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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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45 勇者、行方不明になる

 ダイバーシティで勇者を見送ってから1ヶ月、勇者が行方不明となった。

 情報によると、小国家群を旅立った勇者は、小国家群の西に位置する、侵略国家ズートラ帝国に入ったまでは分かったが、そこから先の消息がつかめないという。


「ちょっと心配ねえ・・・また面倒事に巻き込まれなければいいけど」

「魔王様の諜報部隊は、情報を掴んでいるはずニャ。でもこちらからは聞けないニャ」


 魔王様直轄の諜報部隊に接触することは厳禁らしく、存在自体が秘匿なので、話題にすることも憚られるそうだ。


「とりあえずは、勇者の情報を集めながら、こちらは内政に力を入れていきましょう。国が大きくなった分、仕事も増えたし、人も増えたからトラブルも多いしね」

「そうだニャ。ヤバい状況になったら、魔王様が何か教えてくれるニャ」



 ★★★


 それから半年、世界を揺るがす大きなニュースが飛び込んで来た。もちろん、勇者の所為だ。


「ズートラ帝国が内戦状態ですって!!それで難民が大量に発生して小国家群は大混乱って、どういうことよ?」


 エレンナが言う。


「奴らは仮想敵国であるズートラ帝国に勇者を送り込んで、ズートラ帝国の弱体化を狙っていたようだ。しかし、結果はこの有様だ。ズートラ帝国を弱体化させる目的は達したが、また難民に苦しむことになったようだ。奴らは勇者の危険性を理解しておらん」


 ズートラ帝国は、独自の宗教観を持つ、厳しい階級社会だ。階級間の序列は明確で、抗うことはできない。抗おうものなら、厳しく処罰される。それに奴隷とは言っていないが、奴隷同然に扱われている階級もある。勇者じゃなくても、私だって許せないくらいのことはしている。

 そこに勇者が行くと・・・


「そうなるよね・・・それで、小国家群連合は何て言ってきているの?」

「ゴルド部族のハジャスに相談したようだ。それで、ハジャスから一度、話がしたいと書状も届いている」

「調整はしてみるわ。一度は見に行ってみたいしね」


 そんな話をしていたところにバルバラがやって来た。


「魔王様からの呼び出しじゃ。四天王会議を開くそうじゃ」

「えっ!!本当に?すぐに準備しなくちゃ!!今日の仕事はこれで終わりよ。まずはお肌の手入れからね」


 私は政務をキャンセルし、すぐに着替えに向かった。


「ティサらしいと言えば、ティサらしい」

「うむ、何の会議で、いつ開催するかも聞かんところがな・・・」


 早とちりしてしまった。会議は3日後だった。


 ★★★


 バルバラ、ロクサーヌと共に魔王城に赴き、魔王様から指示を受けた。


「知っていると思うが、勇者の同行者の中に密偵を忍ばせている。詳しくは言えんが、我々も勇者を利用することにした。もちろん、その危険性は十分理解しているつもりだが・・・」


 勇者を利用?

 魔王様が勇者を利用するなんて、そんな設定はゲームでは無かったはずだけど・・・


「ズートラ帝国で内乱が起きていることも、我らの工作が成功した結果だ。ズートラ帝国は我が同胞を奴隷同然に扱っていたから、何とかしたかったのだ。それで、貴殿らに頼みたいのは、難民となった種族の保護だ」


 魔王様が言うには、解放した魔族の大半は、魔王国で保護しているという。しかし、一部の種族は魔王国へは帰りたくないと言っているそうだ。


「我が魔王となるまでは、魔族も弱肉強食の社会で、弱小種族は生きづらかった。彼らにはそのイメージがあるのだろう。彼らが魔王国から出たのも、それが理由だ。特にティサには迷惑を掛けるが、彼らを何とかしてやってほしい」


「もちろんです!!すぐに何とかします」


 会議室から出ようとした私をバルバラが止める。


「ティサ!!まずは魔王様の話を詳しく聞くのじゃ。どんな種族で、どんな特徴があって、何に困っているかなどを聞かんと、対策も何もあるまい」

「そ、そうだね・・・魔王様、詳しくお話を」


 魔王様の話によると、問題となっている種族はノッカーとノームらしい。いずれも小型種の魔族で、ノッカーは穴掘りが得意で、鉱山などに住む種族だ。ノームも同じように地中に住む種族だが、ノッカーほど穴掘りは得意ではないが、手先が器用だ。ノッカーとノームは祖が同じではないかというくらいに似ている。


「ズートラ帝国で彼らは、過酷な環境に置かれていた。魔王国に来ても扱いは変わらないと思っているようだ。彼らが安心して暮らせるようにサポートしてもらいたいのだ」


 多分、ダイバーシティであれば普通に暮らすことはできるだろう。しかし、彼らの特徴は生かせない。ノームは手先が器用で、使い道はあるだろうけど、ノッカーは穴掘りに特化しているため、運用が難しいところだ。鉱山でもあればなあ・・・


 そこで閃いた。

 あるじゃん!!


「お任せください、魔王様。このティサリアに掛かれば、どうということはありません」


「では頼むぞ。我は期待している」


 私は颯爽と会議室を後にし、パルミラに帰還した。パルミラに帰還したのは、私とロクサーヌだけだった。バルバラは魔王国で少し用事があるらしい。

 今回の作戦はロクサーヌにも手伝ってもらう。帰還後、二人で今後のことについて話し合っていた。



 ★★★


 ティサリアが去った会議室、魔王が呟く。


「ティサは大丈夫だろうか?心配だ」

「大丈夫じゃ、ティサも成長しております。マドラーム、お主もそう思うじゃろ?」

「そうだな、以前よりはだが・・・」


 再び魔王が続ける。


「それと俺は勇者のことが気になる。別世界からやって来たということだが・・・」

「それについては、調べようがないのじゃ。わらわには、妄想としか思えませぬ。それはエレンナもケトラも同じ見解じゃ」

「何でもいいから、勇者の情報を集めてくれ。少し気になることがあるんだ」


 マドラームが言う。


「魔王様にしては、珍しいですな。まあ、ティサは勇者と懇意にしていますから、自然と情報が集まるでしょう」

「分かった。引き続き頼む」


 二人が去った会議室、魔王が呟く。


「一度、勇者に会うべきかもしれんな・・・」

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