表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/71

50 難民

 私は今、報告書を読んでいる。

 報告書によると、アザルシャハルのダンジョンは「恵みの洞窟」と名付けられたようだ。少量だが、アダマンタイトやオリハルコンが採取でき、ダンジョンのお蔭で、かなり潤っているからだ。まあ、これで当分心配はないだろう。

 ハジャスは義理堅いし、ジャスミンは私に好意的だ。何かあれば、力になってくれるだろう。


 そんなことを思っていたところに、ケトラが駆け込んで来た。


「大変だニャ!!ターバがヤバいことになっているニャ」


 ターバって、あのターバ?

 スタリオンとの国境沿いにあるオアシスで、和平の立役者となった勇者の像が立っているあのターバ?


「そうだニャ。実はスタリオンで内戦が起きたニャ。それで多くの難民がターバに押し寄せているニャ」

「難民がターバに来たのは分かったけど、内戦ってどういうこと?何でそうなったのよ?」

「それは勇者の所為ニャ」


 また勇者の所為か・・・


 詳しく聞くと、スタリオンは旧スタリオンと新たにできた協商連合とで内戦状態のようだ。協商連合は、主にスタリオンに侵略された植民地や属国が中心となって形成されたようで、その代表というのが、あのタチアナだった。


「スタリオンの使節団の代表だったタチアナはかなり抜け目のない奴だったニャ。勇者を上手く担ぎ上げて、各地で独立運動を起こさせたニャ」

「そうなのね・・・やけに勇者にべったりだったのが、分かった気がするわ。目的はこれだったのね。それに私が熱心に話した勇者の活用法のとおりに工作をしていたようね」

「そうだニャ。正規軍同士の戦争というよりは、民衆の世論を操作して、ここまでやって来た感じニャ」


 バルバラが言う。


「この際、原因などは後回しでよい。問題はターバの難民をどうするかじゃ」

「そうね。まずはターバに行って確認してみないとね」


 そんな話をしていたところにエレンナがやって来た。


「ティサ、困ったことになったぞ。スタリオンと協商連合、それぞれの使者が来た。お互い接触させないように別室で待機させているが、どちらも要望は、自分の陣営に加わってほしいといったところだ」


 なぜ、こうも問題が起こるのよ!?


「問題を整理すると、ターバの難民問題の解決、それとスタリオンと協商連合との関係をどうするかってことね?」


「その通りじゃが、解決するのは難しいぞ」


 それは十分に分かっている。


 ★★★


 まずは使者との面談を行うことにした。

 スタリオンと協商連合には、双方から使者が来ていることを予め伝えた。これはどうせバレることだし、後々問題になっていもいけないので、正直に伝えることにした。


 最初に面談したのはスタリオンの使者にした。

 今回はゼノビアではなく、ティサリア大臣として使者と面談をする。ヴィーステ王国の立場などを説明していく。敢えて女王を不在と言うことにした。交渉でよくやる手だ。


「私はティサリア、開発担当大臣を拝命しております。女王陛下が不在ですので、私が全権を任されております」

「どうだかな・・・」

「私どもとしましては、大量に流入して来た難民をどうにかしてほしいというのが本音です。そちらの内戦につきましては、中立という立場を取らせていただきます」


 使者は少し黙る。何かを考えているのだろう。


「条件を出そう。こちらに味方してくれるのなら、難民に対する資金援助をしてもいいと考えている」


 使者の物言いは、かなり上からだが、ヴィーステ王国に使者を派遣するほど追い込まれているのだろう。そうでなければ、わざわざこんな時期にここに来ない。これがファラーハであれば、最大限利益を得るために色々と画策するだろうが、生憎、私はそんなつもりはない。とういうか、関わり合いになりたくないのだ。スタリオンにしても、協商連合にしても、勝手にやってくれというのが本音だ。まあ、難民のことは何とかしてもらいたい気はするのだが・・・


「女王陛下も不在ですので、即答することはできません。ただ、不可侵条約は遵守致します。現時点では、どちらの陣営にも味方しないと思っていただけたらと思います」


 少し考えた使者が言う。


「我らの手を取れば、利益が得られただろうに・・・まあいい。よく検討して、我らの手を取るのであれば、言って来てくれ。我らは寛大だからな」


 使者としても、すぐに私たちの協力が得られるとは思っていなかったのだろう。最低限、中立という立場が確認できただけでも、合格点だったのかもしれない。


 スタリオンの使者の後に、今度は協商連合の使者と面談することになった。そして、使者というのが・・・


「た、タチアナ様!!国家元首である貴方が直接来られるなんて・・・」

「ティサリア大臣、水臭いですよ。それに直接お詫びしなければと思い、参ったのです。このような事態になってしまったのも、私の不徳の致すところですからね」


 スタリオンが一介の使者、一方の協商連合は国家元首がやって来るなんて、この交渉に懸ける真剣さが違う。


「ティサリア大臣、そんなに警戒しないでください。これから順を追って説明させていただきますから」


 タチアナが話始める。

 まずタチアナだが、なんとスタリオンの王女だという。


「王女といっても側妃の娘ですからね。それに私の母は属国の王女、待遇は最悪でした。普段から王女と名乗ることは許されず、先の戦役で私が使節団の代表となったのも、何かあれば処分される予定だったのです。体のいい生贄ですよ。完全敗北に近い状況で、誰も交渉を上手くまとめ上げるなんて、思っていませんでしたからね」


 詳しく聞くと、交渉が失敗したときは、全責任を押し付けられて処刑され、それで国民の溜飲を下げさせる予定だったそうだ。


「そんな状況ですので、何とか今の立場を変えたいと思い、勇者様を利用することを思い付いたのです。今となっては、私ごときが扱える人物ではなかったのですが・・・」


 それはそう思う。

 どうして、スタリオンが内戦になったのか、私は理由を聞くことにした。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ