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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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44 帰って来た勇者 2

 ダイバーシティに着くと、勇者たちは熱烈な歓迎を受けた。

 多くの住民が勇者によって、奴隷から解放された者たちだからね。


「勇者様!!ありがとう!!」

「この町は素晴らしいんですよ!!」

「ゆっくりしていってください!!」


 勇者も大満足だ。それから町を視察する。


「みんなが生き生きと暮らしている・・・本当によかった・・・」


 勇者は涙ぐんでいる。

 勇者は悪い奴ではない。ただ、やり方と主張が尖り過ぎているだけだ。


 その後、市場や工房などを周る。


「ダイバシティーは、交易の中継都市として発展しています。主な輸出品はザルツ部族の岩塩、大草原の恩恵を受けた肉類や毛皮などです。最近では新たな産業も、できつつあるんですよ」


 そう言って勇者たちを案内したのは、アラクネ族の工房だ。彼らは、スキルで蜘蛛の糸を出すことができる。それを織物にしているのだ。


「かなり評判が良く、最近では小国家群だけでなく、帝国からも買い付けに来るほどです」

「それぞれの特徴を生かした産業を発展させているところは、評価できるね」


 続いては議会の様子を視察してもらった。こちらも勇者は満足していたようだ。

 そして、最後に視察したのは、軍事訓練だった。

 予想通り、ケンタウルス、コボルト、インプのスリーマンセルの偵察騎兵隊には、かなり食いついていた。


「これだよ!!僕が求めていたのは、こういうことだったんだ!!お互いの長所を伸ばし、欠点を補い合う。これが真の多様性だよ!!」

「お褒めいただき、ありがとうございます。彼らのお蔭で、盗賊の襲撃や魔物に対しても迅速に対処することができているんです」

「女王さんは、僕の理念を理解しているね。それにそれを現場レベルまで落とし込んだ大臣さんの手腕も評価しないとね」


 最高の評価だった。



 ★★★


 勇者のダイバーシティでの滞在は10日の予定だ。最初の2日は私の案内でダイバーシティを周ったのだが、勇者は次第に単独行動が増えた。4日目からは完全に初期の勇者パーティーの三人を引き連れて、町やその周辺を周り出した。もちろん冒険ではない。町の人に話を聞いたり、種族の代表者と面談を重ねていた。


 そして、7日目・・・


「ダイバーシティはいい町だ。今までボクが見た中では、最高の町だ。でも、僕の言うとおりにしたら、もっと良くなる。まずは選挙の導入だね。住民に選挙権を与え・・・」


 そうだった!!

 前世の勇者は、誰も基本的に話を聞いてくれない環境だった。なので、話を聞いてくれた相手には様々な提案をしてくる。それを真に受けたら大変なことになったんだけどね。それに100パーセントの善意からのアドバイスだから、余計に質が悪い。


 でも今は違う。前世の記憶もあるし、ここまで女王として、それなりにやって来た。勇者の気分を害しないように配慮しながら、こちらに害のない妥協案を提示することもできる。


「そうですね、勇者様に指導された選挙制度も女王陛下は考えられたのですが、問題が多く、計画は頓挫してしまっているのです」

「だったらボクが相談に乗るよ」

「ありがとうございます。その理由は我が国に遊牧民や拠点を持たない行商人が多くいるからです。定住者の意見ばかりが採用されるのもどうかと思いますし、かなりのコストが掛かります」

「そうだねえ・・・難しいな。すぐに答えを出せそうにないよ」


 これなら、角が立たない。勇者が答えを持ってないことをこちらができるわけがないという論理だ。


「選挙のことは置いておいて、次は軍事面だな。少し戦力が過剰すぎないだろうか?」

「そうですね。この辺の魔物は強力ですし、盗賊の襲撃も、かなりあります。国としては、不測の事態に備えて、余裕を持った部隊構成にしているのです。もちろん、この世界から戦争と魔物がいなくなれば、縮小は致します」

「結局ボクが、世界を平和にしなくちゃいけないってことだね・・・」


 まあ、そんなことはないだろうけどね。できたらみんなやっている。


「最後に「聖女の壁」なんだけど、世界を分断しているようであまり好きになれないな。壊したりできないかな?」

「それは、現時点では難しいですね。ただ、この世界が平和になった時には、勇者様と一緒に壊したいと思っています」

「結局、そこに行き着くんだね。分かったよ。今以上にボクは頑張るよ」


 勇者は同行者や市民に向かって演説を始めた。


「みんな、聞いてくれ!!ボクは宣言する。真に平和な世界を作る!!そのためにみんな協力してほしい!!」


 市民や同行者からは大歓声が上がる。

 前世でもそうだったが、勇者は人を乗せるのが上手い。私のプレゼン技術も彼女から学んだことも多くある。どちらも共通しているのは、実現不能な夢物語を信じ込ませてしまい、大ひんしゅくを買ったことだ。まあ、あちらの世界に戻ることもないし、消したい過去ではあるけどね。



 ★★★


 予定通り、勇者を小国家群連合に引き継ぐことになった。小国家群連合の代表者と引継ぎを行う。


「お疲れさまでした。これから我々が苦労すると思うと、胃が痛くなりますよ」

「少し疲れましたけど、何とかなりました。ところで、どんな手を考えているんですか?」

「勇者様を受け入れるに当たって、こちらも少しだけ制度を変えたりしました。まあ、言い訳程度ですがね」


 小国家群連合の代表者によると、王政の国で申し訳程度に貴族院と平民議会を設置したそうだ。また、女性でも女王や領主になれると法を変えた国もあるそうだ。でも実際は、平民議会の権限はほぼないし、女性がすぐに領主となることも、まずないという。本当に申し訳程度だ。


「それと奥の手があるんですよ。ここでは言えませんがね」


 小国家群連合に属する国や都市は、本当に強かだ。転んでもただでは起きない。ファラーハがいっぱいいる感じだ。なので、また自分たちの利益になることを画策しているんだと思う。それが普通の者なら嵌るだろうが、相手は勇者だから、予想外の結果になるかもしれない。


 そんな思いを抱えながら、勇者たちを見送る。


「大臣さん!!どうもありがとう。絶対に世界を平和にしてみせるからね。ではまた会おう。女王さんにもよろしくね」


 颯爽と旅立つ勇者。

 また良からぬことが起きそうな予感がした。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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