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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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55 勇者と魔王

 和平交渉もまとまり、当面の大きな戦争は回避された。

 勇者はというと、緑化に成功したオアシスと協商連合のカスティーヤ地域を言ったり来たりしている。緑化に成功したオアシスは「砂漠の森(デザートフォレスト)」と名付けられ、大発展している。パルミラとターバの中間地点に位置し、多くの商人や観光客で賑わっている。特産品は、高級フルーツで、バルバラが指導した魔導士たちが氷結魔法でシャーベットなんかを作って、それも名物になっている。


 一方、カスティーヤ地域は議会制を取っているのだが、当初は帝国とスタリオンとで揉め、なかなか政策が決定しないものと思われたが、意外に順調に進んでいるそうだ。

 タチアナが言う。


「勇者様の無茶な政策に反対することで、意外にまとまっているんですよ。勇者様の政策は理想的なのですが、すぐに実践するとなると、破綻しかねませんからね」


 こちらも勇者の思ったとおりではないが、何とか議会政治は成立しているようだ。


 そんな報告書を読んでいる時、魔王様から呼び出しを受けた。すぐに魔王城に向かう。



 魔王城に着くと、すぐに謁見の間に案内された。

 そこにゼノビアがいた。魔王様が事情を説明していくれる。


「そろそろ、こちらのゼノビア殿にヴィーステ王国を返還しようと思っているのだ。そして、返還に際し、条約を結ぼうと思っている。そして・・・」


 魔王様によると、ヴィーステ王国は安定し、もうゼノビアに返還しても問題はないということだった。そして、多くの魔族を保護してくれたお礼として、魔王様がヴィーステ王国に表敬訪問し、その時に友好条約を締結するという流れだ。


「条約の立会人は勇者を考えている。ティサには、その段取りをしてもらいたい。それといきなりゼノビア殿が女王に戻っても、戸惑うだろうから、ティサがサポートをするように」


 これが上手くいけば、もうヴィーステ王国にいる必要がなくなる。それにヴィーステ王国と魔王国、そして勇者も抱き込んで条約を締結してしまえば、人族が魔王国に攻めて来ることもないだろうしね。


「お任せください、魔王様。このティサリアが、必ずや成功に導いて見せます」



 ★★★


 式典や条約の内容については、すでに魔王様とゼノビアとで、話がついているため、特に私がする必要はなかった。私がやることといったら、ゼノビアへの引継ぎと、勇者対策だ。勇者は予測不能な行動をするから、いくら綿密に計画を立ててもあまり意味がない。なので、どんな突飛な意見にも対応できる体制だけ作り、後はゼノビアへの引継ぎに当てた。


 ゼノビアは事前に報告書を読み込んでいたので、引継ぎはスムーズだった。

 しかし、ゼノビアは元気がなかった。


「自信がないのよ・・・この国に私は必要ないんじゃないかってね・・・私がいなくなってから、国は持ち直したわけだしさ」


 私はゼノビアを元気づける。


「大丈夫、貴方は優秀よ。第一軍団でも評判がいいしね」

「でも・・・国際的な舞台なんて久しぶりだし・・・」

「それは大丈夫、専門家を用意しているからね。ナハラ!!入って来て」


 私は、ダークエルフの女性を呼び出し、ゼノビアに紹介した。


「こちらのナハラは、魔王国の式典や儀礼関係に詳しいのよ。彼女のアドバイスに従っていれば、大丈夫よ。しばらくは、貴方の侍女をしてもらうから、遠慮なく彼女に言ってね」


「ナハラと申します。女王陛下、よろしくお願いしたします」

「え、ええ・・・こちらこそ・・・」



 今後の国の運営や式典関係はさておいて、まずはゼノビアを元気にさせようと思い、地方の視察を行うことにした。国民から慕われている状況を肌で感じてもらえば、元気になってくれると思ったからだ。候補地は、お膝元のパルミラ、大発展中の港町トリスタ、勇者が開拓したデザートフォレストだ。

 ゼノビアが難色を示す。


「視察をしなくちゃならないのは、分かっているわ。でもトリスタだけは、やめてよ。まだ、気持ちの整理がつかないし、お母様に合わせる顔がないしね・・・」

「クレオラ様も気にしないと思うけど、どうしてもいやなら外しておくわ」

「ごめんね、わがまま言って・・・せっかく準備してくれたのにね」


 結局、トリスタを除いたパルミラとデザートフォレストを視察することになった。



 ★★★


 視察自体は、上手くいったと思う。

 ただ、警備が厳重すぎた。第一軍団長のオーガ、オルグストンが過剰とも思える警備を敷いていた。


「オルグストン!!第一軍団の精鋭をほとんど連れて来ていいの?他の仕事もあるでしょ?」

「ティサ、魔王様とゼノビアとの条約の締結以外に重要な仕事なんてあるものか!!この日の為に第一軍団は存在していると言っても過言ではないぞ」


 絶対にコイツは公私混同している。


 それは置いておいて、ゼノビアはどこに行っても温かく迎えられた。

 ゼノビアも幼い頃から英才教育を受けていただけあって、自然と相応しい応対ができていた。そして、デザートフォレストでは、熱烈な歓迎を受けた。特に魔族や獣人たちから。


「女王陛下!!本当にありがとうございます」

「本当ですよ。女王陛下が、助けてくれなければ、私たちはどうなっていたか、分かりません」

「ここで採れた高級フルーツです。是非食べてください」


「ありがとうございます。貴方たちは、ヴィーステ王国の大切な国民です。絶対に見捨てることはしませんよ」


 私はゼノビアに声を掛ける。


「どう?これなら、大丈夫でしょ?」

「そうね・・・本当に凄いわ。すべて貴方の功績だけどね」

「そんなことはないわ。ここにいる皆のお蔭よ」


 そんな話をしていたところにナハラがやって来た。


「魔王様が到着されました。お出迎えの準備をお願いします」


「分かりました。すぐに向かいます」


 熱烈な歓迎を受けたゼノビアだが、浮かない顔をしていた。

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