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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第二章 母と娘

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18 再びファラーハ

 少し不機嫌になった私はパルミラに帰還した。


 クソ!!あのリア充女め!!

 そりゃあ、女王に戻りたくないでしょうよ!!仕事に恋に充実してるんだから・・・


 でも冷静に考えてみると、すべて私がやったことが原因だ。ゼノビアを責めるのはお門違いだ。


 

 パルミラに戻ると親書が届いているとの報告を受けた。差出人はゴルド部族の族長ハジャスからだった。内容を確認する。


「案内状の返事が遅れたことを詫びる。親書を携えた使者が魔物の襲撃に遭い、泣く泣く帰還したからだ。厳しい砂漠の環境を考慮して、寛大な対応をしてほしい。こちらも案内状に記載されている事業に協力したいと思っている。いい返事をお待ちしている」


 ケトラが怒る。


「絶対嘘だニャ!!こっちの景気が良くなったのを見て、すり寄って来たニャ!!こんな奴は信用が置けないニャ!!」


 ケトラがそう思うのも無理はない。私だってそう思う。あの苦しい時期に支援してくれたら、どれほど助かったか・・・

 でも裏を返せば、ハジャスも慎重なだけで、抜け目がなく、利で動くということだ。


「ケトラが怒るのも分かるけど、ハジャスとは上手くやれそうよ。それに「善人とは取引できなくても、悪人とはできる」っていうしね。親書を携えた使者が魔物に襲撃されたなんて、嘘に決まっているけど、こちらが嘘だと証明できない以上は、協力者という立ち位置は保証してあげないとね」


「ティサがそう言うならそうするニャ」


 バルバラが言う。


「ケトラが怒るのも分かるが、族長としては有能なようじゃな。それに明確に協力すると言ってきている以上は、無下に扱えん」


 ということで、ゴルド部族とは取引する方向で話を進める。



 ★★★


 それから1週間後、ファラーハをパルミラに呼び出した。


「こっちも忙しいんだけど、他ならぬゼノビアちゃんの頼みだから、やって来たのよ」


 やっぱりこのオバちゃんは食えない。わざわざやって来たアピールから入るなんてね。


「実は、部族の取りまとめをお願いしたいんですよ。こちらが提示できる条件は・・・」


 私が出した条件は、こんな感じだ。


 1 向こう3年間、軍艦1隻、商船1隻を無料で貸し出す。それも船員付きで。

 2「始まりの遺跡」の優先使用権。


「でもねえ・・・私たちが船を貰ってもねえ・・・」

「たとえばですが、ナール川に港を建設すればどうでしょうか?帝国も広いですからね。帝国西部の商品を船で帝国東部や北部に持って行けばどうでしょうか?利益は青天井だと思うのですが・・・」


 ファラーハの表情が変わる。もう一押しだ。


「港の利権なんかも考えないといけませんし、港を管理する者も当然必要でしょうしね。こっちはトリスタだけで手一杯ですし、手伝ってもらったら有難いんですけどねえ」

「とりあえず、各部族に話くらいは通してあげるわ。私とゴルド部族が賛成すれば可能でしょうしね。でも、帝国商人にも何かお土産がほしいわね。彼らからも出資をしてもらうわけだし・・・」


 お土産が欲しいのはお前だろうが!!


 仕方なく港利権の話をする。


「新しくできる港利権はこちらが4、ファラーハ殿が4、その他が2でどうでしょうか?それなら、私が好き勝手できないでしょうし。その他の2の配分はファラーハ殿にお任せしますよ」


 これは破格の条件だからね。だって、ファラーハの一存で、新港の利権に食い込めるのだから、多くの帝国商人がすり寄ってくるだろうしね。


「とりあえず、ハジャスを連れて来てあげるわ。それで話をしてみたらいいわ」


 ファラーハはこれから動き始めるのだろう。こっちもケトラの直属の諜報部隊を持っているから、情報は入って来る。余程、変なことをしなければ、多少のことは目を瞑ろう。


 ★★★


 それから2週間後、ハジャスを連れて、ファラーハがやって来た。

 ハジャスは40代のずんぐりとした男だった。寡黙な感じがした。


「女王陛下、お誘いいただき感謝する。早速条件を提示してもらいたい」

「こちらからの条件は、適正価格で魔石を融通してもらいたいのです。魔石がなければ魔道船は動きませんからね。そして、提示する条件はファラーハ殿とほぼ同じ条件です。軍艦1隻、商船1隻のリース、「始まりの遺跡」の優先使用権でどうでしょうか?」


 ハジャスは悩んだフリをする。多分、これくらいの条件が出て来ることは予想していたのだろう。


「こちらとしては、何か小国家群にも、お土産をもらいたい。魔石の輸出先でもある小国家群は、取引を切られるかもしれないと、ひやひやしているだろうからな」


 ゴルド部族は、歴史的に隣接する小国家群と関係を密にしてきた。お得意様であると同時に小国家群の西にある侵略国家ズートラ帝国の防波堤として利用するためだ。なので、小国家群が経済的に傾くのは得策ではないと思っている。

 その辺はこちらもリサーチ済みだしね。


「商船1隻でどうでしょうか?流石に船員は付けられませんがね」

「そちらは、リースではなく、買取ではどうだろうか?」

「構いませんよ。売却益はこちらに、そちらは仲介料でどうでしょうか?」

「私の顔もある、安くしてくれないか?」


 こちらとしては、損が出ない価格で売れればそれでいい。

 というのも、今の状態で軍艦3隻、商船7隻なんて維持できないからね。ハジャスにもこの情報は知られているだろうけど、今後のことを考えたら足元を見るような値段にはしないだろう。


「分かった。それで頼む。買取価格は商人同士で決めさせることにする」


 商談は特に問題なく終了した。

 商談後にハジャスに言われた。


「ゼノビア殿は雰囲気が変わったな。ここまで話ができる人物だとは思わなかった。以前は「引きこもりのハリネズミ」と揶揄されたのだがな」


 ハジャスは、堅実で慎重なことから、「砂漠のハリネズミ」という二つ名を持っている。改革に熱を上げていたゼノビアにとっては、保守的なハジャスを疎ましく思っていたのだろう。


「私も反省したのですよ。若気の至りということでご容赦ください」


 ★★★


 商談がまとまり、各部族にも協力を求める手紙を書いた。ゴルド部族とハンデル部族が賛成に回ったことで、こちらも手の平を返したような返事が届いた。

 ケトラが怒り出す。


「この国はどうなっているのニャ!!卑怯者の集まりだニャ!!」

「ケトラよ、そう言うでない。この厳しい環境じゃ。そうでなければ生き残れん。皆、生き残りに必死なのじゃ。逆に言うと、儲けさせている間は従ってくれるということじゃ。金の切れ目が縁の切れ目にならんようにせねばのう」


 各部族とも思う所はあるだろうが、プライドを捨て、すり寄って来たことは評価しよう。


 だが一つだけ、無茶な返事を送って来た部族がいた。ザルツ部族だ。


「お前がやった仕打ちは生涯忘れん!!義理も人情もないお前なんかと付き合えるか。勝手にしろ!!」


 そのままの文面だった。


 というか、私に怒るなよ!!全部ゼノビアの所為だ!!


 ただ、ゼノビアがリア充生活を送っていることは、言わないほうがいいだろう。火に油を注ぐだけだ。


 結局、ザルツ部族は放っておくことにした。

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