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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第四章 勇者が町にやって来た

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30 勇者が町にやって来た 2

 勇者パーティーの三人を別室に案内し、話を聞く。

 魔導士のシンディーが代表して話始めた。


「実は私たちは、勇者パーティーとしての活動が世界のためになっているのか、疑問に思っているんです。他国の王族や貴族には、露骨に嫌な顔をされます。それが辛くて・・・女王陛下だけは、熱心に勇者様の話を聞いていたので、ちょっと相談しようと思ったのです」


 どうやら三人はまともなようだ。


「ヴィーステ王国は商人の国よ。それに砂漠という過酷な環境にある。私が女性を多く要職に就けているのも、そうせざるを得ない理由があるのよ。男性の死亡率が異常に高いの。それは魔物の所為ね。それを改善したくて、私も努力している。だからどんなに嫌な相手だって、笑顔で頭を下げる。それが商人であり、女王よ。決して勇者殿の思想に共感したわけではないのよ」


 回復術師のヘレンが言う。


「やはり、女王陛下に相談してよかったです。今後私たちがどうしたらいいか助言をいただきたいのです」

「貴族制度廃止を訴えたり、軍隊の廃止を訴えることが、どれほど危険なことか分かる?」

「それは十分に理解しています。各国を周り、行く先々でトラブルを起こしているんです。酷い国なんかは、入国禁止になってしまったり・・・」


 ヴィーステ王国だけでなく、多くの国で勇者は、「困ったちゃん」扱いをされているようだ。


 戦士のアデラも続く。


「それに勇者様は、戦闘をほとんどされない。預言では「強大な悪を討ち倒せ」とある。今後のことを考え、訓練も兼ねて魔物狩りをしようと提案したのだが、『魔物も生きている』と言って断られた。このままでは、「強大な悪」どころか、その辺の魔物にも勝てない」


 少し補足しておくと、FFQ3では勇者が神からの預言を受けて、旅に出るというストーリーだ。この預言があるからこそ、勇者が勇者として認められるという認識だ。たとえ弱くてもね。

 興味があったので、少し勇者のことについて質問をした。


「勇者殿はその「強大な悪」にどのように立ち向かおうと考えているのかしら?」

「それは話合いだ。話せば分かると言っている」

「相手が魔族や魔王であっても?」

「そうだと思う。魔物にまで、対話を試みようとする方だからな」


 だったら、こっちもやりようがある。かなり変わった勇者だけど、魔族としては歓迎すべき勇者だ。


「それでだけど、ほとんど訓練も積まないまま、よくここまで来れたわね?ここの魔物はかなり強いはずだけど」


 これには回復術師のヘレンが答えた。


「ファラーハ様に護衛を紹介され、雇いました。かなり高額だったのですが、何とかなりました」


 ファラーハめ。ちゃっかり勇者で儲けやがって!!


「でも、活動資金は大丈夫なの?そんなことを繰り返していたら、いずれ破綻するわよ」

「それが不思議と資金が集まるんです。入国禁止になった国にも支援してくれる人がいるんです。女性領主や女性商会長、虐げられている貧民や獣人や亜人、様々です。寄付金という形で活動資金をいただいています」


 やり口が政治家だな・・・


 戦士のアデラが皮肉を言う。


「寄付金という名の、手切れ金もあったがな」


 ここまで三人の話を聞いて、勇者にはかなり迷惑をしているようだ。また、三人がサポートしていたからこそ、ここまで何とかやって来れたのだろう。だったら、この三人を手懐ければ・・・


 ★★★


 三人を手懐けるだけでなく、しっかりサポートできるように指導をしてあげたほうがいいと考えた私は、少し意地悪なことを言った。


「ここは商人の国よ。無料ただで助言はあげないわ。まずは交渉ね。そちらが出せる条件を言ってみて」


 三人が悩む。

 ヘレンが言う。


「活動資金にもあまり余裕がありません。どれほどの額をお望みでしょうか?」

「逆に聞くけど、いくらまでなら出せるの?」

「それは金貨・・・」


 言い掛けたところで遮った。


「はい!!失格ね。ちょっと意地悪をしたけど、簡単に手札を見せたら駄目よ。貴方たちは勇者パーティーなんだから、それを利用しようとする人は多くいる。寄付金をくれた人も善意からだけじゃないと思うわよ」


 ヘレンが何かに気付いたように言った。


「そうです。寄付金をもらう条件に色んなパーティーに参加させられました。それに勇者様自体もパーティーを開いて資金を集めていました」


 パーティーを開催して資金を集めているのか・・・本当に政治家だな。


「そうね。だからそういう思惑があるというのも理解してほしいの。その上で相手との妥協点を探る。この国でいうと、他種族への差別禁止については賛成できるわ。この国は多くの獣人や亜人が暮らしているし、獣人がメインの部族もあるからね。でも軍隊の廃止や魔物食の禁止は受け入れられない。そんなことをすれば、この国は滅亡する。そんな中で交渉をしなくちゃいけないのよ」


 三人は感心したように頷いた。


「ありがとうございます。女王陛下はやり取りを通して、私たちに教えてくれていたんですね」

「お礼は形でお願いね。取引に使えるのは何もお金だけじゃないのよ。情報、口利き、優遇措置・・・色々あるわよ。さあ、考えてみて」


 悩んだ末にヘレンはあるノートを差し出してきた。


「お役に立てるかどうか分かりませんが、情報をお渡しします」


 中を見る。勇者が独自に各国を査定していた。査定項目は、民主化度、差別の有無、労働環境、女性への待遇などの勇者の趣味の項目がほとんどだが、財政状況、保有戦力、有力商会、貴族の派閥関係などのかなりコアな情報も記載されていた。


「これでは、駄目でしょうか?」

「逆よ。流石にこれでは、私が暴利を貪ってしまうわ。なので、こちらもこの情報に見合うものを提供しましょう」



 ★★★


 3日後、勇者パーティーは旅立って行った。

 別れの時、勇者は言った。


「この国はボクの理想に近い国だよ。この国の良さを他国にも紹介してあげるよ」

「お褒めに預かり、光栄です」

「それに水の羽衣もくれたし、資金や物資の援助もしてくれた。この恩は忘れないよ。何かあったらボクを頼ってくれ。ずっとこの国に居たいけど、ボクは勇者だ。ボクを待っている人のために旅立つよ」

「それでは、勇者パーティーのご幸運を祈っております」


 私は勇者を笑顔で見送った。


 絶対にこの国に住むな!!と思いながら・・・

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