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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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43 帰って来た勇者

 北大陸を大混乱に陥れた勇者だが、中央大陸に戻って来ることになった。各国に激震が走る。

 水面下で、帝国とスタリオンが接触して来た。結局、資金援助と引換えに、ヴィーステ王国と小国家群連合が勇者の面倒を見ることで合意した。


 そんなこんなで、北大陸に勇者が戻って来た。

 計画では、勇者はトリスタまで船で、そこから陸路でパルミラ入りし、その後「奇跡の遺跡」とダイバーシティを視察した後、小国家群連合に引き継ぐ予定だ。そして、勇者はトリスタで熱烈な歓迎を受けた後、パルミラに到着した。


 あれ?勇者に同行している者がいっぱいいる。数えただけでも30人近くいる。

 同行者は多種多様で、人族だけでなく、獣人やエルフ、ドワーフ、果ては魔族までいる。ケトラに尋ねた。


「勇者の同行者の中にいる魔族は、魔王様直属の諜報部隊の者ニャ。魔王様も勇者には関心を示されているのニャ」


 なるほど・・・だから、ある程度情報が入ってきたんだね。


 パルミラに入ってすぐに勇者は謁見に来た。


「女王さん、久しぶりだね。北大陸でもボクに賛同してくれる者は大勢いたんだ。それに奴隷も多く解放したしね」

「大活躍だと伺っていますよ。お疲れでしょうから、宿を用意しています」


 それから勇者たちを「始まりの遺跡」に案内し、歓迎の宴を開く。勇者は例のごとく、武勇伝を上機嫌で語り、これまた飲み過ぎて寝てしまった。勇者を部屋に運んだ後で、パーティーメンバーの三人から話を聞く。


「それで、北大陸ではどうだったの?」


 代表して回復術師のヘレンが答える。


「一言で言えば、大混乱です。カオス状態ですね・・・」


 ヘレンが言うには、勇者は虐げられている奴隷や獣人たちを解放して回ったという。そのとき、北大陸で勢力拡大を画策していた神聖教会が支援し、非暴力によるデモやストライキを中心に活動し、奴隷制度を実質、廃止にまで追い込んだようだ。


「いいことをしたから、良かったじゃないの?」

「そうとも言い切れないんだです。奴隷の解放が進むと、勇者様は支援してくれた神聖教会の批判を始めたのです。あれ程援助してくれたのにです」


 この辺は前世と同じだ。前世の勇者も、いくら支援してもらっていても、意見が合わないとバッサリ切り捨てていたからね。今回は神聖教会が、利権を牛耳っていて、私腹を肥やしていたことが原因らしい。


「それで神聖教会が北大陸の覇権を握ると思われていたのですが、実際は元々北大陸の盟主だったノードス王国、神聖教会の支援を受けた西部小国連合、獣人や亜人たちを中心にした奴隷解放戦線の三勢力が覇権を争う形になってしまったのです」


「つまり、北大陸は戦乱の世になるということ?」


「それがそうでもないんです。三勢力とも戦力は均衡し、互いに漁夫の利を狙っていて、三竦みの状況になっているんです。だから、すぐに戦争は起こらないと思います」


 戦争が無い状態を平和と捉えるなら、勇者は奴隷を解放し、北大陸を平和にしたことになる。勇者の理想とは程遠いだろうが、所期の目的は達成したと言える。


「それと勇者パーティーの同行者の中にも、三勢力の諜報員がいます。三勢力ともに勇者様の動向は気になるようで、私たちも爆弾を抱えて旅をしているようなものです。勇者様は全く気付いてないんですけどね」


 呑気な勇者だ。そういえば、前世の勇者も秘書に失踪されたんだった。その秘書の苦労が伺える。それと、何も三勢力の諜報員だけがいるわけではない。魔王国の諜報員もいるくらいだから、他国の諜報員もいるだろう。本当に勇者パーティーはカオスになってしまっている。


「貴方たちも大変だったでしょ。この国にいる間はゆっくりしていってね。パルミラの後に案内する所も素敵な場所だからね」

「ありがとうございます。私たちはまた、「始まりの遺跡」に来られたことだけでも、有難いですからね」


 次の日、勇者たちはザルツ部族の拠点ヤルダンへ出発した。


「女王さんとはここでお別れだね。少し残念だな」

「あちらでは、ティサリア大臣という私の信頼のおける女性大臣がいますから安心してください。彼女も優秀ですよ」

「それは楽しみだなあ。女性が活躍する社会をボクは作りたいからね」


 上機嫌で旅立った勇者を見送り、私はケトラ、エレンナ、バルバラとともにダンジョン間転移で、「奇跡の遺跡」に向かった。



 ★★★


 3日後、ティサリア大臣として、ヤルダンで勇者を出迎える。


「勇者様、お待ちしておりました。開発担当大臣のティサリアです」

「女王さんから聞いているよ。優秀な部下だと、女王さんも絶賛していたよ」

「ありがとうございます。早速、「奇跡の遺跡」をご案内いたしますね」


 ヤルダンを視察した勇者をすぐに「奇跡の遺跡」に案内する。


「す、凄い!!こんな所にロープウェイがあるんだ!!もしかしたら、ボクと同じ境遇の者がいるかもしれないなあ・・・会ってみたいなあ」


 目の間にいるよ。でも名乗り出ることはないだろうけど。


「勇者様、驚くのはこれからですよ」


 頂上についた勇者は更に驚く。それは勇者だけではなく、同行者も同じだったけどね。


「凄い!!こんな絶景を見たのは初めてだ」


「勇者様、この絶景は「天空の鏡」と呼ばれているんですよ。これを見た人は人生観が変わると言われているくらいですからね」

「本当だ。これは、一生懸命に頑張って来たボクへのご褒美かもしれないな」


 どこに行っても、何をしても勇者は自分中心だ。


 同行者の中でも、特に教会関係者は涙を流して感動していた。


「これはまさに聖典にある聖地に違いない。生きている間に目にすることができて幸せだ」

「本当ですね・・・これは神のお導きに違いありません」


 神のお導きって・・・ここを開発したのは私たちで、本当に苦労したんだけどね。


 その後3日、勇者たちには「奇跡の遺跡」に滞在してもらった。勇者たちには地下のダンジョンに挑戦してもらっていた。というのも、ホテル事業は上手くいっているが、肝心のダンジョンの入場者は芳しくなく、勇者を使ってPRしてもらおうと思ったからだ。ケトルとしては、折角作ったダンジョンだから、ホテルだけでなく、ダンジョンとしても利用してほしいとのことだった。


「ここのダンジョンもいいね」

「ありがとうございます。ご紹介いただけると助かります」

「もちろんさ。ここのダンジョンの良さを宣伝してあげるよ」


 ここまでは順調だ。後は、ダイバーシティで問題がなければ、無事に小国家群連合に引き継げる。


「それでは明日、勇者様の理念に合った町、ダイバーシティにご案内いたしますね」

「それも楽しみだなあ・・・」


 ダイバーシティの待ち受け体制も万全だからね。

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