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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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46 ゴルド部族

 ゴルド部族の拠点、アザルシャハルにやって来た。

 アザルシャハルは鉱山の町だ。砂漠は砂漠でも、こちらは山が多い。どれもハゲ山だけどね。


 今回の訪問は、ハジャスからの要請に応えた形だが、私たちにも目的がある。それはノッカーとノームを受け入れてもらうためだ。ダイバーシティでの受け入れは可能だが、それだけではいけない気がする。他の場所でも受け入れ態勢が整わなければ、いずれダイバーシティも飽和状態になるからね。


「ゼノビア殿、わざわざ来ていただき、感謝する」

「女王として当然ですよ。それに()()()()()()()()殿()の頼みですから」

「言うようになったな。そんなことは思っておらんだろうに」


 腹の探り合いは、ここまでにして私は解決案を話す。


「魔族であるノッカーとノームを受け入れろと?」

「こちらで調査したところ、いずれも鉱山での作業に最適の種族です。彼らは長年、ズートラ帝国で虐げられてきた歴史があります。その辺を配慮していただければと思います」

「有難い話ではある。だが、こちらも問題を抱えているのだ」


 ハジャスが言うには、急に移民が増えたことで、少し混乱しているという。元からいるゴルド部族と移民との間で、文化や風習の違いから諍いも起きているそうだ。


「文化、風習の違いもあるが、一番は鉱夫たちが仕事を奪われるのではないかと冷や冷やしていることだ。ノッカーとノームが炭鉱夫として優秀ならば尚更だ。私としては、発展よりも安定を望んでいる。ゼノビア殿と意見が合わんかもしれんが・・・」

「難しいところですね。依然の私なら、何が何でも推し進めたと思うのですが、女王になって経験を積む内にハジャス殿の考えも一理あると思うようになってきました」


 これは本当だ。

 会社を潰し掛けた私だからこそ、痛いほど分かる。父がやっていた通りに事業をしていればと、今でも思ってしまうからね。

 だけど、こちらとしてはノッカーとノームを受け入れてほしい。何とかできないだろうか?


 そんなとき、一人の少女が入って来た。


「父上!!何度も言っているように、私たちゴルド部族も積極的に新しい産業を興し、発展させていくべきです。保守的な政策ばかりでは、いずれゴルド部族は滅びます!!」


 どこかで聞いた話だが、私も社長時代に同じことを言っていた気がする。


「ジャスミン!!女王陛下の御前だ!!何を考えているんだ!?」

「女王陛下!?何という幸運!!私はジャスミン、ハジャスの娘で次期族長なのです。常々私は女王陛下の政策に感銘を受けていたのです。折り入って相談が・・・」


 言い掛けたところで、ハジャスの指示を受けた護衛に連れ出されてしまった。


「失礼した!!馬鹿娘には困ったものだ・・・貴殿に相談したかったのは、娘の件もあるのだ。小国家群の自由都市の連中や勇者の影響で、ああなってしまった。どこで教育を間違ってしまたんだろうか・・・」


 ハジャスの娘のジャスミンは、ハジャスとは対照的に改革推進を信条としている。そうなったのも、小国家群への留学が原因の根底にあるようだ。そして最近、小国家群にやって来た勇者とも面談したそうだ。今のジャスミンを見ると完全に勇者のシンパになっている。私に好意的なのも、私が勇者シンパだと思っているからだと思う。


 改めて言うが、私は勇者のシンパなどでは、決してない。ただ、国の為に仕方なく、そういうポジションを取っているだけだ。


 以前の私なら、ハジャスのことをこき下ろしただろうが、今では一定の評価をしている。族長となれば大きな責任を負う。新しいことに踏み出すよりも安全策を取ることも、十分に理解できる。

 それにしてもどこかで聞いたことのある話だが・・・


「分かりました、ハジャス殿。私がここに残って問題に対処することは立場上できません。ですので、私の腹心を派遣します。彼女なら上手くやってくれるでしょう。ただし、これは貸しですよ」

「いいだろう。この二つの問題が解決するのなら、安いものだ」



 ★★★


 一旦、パルミラに帰還した私は、ティサリアとなって、再びアザルシャハルを訪れた。同行しているのは、いつものエレンナ、ケトラ、バルバラに加えて、ハイドワーフのロクサーヌとゴブリンのゴブトだ。ロクサーヌとゴブトを同行させたのは、技術的な指導を考えてのことだ。ノッカーとノームの運用について、私よりもいいアイデアを思い付きそうだしね。


 ハジャスに挨拶をして、その後ジャスミンと面談することにした。年齢は成人したばかりの15歳くらいで、ハジャスと違ってスラっとした体型だ。


「私は開発担当大臣のティサリアです。女王陛下から全権を預かっております。ハジャス様からもジャスミン様と協力して対処するようにと、指示を受けております」

「貴方のことは、勇者様からも聞いています。勇者様が絶賛していましたからね。私もダイバーシティのような町にしたいと思っているのですよ」


 ジャスミンはそう言うが、ダイバーシティは決してユートピアではない。騎馬王国という仮想敵国があるからまとまっているし、今のところ、各種族も我を通そうとしない。今後どうなるかは、全く分からない。ザルツ部族がダイバーシティの自治を認めたのも、厄介事に首を突っ込みたくないという思惑もあるからね。ザルツ部族にとっては、岩塩の卸し先と騎馬王国との緩衝材としか見ていないのだろう。


「お褒めいただき、ありがとうございます。それでは早速、受け入れ準備を致しましょう」



 それから1週間後、ノッカーとノームたちがやって来た。ぱっと見だが、1000人以上はいる。どちらも小型種で子供くらいの身長しかないから、わちゃわちゃして可愛らしい。すぐにハジャスに指定された廃鉱山に案内する。廃鉱山は三つで、とりあえずその内の一つに住んでもらうことになった。


 ジャスミンが彼らを見ながら、感慨深げに言う。


「これから、ダイバーシティのような素晴らしい町の一歩が始まるんですね・・・」

「ジャスミン様、そう呑気なことを言っていられませんよ。問題は山積みです。当面は、支援金や援助物資で何とかなりますが、いつまでも、そうやって保護していくことはできません。彼らが生きる道を示してあげないといけません」


 ハジャスが、敢えて廃鉱山をあてがったのにも意味がある。

 住民の反対があったからだ。一言で言うと、あまり歓迎されていないのだ。これから、彼らをどうするか、本当に頭の痛い問題だ。

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