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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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39 勇者被害拡大中

 第二回国際会議が開かれることになった。場所は今回も王都パルミラだ。

 議題はもちろん勇者だ。北大陸に行って、一安心と思っていたけど、やはり勇者は勇者だった。被害は北大陸に留まらず、私たちにも降りかかった。事態が深刻なので、ファラーハ、アイーシャ、ハジャスの有力部族の族長も出席している。


 軍事国家スタリオンの代表者がキレ気味に言う。


「こんなことになるんなら、あの時事故に見せかけて、海の底に沈めておくべきだったのだ。誰が北大陸に追い出すなどと言ったのだ?」


 今更言うなよ。みんなで決めただろ?


 ユーラスタ帝国の代表者が言う。


「こうなることは誰にも予想できん。今更それを言ったところで、何も始まらん」

「直接被害を受けん国は、呑気でいいな」

「こちらも属国が被害を受けている。呑気になどしていられんわ」


 私はすかさず仲裁に入る。議長国の女王として、仕方なくだが・・・


「穏便に話し合いましょう。まずは状況把握から致しましょう」


 何をそんなにもめているかというと、難民問題だ。北大陸で奴隷が大きな反乱を起こし、大混乱になっている。それで、多くの難民がこちらの中央大陸にやって来たのだ。ヴィーステ王国で一番被害を受けているのはトリスタだ。港町なので、多くの難民が押し寄せている。クレオラの手腕もあり、今のところ大事には至っていないが、それもそろそろ限界に近い。


 スタリオンの代表者が言う。


「ここは海上封鎖でもするか?」


 小国家群連合の代表者が応じる。


「流石にそれは・・・女王陛下の案は、本当に良い案だと思ったのですが・・・こんなことになるとは・・・」


 おい!!すべて私の所為にする気か?

 それに北大陸を勧めたのは、お前ら小国家群だろうが!!


 答えの出ない不毛な議論が続き、次第に勇者の悪口になっていく。


「何が勇者だ!!あんな無礼者、勇者でなかったら処刑しているところだぞ!!」

「それについてはスタリオンの意見に同意する。我が帝国でも問題になっている」

「そもそも、小国家群連合やヴィーステ王国が勇者を増長させすぎたのではないのか?」

「いえいえ、私たちはヴィーステ王国のやり方を真似ただけで・・・」


 なんか、私が悪い流れになってないか?


 これにファラーハが答える。


「サイロ港はまだ受け入れられるわよ。それには、開発資金が必要なんだけどねえ・・・」


「金なら帝国が支援しよう。大陸の盟主でもあるからな」

「何が盟主だ。金で解決しようとしているだけだろうが。スタリオンとしても、金ぐらいは出す」


 アイーシャも意見を言う。


「騎馬王国から切り取った草原に町を作るのはどうだ?こちらも、資金があれば開発ができるのだがな」


 というのも、あれからアイーシャは、国境線に新たな「新聖女の壁」を建設することに成功している。壁を作って放牧するだけではなく、交易の中継地となる町を作ろうと思っている。


 ハジャスも言う。


「今は難民が流れて来ているだけだが、勇者が帰って来たときのことも考えたほうがいい。勇者の意見を取り入れたフリだけでは、今度は激怒して、何を仕出かすか分からん。多少は勇者の希望に沿う政策を取り入れるほうがいいだろう」


 これは私に言っているようで、実は小国家群連合に言っている。そもそも、小国家群連合が北大陸に勇者を追い出したのも儲けるためだしね。情報によると勇者は、「小国家群の商品は素晴らしい」と喧伝していたようだ。そして中央大陸に戻って来るとしたら、ヴィーステ王国か小国家群に立ち寄る可能性が高い。

 ハジャスは、その辺でヴィーステ王国に厄介事を押し付けるのを止めろとも言っている。


 それが分かった小国家群の代表者は発言する。毒にも薬にもならない発言だったが・・・


「そうですね。それにはまず各国で協力体制を構築しなければなりませんね。話はそれからですね」



 結局、難民の受け入れはヴィーステ王国がメインに、他国は金銭や物資を支援することで合意した。スタリオンとユーラスタ帝国は、金で解決できることに安堵し、小国家群連合は、ヴィーステ王国に厄介事を押し付けれらたと歓喜した。


 でもね。一番得をしたのは・・・



 ★★★


 ファラーハが言う。


「上手くいったわね。ゼノビアちゃん」

「そうですね。ここまで上手くいくとは、思いませんでしたよ」


 ハジャスも続く。


「それほど、勇者を脅威に思っているということだ。これで新たに見つかった新鉱山の作業員を確保できる」

「ウチもよ。港も手ぜまになって来たし、そろそろ拡張したいなと思っていたのだけど、結構な金額を支援してくれるしね」


 アイーシャも続く。


「こちらは早く人が欲しい。折角、プライドを懸けて国境線まで押し返したんだ。その分の費用を回収しないとな。プライドだけでは、腹は膨れんしな」


 少し説明すると、私と族長たちは結託していた。

 ヴィーステ王国にやってくる難民のほとんどがトリスタに来る。トリスタに限って言えば、飽和状態だが、国内全体に目を移すと人手不足だ。ファラーハはサイロ港を拡張したいし、ハジャスは新たな鉱山の作業員を確保したい。アイーシャも同じだ。みんな人が欲しい。


 ここで、ファラーハから提案があった。


「盛大に恩を売って、支援を引き出しましょう。私は帝国、ハジャスは小国家群に工作するのはどう?スタリオンは帝国が何かしようとすると、対抗してくる。それを利用するだけでいいわ。私とハジャスの取り分は、人材を優先的に確保させてくれることでどう?」


 この提案を受け入れることにした。


 実際に任せてみると、あっさりと上手くいった。ファラーハは、帝国とスタリオンを競わせて支援金を吊り上げ、ハジャスは鉱山が発見されたことを小国家群に言わず、渋々受け入れたと思わせて、恩を売っている。


 アイーシャが言う。


「まだまだ、あの二人の域には達していない。人が貰えるだけでも有難く思おう。ただ、あの二人のことだ、ウチに来るのは、残りカスかもしれんな・・・」


 新しい草原の新しい都市の開発はヴィーステ王国としても支援していく予定だ。というのも、ここを交易の中継都市だけでなく、勇者対策の町にしようとしているのだ。


 上手くいけばいいけどね・・・

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