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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第二章 母と娘

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13 巨大な不良債権

 今まで、見て見ぬふりをして来たけど、そろそろあの問題に手を付けなければいけない。国庫を空にし、莫大な借金までして建造した海に浮かぶ鉄クズ、係留されたまま全く稼働されていない大型魔道船だ。


 内訳は、ゼノビアが建造した軍艦3隻、商船7隻だ。残念なことに軍艦1隻は魔物討伐に失敗して大破、今も修理されていない。もちろんお金がないからだ。


 ゼノビアよ!!いきなり10隻も作ることなかっただろう!!

 せめて1隻作って、様子を見てから次を作ればよかったのに!!

 誰か止めてやれよ!!


 そういう私も、同じような過ちを犯している。

 社長時代、全国の主要販売店10店にレストランをオープンさせた。「家具を見ながら優雅に家族と未来を語り合う」をコンセプトに大規模な投資をしたのだが、大赤字だった。その時思った。


 誰か止めろよ!!せめて1店舗だけにして、様子を見ればよかった・・・


 原因は色々あるが、そんなに簡単にレストラン業が上手くいけば誰も苦労はしない。そもそも家具しか作ってこなかった大森家具が、思いつきで参入して、生き残れる甘い世界ではないのだ。その他にも・・・


 もう止めよう・・・辛くなるだけだ。


 とりあえず、一度は見に行ってみないとね。


 ★★★


 大型魔道船が係留されているのは、王都パルミラから北に3日程進んだ場所にある港町トリスタだ。

 今まで視察にも行かなかったのには、見たくなかったという理由の他にも訳がある。ゼノビアの母親である前女王クレオラが統治しているからだ。統治とは名ばかりで、実質は軟禁されているのだけどね。もし、今の状態でクレオラに会えば、私がゼノビアと入れ代わっていることがバレてしまうかもしれない。面会するにしても、一度ゼノビアに会って、情報をすり合わせてからだろうな。


 でもどうやって、トリスタに行けばいいのだろうか?行ったけど、会わないというのも感じが悪いしね。そもそもなぜ、そんな所にクレオラを軟禁したかというと、ゼノビアの日記によれば、こう書かれていた。


「どんどんと発展していくトリスタを見ながら、自分の間違いに気付くといいわ。お母様の時代は終わったのよ」


 でも実際は、どんどん寂れていくトリスタを見させられているのだろうけど。


 色々と作戦を練っていたところで、エレンナが言った。


「だったらゼノビアではなく、ティサリアとして視察に行けばいいのではないか?」


 全く思いつかなかった。

 社長時代と今の私と違う点は、遠慮なく意見を言ってくれる仲間がいることだ。社長時代にも、このメンバーがいればと思ってしまう。


「いい案ね。採用するわ。じゃあ、早速視察に行くことにしましょう。今日から私は、開発担当大臣ティサリアよ」


 私は正式な任命書を作った。自分が自分を任命するのも、おかしな話だけどね。



 ★★★


 表向き、私はパルミラに居ることになっているので、まずレドラとケトラにトリスタまで行ってもらい、トリスタの近くに簡易の転移スポットを設置してもらった。当面の間は、女王ゼノビアと開発担当大臣ティサリアとの二重生活となるが、忙しいのは我慢しよう。

 そして私は、パルミラの運営はエレンナに任せて、トリスタに向うことにした。


 ついでにこの際、みんなの役職も決めてしまった。ケトラは外務大臣、エレンナは近衛隊長、レドラは騎士団長、バルバラは魔法省長官、ロクサーヌは技術開発庁長官だ。ヴィーステ王国には大臣職がなかったので、私が適当に決めたのだった。


 私とバルバラ、ロクサーヌは、転移スポットでトリスタに移動する。ケトラが出迎えてくれる。


「思ったほど寂れてないニャ。食料事情もいいニャ。それに魚は旨いし、いい町だニャ」


 詳しく話を聞くと、総督府のメンバーがそれなりに優秀らしい。

 資料を読む限りでは、悲惨な状況を想像していたのだけど、治安も良いようだ。私の予想では、かなり酷い状況だと思っていたのだけどね。

 というのも、ゼノビアは港湾関係者を一斉にリストラしたのだ。海運事業が頓挫したので、高い金を払って雇う必要がないと判断したのだろう。そうなると普通は、職にあぶれた者たちがホームレスになったり、犯罪行為に手を染めたりするのだが、転職支援に力を入れ、細々とやっていた漁業や塩田の事業に回して、やりくりしていた。ちゃんとゼノビアの失策の尻ぬぐいがされていたのだ。


 町を見て周ると、今のパルミラやアレッサ程ではないにしても、店頭に商品もそれなりに並べられており、すぐに破綻するようには見えない。

 バルバラが言う。


「昔のゼノビアがヴィーステ王国を統治するよりも、ここの総督府の者が統治したほうが、国は発展しただろうに・・・」


 本当にそう思う。


「それでこれから、どうするのニャ?」

「総督府に挨拶に行こう。それに優秀な人材がいれば、引き抜いてもいいしね」


 総督府は大忙しだった。


「あの海に浮かんだ鉄クズを売っぱらう計画はどうなったの?」

「ゼノビアのクズが「うん」と言わないらしいのよ。クズが作った鉄クズなのにね」

「そのお金があれば、塩田を広げられるわ。ザルツ部族との仲が冷え切っているから、こっちの塩田事業を拡大するチャンスよ」

「それはそうと最近、パルミラの景気は良いそうよ。パルミラへの輸出品を選定しないと・・・」


 忙しそうだけど、ワイワイと楽しそうに仕事している。半分以上がゼノビアの悪口だけどね。


 そんな時、50代のスラっとした黒髪の女性が現れた。


「パルミラの情報が取れたわよ。ゼノビアにしては珍しく、他国から優秀な人材を連れて来たらしいのよ。その人たちの活躍で持ち直しつつあるそうよ。パルミラは観光産業にも力を入れているようだから、そのおこぼれが貰えるかもね。今後はパルミラの相場をチェックしながら・・・」


 あれ?なんか見覚えがあるなあ・・・


 そうだ!!あれは私が就任初日に辞めていった女性宰相だった。

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