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5 暑すぎる・・・

 暑い、暑すぎる・・・

 ヴィーステ王国の再建を心に誓った私だが、早速心が折れそうになる。ケトラなんて、完全に活動を停止している。


「暑いニャ・・・もう私は駄目かもしれないニャ・・・」


 ケットシーで、モフモフしているから、私以上に暑さに弱いようだ。


 資料を読み込み、問題点を深堀りしようとするが、全く集中できない。それに見れば見るほど危機的な状況なので、憂鬱になる。このままでは、勇者が来る前に滅亡してしまうかもしれない。何とか夕方まで頑張ったが、特に大きな成果はなかった。


 夕方になって、狩りに出ていたエレンナが帰って来た。小型のキツネ型の魔物であるデザートフォックスを1匹持ってきただけだった。


「すまん、これだけしか持って来れなかった。暑すぎて、長時間の活動は無理だった。何とか10匹は狩れたのだが、今にも倒れそうな子供と母親がいたので、9匹はその者たちに渡してきた。私がこれ以上頑張っても、焼け石に水だろう。もっと根本的な解決をしなければ・・・」

「謝らなくていいわよ。魔王様と一緒で優しいところが、エレンナのいいところだもの。何かいい方法を考えるわ」


 そうは言ってみたものの、いい方法なんて思いつかない。そんな方法があればゼノビアがとっくの昔にやっていただろうしね。


 夜になると、今度は一気に冷え込む。体感だけど氷点下になっていると思う。


「さ、寒いニャ・・・凍死してしまうニャ・・・」

「それもそうね。まだ着込めば寒さは耐えられるけど、暑いのはねえ。魔法で涼しくなったりしないの?」

「昼間に氷結魔法を使い続けたから、もう魔力切れニャ」

「私も同じだ。暑さ対策で魔力を消費したからな。明日に魔力が回復するか分からないぐらいだ」


 私は少し考えて言った。


「魔法があれば、涼しくなるってことよね?」

「そうなんだけど、この付近一帯を涼しくしようとしたら、膨大な魔力が必要ニャ。そんな奴は、そうそういないニャ。魔王軍でも魔王様やバルバラ様くらいだニャ」


 だったらバルバラを呼べばいいじゃん!!


 社長時代の私の失敗の原因の一つは、人に頼れなかったことだ。プライドが高く、頭を下げられなかったからだ。それはゼノビアにも言えることだけど。

 でも私は生まれ変わった。それくらいならできる。



 ★★★


 次の日、早速バルバラを連れて来た。


わらわを頼りにしてくれて、嬉しく思うぞ。ところで、何をすればいいのじゃ?」

「とりあえず、涼しくしてもらえる?氷をいっぱい出すとかさ」

「「暴風の魔女」たるわらわに初歩の氷結魔法を使えと?まあ、他ならぬティサの頼みじゃ。何とかしてやらんでもないぞ」

「ありがとうバルバラ!!」


 私はバルバラに抱き着き、頭をなでなでした。


「止めるのじゃ!!わらわは子供ではないのじゃ。それもこんな人前で!!まあ、二人っきりなら撫でさせてやらんこともないがのう・・・」


 バルバラはツンデレ幼女なのだ。実年齢は300歳くらいだけどね。


 その日からバルバラは、大活躍する。早速、執務室を快適な環境に変える。大量の氷を作り出し、得意の風魔法で冷風を送ってくれる。これには文官たちも大絶賛だった。


「初めてです。ゼノビア様が女王になってよかったと思ったのは・・・す、すみません、失言でした」


 イエスマンだけど、ほとんどがゼノビアに悪感情を持っているのだろう。これは私も社長時代に経験したことだ。


 ここでエレンナが提案をしてきた。


「孤児院や治療院など、体力の弱った者がいる場所にバルバラ殿の氷を届けたい。許可してもらえないだろうか?」

「それはそうね。でもバルバラの魔力が持つかなあ?」

わらわの魔力を舐めるでない。この城くらいなら、10個分は余裕じゃ」

「じゃあ、これから町を周ろうか?」


 エレンナが困った表情で言う。


「それは止めたほうがいい。行くとしても顔は隠せ」



 ★★★


 町に出てみて、その理由が分かった。

 ゼノビアは、かなり嫌われていた。ベールで顔を覆って孤児院や治療院を周ったのだが、行く先々でゼノビアの悪口を聞かされた。


「ゼノビアの馬鹿は、何を考えてんだ」

「クレオラ様の時代は本当によかったのに・・・」

「おい、こんな大通りで言うんじゃない。ブタ箱に放り込まれるぞ」


 一方バルバラだが、市民から大絶賛される。


「もしかして聖女様では?」

「あんな小さいのに・・・健気に頑張っておられる」

「あの子が女王になってくれればいいのに・・・」


 気を良くしたバルバラは、孤児院や治療院だけでなく、何箇所かの公共施設にも氷と風魔法で出した持続式の竜巻を設置した。氷の上に竜巻を置いておけば、日中はずっと冷風が出るからね。

 ひと段落して、城に戻って来た時にバルバラが言った。


「氷結魔法がここまで、人の役に立つとは思わなんだ。来世は氷結魔法を極めてもいいかもしれんな。こんな機会を与えてくれたティサには感謝しておる」

「しばらくは、お願いするからね。魔王軍の仕事は大丈夫?」

「魔王様が融通してくれておるからのう。問題児もおらんことじゃし・・・」



 ★★★


 夜になった。

 今日もかなり冷え込む。


「さ、寒いのじゃ・・・火魔法を使ってもいいが、流石に明日の魔力が持たんぞ・・・」

「だったら一緒に寝ようよ。くっついて寝れば、温かいしね」

「だったら私も一緒に寝るニャ!!」


 キングサイズのベッドだが、三人で寝ると結構きつい。でもなんか落ち着く。


「ところで、何でバルバラは今まで風魔法ばっかり使ってきたの?」

「それはのう、わらわには三人の姉様がおったのじゃが、それぞれ火魔法、土魔法、水魔法が得意じゃった。じゃがわらわは、あっという間に姉様たちよりも魔法が上手くなってしもうた。じゃから、姉様たちに遠慮して、風魔法しか使わんようにしたのじゃ。皆、それぞれの魔法で、その道のスペシャリストだったからのう。姉様たちとは仲良くしたかったしな」

「お姉様は元気なの?」

「100年前に亡くなっておる」

「だったら、お姉様を思いながら、火魔法も土魔法も水魔法も使えばいいじゃん。そうしたらお姉様も喜んでくれると思うよ」

「そういう考えもあるのか・・・ティサのためじゃ。できる限りのことはしてやろう」


 そんな話をしながら、私は眠りに落ちた。


 ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、希望が見えた気がした。

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