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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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48 その手があったか!!

 ハジャスとの交渉は、ジャスミンにしてもらった。


「ティサリア大臣と協議し、秘密裏にノッカーたちが採取した魔石は買い取ってくれることを確約してくれました。それで承認をいただいてもよろしいでしょうか?」

「うむ、それと3割はこちらで買い取ろう。有事のための備蓄としてな」

「ありがとうございます」


 ハジャスには承認をもらえたが、また親子喧嘩が始まった。


「だが、これだけでは根本的な解決にはならんぞ」

「分かってますよ!!こっちだって色々考えてるんですからね!!」

「考えるだけなら、誰でもできる。我々は結果を出さなければならない立場だ」

「分かってるって言ってるじゃないの!!」

「こっちは、分かっていないから言っているんだ!!」


 また仲裁に入り、ジャスミンを連れ出す。

 私からすれば、どっちもどっちだ。お互い頑固で譲らない。


「ジャスミン様、落ち着いてください。ハジャス様も結果を出せば、認めてくれると思います」

「そうですね・・・だったら頑張らないと」


 現在、考えられる方法は二つ。

 一つはノッカーたちを大々的に鉱夫として雇用し、それであぶれた鉱夫に別の仕事を斡旋する。もう一つは、ノッカーたちに新しい産業を生み出させることだ。前者はまず無理だろう。保守的なハジャスが許すはずもないし、鉱夫たちの反発も大きい。

 となると新しい産業を興すことだが、そんなに簡単にはできない。できるなら、もうやっているだろうし・・・


 とりあえず、ノッカーたちの居住区の視察に行った。しばらくは事務仕事ばかりで、視察には行ってなかったからだ。それで行ってみて、びっくりした。凄いことになっている。

 廃鉱山だったとは思えないくらい、住環境が整っている。ホテルとして営業してもいいくらいの出来栄えだ。それにエレベーターっぽいものもある。

 ロクサーヌに聞いてみる。


「あれッスか?あれは魔石で動く昇降機ッス。魔道船を修理した時に思いついたッス。ノッカーたちは器用な奴も多いんで、すぐに自分たちで作れるようになるッス。今はゴブトが指導しているッス」


 更に周囲を見ると魔石で動くトロッコも開発していた。今も忙しそうにゴブトがノッカーやノームに指導している。私は思わず言った。


「これはイケるかも・・・」


 ジャスミンが答える。


「どういうことですか?」

「それはですね。これならノッカーたちは、鉱夫たちのライバルではなく、サポートポジションを得られるということですよ。詳しく説明すると・・・」


 鉱夫がノッカーたちを恐れているのは、自分たちよりも優秀で、自分たちの仕事を取られると思っていることだ。だが、ノッカーたちが自分たちのライバルではなく、鉱山の設備を整えてくれる有難い存在と思ってもらえたらどうだろうか?

 これなら共存できる。他の鉱山を視察しても、こんな設備はなかったし、トロッコやエレベーターがあれば、鉱夫の仕事も楽になる。


「分かりました!!すぐに父上に・・・」


 私は、すぐにハジャスの所に行こうとするジャスミンを止めた。


「お待ちください!!まずは、トロッコや昇降機の有用性をまとめ、これらを導入すれば、どんなメリットがあるかを調査しなければなりません。また、デメリットもあるかもしれません。そこも調べた上で、ハジャス様に提案すればいいと思います。そうでなければ、また喧嘩になってしまうかもしれませんし・・・」


 アイデアだけ持って行っても、ハジャスのことだから、すぐに「うん」とは言わない。予算のことも考えなければならないだろうし、また喧嘩になるのがオチだ。その辺をジャスミンに説明する。


「そうなんですね・・・いい案だと思ったのですが・・・」

「いい案が全て実現できるわけではありません。族長となれば、様々なことを考えなければなりませんからね。とりあえずは、もっと調査をしましょう」


 ジャスミンは少し考え、決意を固めたようにこう言った。


「お願いがあります。この件は私にやらせてください。必ず父上を説得してみせます」

「ではお願いします。一言助言するなら、感情的にならず、常に客観的に判断するようにしてください。身内との議論の時は、どうしても感情的になりますからね」


 社長時代、父と激しく口論した私が言うセリフではないかもしれないけどね・・・


 それからジャスミンは、一生懸命にノッカーたちから話を聞いたり、資料をまとめたりしていた。



 ★★★


 ジャスミンに任せたので、手の空いた私は、バルバラ、ケトラ、エレンナと話し合うことになった。それぞれから意見を聞く。


「いい案じゃと思うぞ。資料作りから予算や族長としての考えが学べるから、親子関係も修復できるやもしれんな」


 エレンナも続く。


「可能なら「始まりの遺跡」や「奇跡の遺跡」に昇降機を取り付けてもいいかもしれん。老人なんかは、最上階に行くのに辛そうだからな」

「それはいい案ね。すぐに検討しましょう」


 そんな時、ケトラが思いつめたように言う。


「私から提案があるニャ。できれば三つある廃鉱山の内の一つを私にくれないかニャ?」


 詳しく事情を聞くと、またケトルの為だった。

 ケトラが言うには、ケトルは上級ダンジョンマスターの筆記試験に合格し、次は居抜き物件ではなく一からダンジョンを作れば、晴れて上級ダンジョンマスターになれるそうだ。


「ケトルには珍しく、かなり頑張っていたニャ。本当にどうにかしてあげたいニャ」

「ところで、どんなダンジョンにするの?」

「それは「始まりの遺跡」と同じコンセプトにするニャ。ノッカーたちの棲み処は、そこを見るだけでも、お金が取れるレベルだニャ。ホテルとダンジョンの併用をコンセプトに、最新の昇降機やトロッコなんかも設置するニャ。物珍しさで来てもらえると思うニャ」


 前の世界で言うと、トルコのカッパドキアのようなイメージだろう。それにしてもケトラはよく考えている。


「後は料理だけど、そこはこれから開発するとして、スタッフは「始まりの遺跡」や「奇跡の遺跡」のベテランスタッフをこっちに回して、「始まりの遺跡」と「奇跡の遺跡」には新しく、ケットシーを雇うニャ」


 エレンナが言う。


「もうケトラがマスターをしたほうがいいのではないのか?あんな駄目男がするよりもいいと思うぞ」

「で、でも・・・ケトルは頑張っているニャ」


 ケトラは頑張っている者に対して甘い。ゼノビア然り、ケトル然りだ。経営者としては、どうかと思うけど、人としては好感が持てる。それに何だかんだ言いながらもケトルを放っておけないんだろう。


「分かったわ。とりあえず、ケトルを連れて来なさい。本当にやれるかどうかを確認しないとね。また法外な金額を払わされたり、変なことになったりする可能性もあるからね」


「それは大丈夫ニャ。ちゃんと面倒は見るニャ」


 ダンジョンがオープンできるなら、かなりの収益が見込める。

 ジャスミンがやっているノッカーたちの活用方法とダンジョンを併せれば、問題は解決するかもしれない。

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