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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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51 タチアナの誤算

 タチアナは話始めた。


「ティサリア大臣にヒントを貰い、勇者様を利用することにしました。もちろん、内戦を引き起こす気なんて、全くありませんでした。当初は、勇者様によって国内でもめ事を起こさせて、それを私が上手く収める。様々な機会を通じて、勇者様とはある程度の関係を築けていたので、多少の無理は聞いてもらえると思っていました。そして、勇者様に意見が言えるというポジションをキープしながら、国内での発言力を高めていこうと思っていたのですが・・・」


 そこでタチアナが言葉を切った。


「勇者様は、私の想像を遥かに超えていました。私としては、徐々に体制を変え、緩やかな改革を考えていたのですが、勇者様は過激で、あれよあれよという内に植民地や属国の独立運動のリーダーにされてしまったのです」


「私は、その危険性も指摘していたと思いますが・・・」


「そうですね。私の見立てが甘かったとしか言いようがありません」


 小国家群連合もそうだが、タチアナも勇者を甘く見ていたようだ。

 世間知らずの小娘程度にしか、思っていなかったのだろう、それがこの結果だ。誰よりも平和を愛し、平和を望む勇者が、世界各地で混乱を引き起こすのは、本当に皮肉な話だ。


「それで、これからどうされるのですか?こちらとしては、そちらから流れて来た難民をどうにかしてほしいというのが、本音ですが・・・」


「現時点では、あまり力になれることはありません。こちらも資金も物資も人材も不足しており、とても援助なんてできる状況ではないのです。ですので、貸しということでどうでしょうか?」


「分かりました。必ず返してもらいますよ」


「ありがとうございます。それでこれからなのですが、帝国に向かおうと思っています。小国家群連合に倣って、私たち協商連合は強かに立ち回るしかありませんからね」


 タチアナによると、帝国とも協力しながら迂闊に攻められない環境を作るのだという。帝国としてもメリットがあり、受け入れられはするだろう。後は条件次第だろうけど。


「分かりました。それではお気を付けて」

「ありがとうございます。最後にお詫びと言ってはアレですが、情報だけ、お伝えしておきますね」


 タチアナによると、勇者の同行者の中には、多くの諜報員が紛れ込んでいるとのことだった。これ自体は、私たちも把握していることで、目新しい情報ではなかったのだが、今回のスタリオンの内乱も、この諜報員たちが暗躍した可能性が高いとのことだった。


「つまり、勇者様に伝えたことは、必ず各国にも伝わると思ったほうがいいということですね?」

「そのとおりです。ですので、勇者様の同行者はカオス状態です。初期メンバーのお三方はかなり苦労しているようですけどね」



 タチアナを見送った後、私たちは会議を開いた。

 勇者はここまで、行く先々で大問題を引き起こしている。北大陸は大混乱となっているし、ズートラ帝国は崩壊の危機で、スタリオンは内戦状態だ。

 あまり被害を受けていないのは、ヴィーステ王国、小国家群連合、ユーラスタ帝国だ。


 ヴィーステ王国と小国家群の戦略は同じような感じだ。

 歴史的な環境から交渉事には強く、何とか勇者の主張に折り合いを付けようと努力している。それでもある程度の混乱は避けられなかったけどね。

 一方の帝国だが、こちらはズートラ帝国や軍事国家スタリオンと同じ専制国家だ。しかし、他の二つの国と決定的に違う点がある。それは豊かさだ。普通にしていれば飢えることはないし、税率も思ったよりも高くない。支配者階級の貴族たちは威張ってはいるが、幼い頃からノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)を徹底的に教育されているので、そこまで民衆に無茶な要求をすることもないという。


 また、帝国商人は総じて強欲だが、それでも貴族たちと同じような思考を持っていることが多く、最終的には、儲けよりもプライドを優先させる傾向にある。そして、支配を受ける側の民衆だが、それほど困ってはいない。そうなると、勇者が声高に「自由、平等」を叫んでもあまり受け入れられない。今の生活を変える必要がないからだ。

 なので、帝国における勇者の支持者は、女性の権利を主張する者や一部の亜人、獣人などの限定されている。


 バルバラが言う。


「民衆にとって、政治体制など、どうでもいいのじゃ。きちんと飯が食え、生活ができて、公正に罪が裁かれるなら文句はあるまい。それでも不満を持つ者はいようが、どんな政治体制にしようとも、結果は同じじゃ」


 エレンナが言う。


「人族の仕組みは複雑だ。魔族のように強い者に従えばいいと思うのだが」


「今、私たちにできることは、国を豊かにすることね。そうすれば勇者の被害を受けない。それにはまず、ターバの支援だけど・・・」


「それなら、女王自ら現地を視察してはどうじゃろうか?多くの支援物資を持ってな。まだまだゼノビアに恨みを持っている者も多いが、それでもターバは戦争の危機から救ったことで、それなりに人気はあるしな」


 王都パルミラ、港湾都市トリスタ、ダイバーシティに続いて、ターバもゼノビアの評判は良くなってきている。バルバラの提案どおりにするのもいいかもしれない。


 そんな時、ケトラが報告にやって来た。


「勇者だけど、なぜかターバに居るニャ」


 あまり会いたくはないが、それでも一度話はしておかないとね。

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