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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第四章 勇者が町にやって来た

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33 勇者が再びやって来た 3

 本隊をレドラに預け、私、バルバラ、エレンナ、ケトラはターバからスタリオン国境へ向かって進む。

 途中、いつでも逃げられるように簡易の転移スポットを設置した。

 バルバラが言う。


「面白い策ではあるが、上手くいくかのう?」

「それは分からんが、こちらに被害は出んから、やる価値はある」

「後はティサの魔力が待つかどうかニャ。魔力回復ポーションは山ほど持ってきたけどニャ」


 私の作戦、それはターバに近付けさせないことだ。

 言うのは簡単だけどね。


 ターバを経って2日後、私たちはスタリオンの大群を発見した。情報通り約5000はいる。ぱっと見だが、重装歩兵が大半で、魔導士や弓兵も100人ずつはいるようだ。それに補給物資もかなり持ってきているようだ。

 バルバラが言う。


「相手の指揮官も分かっておるな。補給を蔑ろにしておらん。そうなると、ちと作戦がやりにくいのう?」

「だったら、作戦で食料やなんかを吹き飛ばせない?」

「やってやれんことはないが、2度目3度目は対策をされそうじゃな」

「できるならやってよ。じゃあ、作戦開始ね」


 バルバラが無数の竜巻を巻き起こした。砂嵐が起こったように見せかけるためだ。砂漠では普通に砂嵐が起きるから、こちらの魔法攻撃とは思わないだろうしね。


 そして、バルバラの出した竜巻は荷馬車を襲い、物資を空高くに舞い上げた。


「半分くらいは、削れたかのう?」

「それでも十分だよ。後は私がやるね!!」


 私は幻影魔法でターバの町を出現させた。実際にターバがある反対方向にだ。

 砂嵐で方向感覚が狂った部隊は、私が出した幻影の方に進んで行く。

 エレンナが言う。


「とりあえずは、上手くいったようだな。後はティサの魔力が持つかどうかだ」


 何とか夜まで頑張った。魔力回復ポーションをがぶ飲みしてだけど。


 次の日も同じことを繰り返した。流石に私の魔力が尽きて、バルバラの砂嵐に頼ったけどね。


 二日目の夜、エレンナが言った。


「この作戦であれば、兄上も応援部隊を送ってくれるだろう。これからすぐに打診してくる」


 魔王様は人族の戦争に首を突っ込むことを良しとしない。でもこの作戦であれば、承認してくれるだろう。

 そして次の日、エレンナは魔王国から10人の魔導士を連れて来た。


「幻影魔法が使える者が少なかったから、手間取った。それにティサ程、上手くは使えはせん」

「その辺は大丈夫じゃ。わらわの風魔法で、それっぽく見せてやる。ぼんやりでいいからのう」


 これで私の負担も軽くなった。


「それと兄上から秘策を授かって来たぞ」


 次の日も同じようなことをした。連れて来た魔導士の幻影魔法はお世辞にも上手いとは言えなかったけど、砂嵐と併用すると何とかなった。それに相手は日増しに弱ってきているしね。そして、魔王様の作戦が発動する。

 連れて来た魔導士の一人が大雨を降らせた。なぜ相手を喜ばせるようなことをするかって?


 大雨が降ったことで、大喜びだった敵軍だが、それは大間違いだった。バルバラが鉄砲水を装った水魔法を放って、残りの物資を全て飲み込んでしまったからだ。


「流石は魔王様の作戦だニャ。これで敵は終わりだニャ」


 敵軍の兵士は途方に暮れている。次の日からは進軍しなくなった。物資が無くなったことで、部隊内で、もめ事や喧嘩も頻繁に起こっているようだった。また魔導士たちも必死に水魔法で水を出しているが、5000人分の水を出し続けることなんてできないし、魔力も尽き掛けている。魔力回復ポーションも流されてしまい、過酷な砂漠の環境だから、自然回復もあまり期待できないからね。


 このまま放っておいても全滅するだろう。次の部隊が来ても同じことをして、それに対応して来たら、また次の策を考えればいい。時間は守備側に味方する。時間が経てば、ユーラスタ帝国も動き出すかもしれないし、こちらからファラーハを使って焚きつけてもいい。


 エレンナが言う。


「可哀想だが、奴らにはここで、野垂れ死んでもらうしかないな。運が良ければ何人かは生き残れるだろうがな・・・」


「そんなことはさせないよ!!」


 声がした方を振り向く。そこにはなぜか勇者がいた。



 ★★★


 回復術師のヘレンから話を聞くと、私たちがいなくなったことに気付いた勇者は、こちらにやって来たようだ。それに勇者はターバの志願兵に道案内と護衛を頼んでいた。戦闘力は低いが、行動力は無駄に高い。


「戦争に敵も味方もない!!皆が兄弟で友だちなんだ!!」


 無茶苦茶だ。戦争はどちらかというと、敵と味方しかいない。


「ここはみんなで助けてあげるんだ。まずはそれからだ!!」


 話が通じない。

 仕方なく、私は勇者に言った。


「勇者殿、これは戦争です。相手が殺しに来た以上は、殺される覚悟も持つべきです。どうしても助けたいのなら、勇者殿だけで行ってください」

「だったらそうするよ。向こうが降伏したら助けてくれるんだね?」

「武器を捨て、防具を脱ぎ捨てて、拘束されることを承認するなら、捕虜として扱います。もちろん、国際法に則ってです。まあ、無理でしょうけど」

「やる前から、無理って言ったら、何もできないよ!!」


 勇者は、勇者パーティーを引き連れて行ってしまった。それに武器も志願兵たちに預けている。どうやら、本気のようだ。


「勇者もここで終わりだニャ」

「奴が望んだことじゃ。気にすることはない」


 ★★★


 少し近付いて、勇者の様子を伺う。


「僕は勇者パーシー!!君たちを助けに来た。すぐに武器を捨てろ!!」


 指揮官の男が歩み出る。


「我は遠征隊の指揮官、将軍のロマノフである。流石に投降はできん。我らは命のかぎり戦うつもりだ」

「馬鹿なことを考えるな!!戦争は何も生まない」

「話にならん。ここで貴殿を殺すか、人質に取ればいいのではないのか?」

「ボクはこの通り、丸腰だ。殺すなら殺せ。だが、君たちはここで死ぬ。ボクを殺したところで、死体が一体増えるだけだ」


 そんな言葉だけで、説得できたら誰も苦労はしない。

 だが、奇跡が起きた。部隊員が次々と武器を捨て始めた。


「勇者様!!投降します。助けてください!!」

「こんな砂漠で死ぬなんて嫌だ!!どうかお助けを!!」

「とにかく水が欲しい・・・」


 指揮官は言った。


「こうなっては戦えん。投降しよう」


 指揮官は自ら武器を捨て、鎧も脱いだ。そして、部下に指示して、武器と防具を一箇所に集めさせていた。


 ケトラが驚きの声を上げる。


「本当にやってしまったニャ・・・」

「馬鹿だと思ったが、ここまで馬鹿だと感心する」

わらわも長いこと生きてきたが、こんな馬鹿は初めてじゃ」


 私も勇者を「無能な働き者」と思っていたが、ここまで来るとそんな枠に収まらないことが分かった。


 言うなれば、すべてを超越し、突き抜けた「無能な働き者」だ。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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― 新着の感想 ―
虚仮の一念岩をも通す。 突き抜けたお馬鹿さんだからこそ得られた結果ですね。 事前にティサちゃんたちの作戦があったからこそ成功した訳ですから、ある意味で美味しいところ取りをしていますが。 これで命を救…
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