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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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53 砂漠緑化計画

 大変なことになってしまった。

 砂漠の緑化計画を勇者と共同で行うことになった。


 前世の知識では、理論上は砂漠を緑化することは可能と聞いたことがある。

 大量の水と肥料、乾燥に強い植物を育てれば緑化は可能とのことだった。しかし、砂漠の緑化はあまり行われていない。なぜならコストが膨大に掛かるからだ。そこまでして緑化する意味があるのかというのがその理由だ。


 こちらの世界でも同じだ。

 魔法がある分、多少はコストの削減にはなるだろうが、大量に資金を投じたところで、採算が取れるとは思えない。となると、私ができることは限られている。これを利用して、勇者をターバから遠ざけ、その間に難民たちを振り分けることだ。協商連合やスタリオンに働きかけて、難民が出ない対策を取ってもらってもいいだろうし、帝国に協力を依頼してもいい。


 会議でエレンナたちに意見を言う。


「調査したところ、この近くに雨季の時だけ、水が湧き出るオアシスがあるらしいのよ。そこに勇者を送り込んで、緑化事業をさせるのよ。その間に私たちは、難民問題を解決しましょうよ」


 エレンナが言う。


「勇者を一か所に留め置く作戦だな。それならば、各国から援助をもらえるかもしれんな」


 各国ともに勇者には迷惑している。なので、しばらく勇者を留め置くことができれば、多少の支援はしてくれるだろう。緑化事業が上手くいこうといくまいと、大して関係がないというわけだ。問題は如何にコストを抑えるかということだけどね。


「流石のバルバラでも、砂漠を緑化するなんて無理よね?」

「大きさにもよるが、この町くらいの大きさであれば可能じゃ。問題は、緑化した後の維持じゃな。植物を管理する専門家がいれば、できんことはないぞ」


 できるんかい!?


「ずっとバルバラが事業に携わるのもどうかと思うのよね?勇者たちにやらせられないの?」

「勇者パーティーの魔導士シンディーくらいの実力なら、10人以上は必要じゃな。交替でやることになるから、せめて20人はほしい。流石に20人もBランク魔導士を揃えられまいなあ」


 勇者パーティーの魔導士シンディは、冒険者ランクで言うとBランク相当だ。

 これくらいの腕前であれば、大国に行っても宮廷魔導士団に入れるレベルだ。それを20人も集めるとなるとかなりの出費だ。宮廷魔導士自体が高給取りだから、それが20人となると・・・考えるのはよそう。


 ケトラが意見を言う。


「また、魔王様に頼むのはどうかニャ?聞いた話だと、魔王国から出て、こちらの大陸に来たい者も多いらしいニャ。言うだけ言ってみればいいと思うニャ」


「そうね。報告を兼ねて、そうしようかしら」



 ★★★


 魔王様はすぐに対策を取ってくれた。

 聞くところによると、勇者の活動は事前に掴んでいて、放置していたようだ。理由は魔族の解放だ。スタリオンにも多くの虐げられている魔族がいたからね。


 そして、派遣される者たちが決まった。

 まず魔導士なのだが、魔王学院の学生が研修で来ることになった。これは魔王様の発案で、若いうちに外の世界を経験させようと考えたからだ。

 また、植魔族の派遣も決まった。植魔族というのは、ドライアドやトレント、マンドレイクなどの種族で、植物っぽい魔族だ。中にはサボテンっぽい魔族もいる。彼らに話を聞くと、「砂漠を緑化する」というプロジェクトに心を惹かれたそうだ。


 植魔族の代表のトレントが言う。


「砂漠を緑化するプロジェクトに参加できるなんて、感激です。植魔族は保守的な者が多く、今ある環境を維持するだけでしたからね。ここに来た者は、新しい挑戦がしたい者ばかりなのです」


 まあ、そんな感じで、人員は揃った。

 人族のほうも、勇者の声掛けで、多くの魔導士や農業関係者が集まった。

 バルバラが言う。


「魔導士たちの実力は、大したことはないが、人が多いから人海戦術が使えるな。しばらくは、鍛えてやらなければならんだろうがな」



 すぐにプロジェクトは動き出した。

 魔導士たちは主に土魔法で土地を耕し、水魔法で水を撒く。農業関係者は、植魔族と連携を取りながら、栽培する植物や作物を選定していく。開発には、かなりのコストが掛かっているので、普通の小麦などではなく、高級フルーツを中心に栽培することにした。これならば、高級フルーツを売った資金で小麦などを買える。また、パルミラ周辺ので小麦を栽培しているし、帝国産小麦もあるから上手くいけば、帝国商人が小麦を売り込みに来たついでに買って帰ってくれるだろう。


 そんなことを思いながら、視察を続ける。

 ところで、勇者はというとバルバラにしごかれていた。


「おい、勇者!!お主が頑張らんでどうする?それでは、下の者はついて来んぞ」

「そ、そう言われても・・・もう魔力切れで・・・」


 流石の勇者もヘロヘロだ。


 これには訳がある。

 というのも、勇者を疲れさせて、余計なことをさせないようにするためだ。日の出とともに起き出し、開墾作業をさせ、水魔法で水を撒く。それから日が陰るまでは休憩だが、日が陰ってからは、又同じ行程を繰り返す。開墾作業は特に過酷で、魔力が切れるまでは土魔法で、魔力が切れたら体力が尽きるまで開墾作業をさせる。

 犯罪奴隷もビックリなくらいの過酷なスケジュールだ。


 でも、私はこれでいいと思っている。

 だって、勇者の所為でこんなことになっているし、少しは反省してもらいたいしね。


 ★★★


 それからしばらくして、協商連合代表のタチアナが、開拓地にやって来た。


「女王陛下、お久しぶりでございます。この度は多大なご迷惑をお掛けしまして、申し訳ありません。また、今回も無理を聞いていただきまして、本当にありがとうございます」


 タチアナが訪ねて来たのは、私にスタリオンとの和平交渉を頼むためだ。ヴィーステ王国として、この二国が争い続けて、難民が増えることは看過できない。早急に交渉をまとめたいという思惑もある。


「ところで、帝国のほうはどうなのですか?」

「一応、協力は得られることにはなっています。ファラーハ殿には、法外な仲介料を取られましたけど・・・」


 おい!!ファラーハ!!こんな時まで、儲けようとするなよ・・・


 まあ、それは置いておいて、何とか交渉をまとめないとね。勇者がヘロヘロになっている内に・・・



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