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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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41 襲撃

 ダイバーシティは大発展を遂げる。

 これにはいくつかの要因がある。まずは人だ。多種多様な種族が居住し、獣人や亜人を差別することもないので、多くの獣人や亜人がダイバーシティに居住するようになる。そこに各国の支援もあって、町は未だに建築ラッシュだ。


 それに立地もいい。

 大草原の中央部から少し北に行った付近にあるのだが、小国家群から砂漠を通らずに来ることができる。なので、小国家群との交易も盛んだ。また、騎馬王国の特産品である毛皮、肉、羊毛、乳製品などがダイバーシティ近辺で生産できるのだ。それによって、騎馬王国に行かなくても騎馬王国の特産品が手に入ることもあり、多くの商人がこの町を訪れるようになった。


 騎馬王国の一番の売りといえば、それは馬だ。スピードもスタミナもあり、非常に知能が高い。騎馬王国の騎兵隊が精強なのも、この馬のお蔭だ。逆に言えば、この馬を大量に保有していなければ、そこらの騎兵と大して差はないのだ。

 実はこの馬も、ダイバーシティ周辺で繁殖に成功したのだった。これにはケンタウルス族の存在が大きい。馬たちはケンタウルス族に絶対に逆らわない。見た目も馬に近い彼らは、馬とコミュニケーションも取れ、少数だが騎馬王国の馬よりも質のいい馬もいたりする。


 そんな噂を聞きつけた帝国商人は、さっそく馬を買い付け、皇帝陛下に献上したらしい。皇帝陛下もこれを気に入り、絶賛したという。それから、帝国貴族がわざわざ馬を買い付けに来ることも増えた。そして、この噂を聞いたスタリオンも馬を買い付けに来る。そのような状況なので、「馬一頭にそんな値段を付ける?」と思うくらいの金額を支払ってくれているのだ。


 また、「聖女の壁」、「新聖女の壁」は観光スポットとして大人気だ。圧巻だからね。

 今は壁を伸ばすのではなく、強度を補強する工事を続けている。公共事業の側面もあり、町に来たばかりで、仕事がない入植者を支援する意味もある。


 こんな感じで、ダイバーシティは上手くいっているのだった。



 ★★★


 久しぶりにダイバーシティの視察に訪れたところ、相談を持ち掛けられた。

 ハーフリングの代表、トムさんが言う。


「調査の結果、騎馬王国が大規模な襲撃を計画していると判明しました。規模は5000以上、攻城兵器も準備しているようです」


 エレンナが言う。


「もう盗賊という設定はやめたのか?これでは、本格的な侵略戦争だな」


 バルバラが応じる。


「それほど、騎馬王国は追い込まれているということじゃ」


 騎馬王国が追い込まれた原因は、間違いなくダイバーシティーだ。

 ダイバーシティーが発展してから、騎馬王国は困窮する。ダイバーシティーが騎馬王国の特産品を販売しているので、騎馬王国から購入する必要が無くなり、取引していた商人も手の平を返すように足元を見る。これは一概に商人たちが悪いとも言い切れない。


 というのも、騎馬王国は商人に騎馬王国の護衛を雇うことを半ば強制していた。そうしないと、盗賊に襲撃されるからだ。まあ、この盗賊も騎馬王国の国軍なのだから、いい商売だ。どんなに護衛料が高くても、100パーセント襲撃されないので、商人も渋々護衛料は支払っていた。

 ほとんどの商人は、ひっそりと関係を切ったのだが、一部の商人はこれでもかというくらいに意趣返しを行ったそうだ。


「騎馬王国の騎兵など大したことはありませんな。ダイバーシティに居る冒険者のほうが、余程頼りになりまりますよ。こんなことなら、もっと早く切っておけばよかったです」

「そうですな。それにここらの盗賊も大したことがない。ダイバーシティの警備兵にコテンパンにやられていましたからな。弱い盗賊にしか勝てない弱い護衛・・・騎馬王国ではなく、ロバ王国とでも名乗ればいいのでは?」


 なんとか取引を再開してほしいと頼みに来た族長に対して、そんなことを言い放ったようだ。これには、族長がキレた。


「覚えていろ!!絶対に後悔させてやるからな!!」


 それで、今回の件につながったようだ。


「商人なんだから、そこは上手く交渉して、利益につなげればよかったのよ。多少高くても買ってくれるわけだしね」

「それくらい腹が立っていたと思うニャ。それに襲撃がことごとく失敗しているのも大きいニャ」


「聖女の壁」ができてから襲撃が成功したことは一度もない。襲撃する度に多くの者が捕虜となり、命を落とす者も多い。これだけでジリ貧状態だ。そもそもの話、襲撃は彼らにとって、ビジネスモデルの重要なピースだった。定期的に襲撃することで、恐怖心を植え付け、騎兵戦力の強さを誇示できる。それがあって初めて、護衛ビジネスが成り立つ。また、それを軸に強気に交渉し、商品を安く買い叩いたりしていたそうだ。襲撃が上手くいかないことは、ビジネスモデルが崩壊することとイコールなのだ。


 まあ、ビジネスモデルが間違っていたのというのはあるけどね・・・


「こうなったら仕方ないわ。今、原因についてあれこれ言っても仕方はないし。それで何とかなりそうなの?」


 エレンナが言う。


「負けはせんだろうが、それなりに犠牲は出るだろう。相手はこれが最後の襲撃で、一族の存亡を懸けて挑んでくるだろうし、そもそも数が違う。ここまでほぼ無傷で撃退できたのは、盗賊という建前でやって来た相手を、こちらは倍以上の戦力を揃えて、各個撃破してきたからだ。本気の相手と戦うのは、厳しいだろうな」


 バルバラが言う。


「それこそ、どちらかが滅亡するまで戦う必要が出て来るかもしれんな。全面戦争となると総力戦となり、また国庫が空になるぞ」


「それはちょっとねえ・・・勇者じゃないけど、話合いで何とかならないのかしら?」


 エレンナが答える。


「相手も同じことを考えているだろう。だから今回の侵攻作戦を成功させ、こちらに大打撃を与えたところで、講和して、有利な条件を引き出す。こちらからしてみたら、この戦いに負けてしまえば、すべてが終わると思って攻めて来ることには変わりはないがな・・・」


 そんな時、ケトラが報告に来た。


「敵は破城槌を大量に用意しているニャ。多分、補強工事が終了していない、A5地区を狙うニャ」


「新聖女の壁」はまだ補強工事が完成していない。未だに土がむき出しの箇所も多くある。特にダイバーシティから東にあるA5地区は、ほとんど手付かずだ。ダイバーシティを中心に補強工事を行ったため、そのような状況になったのだ。


「じゃあ、すぐに工事を急がせないとね。すぐに人員を・・・」


 言い掛けてたところで、ふと疑問に思ったことを口にする。


「ところで、なぜ、敵の行動がそんなに正確に分かるの?」


「それは新設された偵察騎兵隊のお蔭ニャ。奴らは凄いニャ」


 偵察騎兵隊?何だそれは?


 それも詳しく聞くとして、来る場所とやりたいことがある程度分かるのなら、何とかなるんじゃないだろうか?


「偵察騎兵隊について、詳しく教えて。それと、いい案を思いついたわ」


 私が思いついた作戦は、なるべく被害を少なく、相手を一網打尽にする作戦だった。

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