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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第四章 勇者が町にやって来た

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31 勇者が再びやって来た 1

 私はエレンナ、ケトラ、バルバラと共にヘレンに見せてもらったノートの写しを分析していた。


「しかし、ティサも大したものじゃな。こんな情報を手に入れるとはのう」

「これは凄いニャ。魔王国でもティサは、本当は凄い奴だって噂になっているニャ」

「これがあれば外交にも使えるし、いざとなった場合にも有効だ」


 私が得た情報は絶賛されている。実はこの情報で魔王様から第三級プラチナ勲章をいただいた。この世の春だ。


 中身の情報だが、魔王国の諜報部隊が調べたところ、かなり正確だったという。ただ、労働環境や民主化度などの項目は理解できなかったようだけどね。そしてヴィーステ王国の評価だけど、最高評価だった。ほぼ満点に近く、落第点だったのは、軍事面と魔物食くらいだった。


「それにこんな情報がこれからも入って来ることが凄いニャ」

「勇者を工作員に仕立て上げるとは、わらわでも考えつかん」

「今、勇者は小国家群にいるのだろ?その所為か、パルミラを訪れる小国家群の商人や貴族も増えたしな」


 勇者たちは、今小国家群を周っていて、行く先々でヴィーステ王国の素晴らしさを喧伝しているらしい。それに小国家群の会議にアドバイザーとして出席している、ゴルド部族のハジャスからお礼の手紙も届いた。勇者を手懐けてくれたお陰で、こちらの発言力も増したという内容だった。

 ああ見えて、ハジャスは義理堅いところがある。困ったことがあれば、多少は助けてくれるだろう。


「勇者がこちらに立ち寄ったら、情報をもらいましょう。それを元に小国家群向けの商売を考えてもいいわね」


 この時、私は自分が大変なことを仕出かしたことに気付いていなかった。



 ★★★


 勇者が旅立って3ヶ月後、急報が飛び込んで来た。

 ケトラが慌てた様子で報告に来た。


「ヤバいニャ!!スタリオンが宣戦布告して来たニャ!!文書には完全降伏以外は認めないと書いてあるニャ」

「ど、どうしてそうなったの!?」

「勇者の所為ニャ!!」


 ケトラの説明によると、小国家群を周った後に一旦こちらに戻ってくる予定だった勇者が、新型魔道船に乗って、軍事国家スタリオンに行ってしまったようだ。そして、スタリオンで散々体制や社会制度を批判し、「魚は頭から腐る」とまで言ってしまったようだ。


「それは予想できることだけど、でもどうしてウチに宣戦布告してくるの?」

「勇者が『少しはヴィーステ王国を見習え。あの国はお前たちのような野蛮人ではない』と言ったからニャ。捉え方によれば、ヴィーステ王国が嫌がらせに勇者を寄越したと思われても仕方ないニャ」


 おい!!勇者!!

 お前は世界を平和にするために存在しているんじゃないのか!?

 それが戦争を引き起こしてどうする!!


 バルバラとエレンナも続く。


「ゼノビアの影響もあるじゃろう。交渉材料として、スタリオンをいいように利用していたからな」

「ティサにも原因の一端はあるぞ。少し前にスタリオンの使者を怒らせただろ?」


 話をまとめる。


 まずはゼノビアの失策だ。

 ゼノビアは他部族との交渉を有利に進めるため、スタリオンにすり寄った。報告書を読むかぎりでは、その気もないのに「ユーラスタ帝国との関係を切る」「自分に従わない部族の領土を差し出す」などの実現不可能な条件を出した。もちろんゼノビアもキツネ獣人の婚約者がいたくらいだから、獣人や亜人を排斥するスタリオンと同盟を結ぶ気など全くなかったのだが、同盟が成立しつつあるという状態を他部族に見せたかったようだ。今思えば、かなりの失策だ。


 次は私だ。

 スタリオンに出した条件とは全く逆の政策を取っている。ファラーハ伝いだが帝国商人とは懇意にしているし、帝国の貴族とも伝手ができた。それに他部族との関係も改善し、スタリオンに差し出す領土もない。それだけでも激怒しているところに、やって来た使者に対して、無下な扱いをしてしまった。今思えば、もっとちゃんと対応をすればよかった。卑猥な衣装を着て謝りに行かないまでも、金銭を支払うとか、お詫びの品を贈るとか、相手の溜飲を下げさせる方法はいくらでもあったはずだ。粘り強く交渉すれば、解決の糸口ぐらいは見付けれただろう。


 そして最後は勇者だ。

 スタリオンは、他種族の排斥を謳っている、男尊女卑の軍事国家だ。そこに自由平等主義で差別反対、かなりの平和主義でフェミニストの勇者がやって来たら・・・

 火を見るよりも明らかだ。彼女が勇者じゃなければ、間違いなく処刑されていただろう。


「で、でも・・・ウチを攻めたところで、採算が取れないんじゃないの?」


「それくらい怒っているということニャ」

「パルミラまで攻め落とせば、何とか採算が取れるレベルにはなるだろう」

「舐められたら終わりと思っているのかもしれんぞ。スタリオンは植民地も属国も多く抱えているからな。それにユーラスタ帝国に対抗心を持っている。帝国寄りの政策も許せんかったのじゃろう」


 ここまで来たら、私の首を差し出すくらいのことをしなければ、許してくれないだろう。


「ところでいつ攻めて来るの?」

「もう本隊は、首都を出発したらしいニャ」

「宣戦布告から早すぎない?」


 エレンナが言う。


「よくやる手だ。国境に一番近い町に宣戦布告の文書を出す。敵がそこから王に文書を持っていく間に攻め入る。形上は国際法どおりに宣戦布告したことになるからな。それくらい本気ということだ」


 もう戦争は回避できないのか・・・


「まずは戦力を集めましょう。冒険者にも声を掛けて!!それから魔王様にも報告、そして他部族にも連絡を・・・それからすぐに現地に向かいましょう」


 エレンナが言う。


「ティサ、少し落ち着け。まずは相手の兵力を見定めよう。これはケトラの部隊の仕事だ。それとまず攻め入るのは、宣戦布告の文書が届いたターバだ。私ならここをまず制圧し、拠点を築く。そこに兵を集め、一気にパルミラに攻め込むだろう」


「ありがとう。少しパニックになってたわ。では、まずはターバに向かうことでいいわね」

「それには反対しない。明日には出発できるように準備をする。私はこれで失礼する」

「エレンナ、お願いね・・・」


 私はふと思った疑問を口にした。


「ところでさあ・・・勇者はどこにいるの?」


「それがターバにいるニャ。宣戦布告の文書を持った使者に同行して来たニャ。未だに戦争反対を訴えているようだニャ。自分が戦争を引き起こしておいて、よく言うニャ」


  敵だけでなく、勇者の相手もしなければならない、こっちの身にもなってくれ・・・

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