタで大暴れしていた水竜リバイドに分乗して一気に大聖堂を目指すというものだった。そしてその魔王パーティーだが・・・


「これは命懸けの戦いになる。断ってもらっても構わない。まずはバルバラ、そしてエレンナ。頼めるか?」

「もちろんじゃ。「暴風の魔女」たるわらわが行かんでどうする?」

「兄上は死んでも守る」


 私とケトラは選考から外れていた。

 魔王様が気を遣ってくれたのだろう。でも私は志願した。だって、ゲームの知識があるのは私だけだし、魔王様のいない世界なんて、考えられない。死ぬにしても一緒に死にたい。かなり反対されたが、渋々納得してくれた。


「ティサは言い出したら聞かないからな・・・だが、危なくなったらすぐに逃げろ」

「分かりました。多分、逃げることはないと思います」


 更に予想外の人物が選定されていた。


「ダンジョンの専門家だが、無理を言ってダンジョン協会にお願いをした。ケトル殿!!」


 呼ばれて出て来たのは、何とケトルだった。

 自慢げにケトルは言う。


「僕は最優秀新人ダンジョンマスターとなり、最年少でダンジョン捜査官になった逸材だニャ。僕に任せておけば大丈夫だニャ!!」


 多分ケトルも煽てられて、厄介事を押し付けられたようだ。最優秀新人ダンジョンマスターにされたのも、そのためだろう。ケトルによると大聖堂は、無許可ダンジョンに当たるらしく、ダンジョン協会としても看過できないようだ。危険な任務だと分かっていてこの仕打ち、ダンジョン協会も碌な組織ではないと、改めて思ってしまう。


 これにはケトラが難色を示す。


「魔王様、ケトルは無理だニャ。こんな馬鹿を連れて行っても足を引っ張るだけだニャ!!」

「ひ、酷いニャ・・・」

「ケトルは騙されているニャ。ダンジョン協会にいいように使われているだけニャ」

「で、でも・・・この任務を断ったら、除名されてしまうニャ。僕のダンジョンは多くのスタッフを抱えているから、今更断れないニャ」


 しばらく考え込んだケトラが言う。


「だったら私も行くニャ。ケトルが変なことをしそうになったら、私が止めるニャ。魔王様、私も連れて行ってほしいニャ」

「分かった。覚悟があるなら、許可しよう」


 こうして、決死隊は編成されたのだった。


 結局、いつものメンバーになったと思ってしまった。



 ★★★


 それから3日、私は引継ぎに追われていた。

 もう生きて帰れないかもしれないからだ。魔王国に帰国し、別れを済ませる。あまり接点のなかった母親や同族のサキュバスからは、「一族の誇りだ」と涙ながらに言われた。もしかしたら、初めて期待されているのかもしれない。

 そして、ゼノビアとオルグストンにも・・・


「ティサリア・・・本当にありがとう。最後の最後まで、貴方におんぶにだっこで・・・」

「気にしないで、それよりも私たちが倒れた後のことも考えてね」

「私にできるかしら・・・」

「大丈夫よ。もう貴方は立派な女王よ。それも歴史に名を残すような立派な女王よ」

「絶対・・・絶対に生きて帰ってきてよね!!」


 私を抱きしめるゼノビア。彼女とは最初こそ、最悪な関係だったが、今では親友と呼べる存在になっていた。

 そんな時、空気の読めないオルグストンが私を持ち上げる。


「ゼノビアのことは、俺に任せておけ。帰って来たらまた、「たかいたかい」してやろう」

「オルグストン、子供扱いは止めて!!もう私は立派なレディなんだからね!!」


 少し、緊張がほぐれた気がした。


 そして、私たちは最後の夜を迎えた。

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