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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
最終章

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61 聖戦 4

 とうとう本格的な戦闘が始まろうとしている。

 私たちは、ヴィーステ王国最南端の自由都市ダイバーシティーに集結していた。情報によるとローダス教国は、騎馬王国の許可を取り、大草原を進軍し、設置されている聖女の壁を強行突破して、「奇跡の遺跡」を占拠するつもりのようだ。ローダス教国は正規軍と予備兵、異端者を討伐するという名目で集めた義勇兵、合計10万で進軍している。


 こちらだって、搔き集められるだけ搔き集めた。それでも3万人に満たない。

 しかし、質という面においては、大きくローダス教国を上回っている。手練れたちが続々と集結しているからだ。まずはヴィーステ王国の他部族が砂の盟約に従って多くやって来た。私たちがスタリオンとの戦争から救ったターバはもちろん、ハジャスもファラーハも自ら部隊を率いてやって来た。

 ハジャスが言う。


「後のことはジャスミンに任せて来た。私が死んでも、何とかやって行けるだろう。まあ、ただでは死なんがな」


 これにファラーハも続く。


「久しぶりに腕が鳴るわ。思いっきり魔法をぶっ放してあげるからね」


 ハジャスの率いている部隊は、ハジャスと同じようなトゲトゲの装備をしているし、ファラーハの部隊は魔導士を中心に構成している。各部族から集まった者のほとんどが年配の者だった。クレオラが言う。


「砂の盟約が発動されたときは、伝統的に次の世代に託してから戦闘に参加するのよ。私がゼノビアを前線から遠ざけ、外交に専念させたのも、それが理由なのよね」


 ファラーハもハジャスも飄々としているが、死を覚悟してここにやって来たのだと感じた。


 他にも獣人やエルフの義勇兵、それと勇者のシンパの中でも過激派と呼ばれている連中が多く集まった。そして、一番の戦力は・・・


「ま、魔王様・・・」

「俺は特別部隊として、別運用だ。ティサもご苦労だった」

「わ、私は魔王様の部隊に志願いたします!!」

「それは有難い。ティサにも頼もうと思っていたんだ」


 魔王様の構想では、一般部隊とは別に私、バルバラ、エレンナ、ケトラを特別部隊に編成する計画のようだった。私は期待されていることに大喜びだった。


 ある程度揃ったところで、軍議が始まる。

 軍議は形だけのもので、有力者への根回しは済んでいる。基本的には決定事項を伝達するだけだが、応援部隊の顔を立てるために軍議という形を取ったまでだ。代表してクレオラが作戦を説明すると、作戦の詳細を知らない部隊長たちは驚いていた。

 ある部隊長が言う。


「本当に引きこもって、耐え忍ぶだけで勝てるのか?」


 これにはハジャスが答える。もちろんハジャスも作戦は理解している。


「そのとおりだ。我らゴルド部族の防衛戦術が敗れたことは未だかつてない。それを見せつけてやろう。それにタートル族部隊もいるしな」


 タートル族の部隊長カメックも続く。


「守備は任せるんだな。絶対通さないんだな」


 バルバラが言う。


「ただ引きこもるだけではないぞ。こちらには優秀な魔導士や弓兵が多くいる。それを上手く活用し、被害を最小限に戦えば、自ずと勝てる」


 ファラーハも続く。


「大丈夫よ。戦いは何も戦場だけではないからね」


 ざっくり言うと、聖女の壁を利用した防衛戦術を基本に相手の戦意を徹底的に削ぐことだ。

 そのメインとなるのが、魔王様の直轄部隊、つまり私が所属する部隊だ。ただ、表向きはヴィーステ王国の部隊がローダス教国の部隊を討ち破ったことにしたいので、あくまでも私たちは影の部隊だ。


 それとファラーハが言った「戦いは何も戦場だけではない」という言葉もあながち嘘ではない。

 勇者は今、ユーラスタ帝国で皇帝陛下と謁見をしている。シャシールの伝手だそうだ。この一戦の後にすぐに講和の仲立ちをお願いしに行っているのだ。勇者を戦場から引き離し、講和の仲立ちをお願いするなんて、本当に一石二鳥だ。シャシールの優秀さが分かる。

 ただ、この一戦に負けてしまえば元も子もない。何としても勝たないとね。



 ★★★


 そしていよいよ、戦闘が始まった。

 相手の作戦は、10万という数に任せた波状攻撃だ。一方こちらの作戦は、聖女の壁に引きこもり、絶え間なく魔法や弓、それにロクサーヌが開発したバリスタや投石機で相手を近付けさせないことだ。こちらは、ほぼ全力でそのような攻撃を行っている。


 ローダス教国陣営は、全く聖女の壁に近付けなかったが、悲観していない。

 私たちの攻撃が何日も続かないと予想しているからだ。ローダス教国としては、私たちの魔力や物資が尽きたところで、総攻撃を掛けるのだろう。

 でもそうはいかないんだよね。


 夜間になり、私たちは魔王様とともにマドラームに乗って、作戦行動に移る。

 魔王様が言う。


「昼間の戦闘で、相手の指揮官クラスは把握している。そいつらを徹底的に潰す。ついでに食料なんかも焼き討ちにする」


 私たちの作戦の肝は、昼間は防衛戦に徹し、夜間に陣地を強襲して被害を与えるというものだ。食料を焼き、指揮官クラスを屠っていく。つまり、戦えなくするのだ。


 作戦は上手くいった。

 自分で言うのもアレだが、私は大活躍だった。幻影魔法でローダス教徒が信仰する創造神を作り出し、「これは間違った戦いだ!!すぐに立ち去らねば天罰が下る」と言わせた。当然パニックになる。それに乗じて、魔王様とエレンナが弓で指揮官クラスを狙い撃ちにし、バルバラの魔法とケトラの工作で、食料の保管場所を焼き討ちにした。

 場を収めるべき指揮官がいなくなったので、部隊は大混乱だった。


 連日襲撃は続け、敵は目に見えて疲弊していった。昼間の戦闘も全く覇気が感じられなかったからね。


 そんなとき、ケトラから報告があった。


「多くの部隊が既に離脱しているニャ。それで自棄になった相手は、イチかバチかの総攻撃を考えているニャ」


 バルバラが言う。


「愚かなことじゃ。大人しく帰ればいいものを・・・」


 魔王様が続く。


「我も同感だ。しかし、どうしてもそうできない理由があるのだろう。エレンナ、準備はできているか?」

「もちろんです。これが成功すれば、一気に片が付くでしょう」


 できることなら、なるべく犠牲がなく戦争が終結してほしい。でも、仕方がない。ローダス教国に多くの犠牲がでるかもしれないが、私たちが生き残るには、そうするしかない。それに攻め込んで来たのは、ローダス教国だしね。

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